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トランベルグの鉄騎公 その2

仕事が……忙しく……


すみません、後書きに重要事項を書かせていただきました。

大国に挟まれた小国、トランベルグ。周りを山に囲まれ、盆地のような地形を持つ。


しかし小国なれど非常に豊かな資源を持つ国でもある。


この地の特産物、それは『金』だ。周りの山々、そのほとんどが金山。

また、その盆地となる国土は肥沃な大地で、作物の栽培も盛んである。


当然東のアルカディア、西のトルキアなどはこの地を手に入れようと軍事行動を起こしてきた。しかし、攻めるに固く、また守るに易きこの地は大国の兵を悉く退けてきたのであった。


特にここ10年の隆盛は眼を見張るものがある。新たな金山の発掘、そして大国の様々な文化を取り入れ、その力は四大国も無視できない存在となり得た。


その発展を指揮した人物。それが現トランベルグ公王




アルバレス・トランベルグ




である。


歳は40前半。現在最も脂が乗っている時である。

猛禽を思わせる鋭い目。後ろで結んだ黒い長髪。そして整った口髭、顎髭。その端正な顔立ちと相まって一見すれば理知的な紳士を思わせる。しかし高い身長に引き締まった体躯、何より歴戦の武人が醸し出す誰もが平伏してしまうほどの気風……それを感じればただ者ではない事は誰の目にも明らかである。


アルバレスは元々前トランベルグ公王の庶子として生まれた。それ故に若き頃に国を出奔し、冒険者、そして傭兵として各地を渡り歩いたという異色の経歴を持つ。冒険者としては最高位Sランク以上の実力を持ち、その冒険譚はもはや伝説にまだなっているほどだ。傭兵としても数多くの傭兵達をまとめ上げ、武勲をたてるなどその名を轟かせ、その実力と信望から当時『傭兵王』の通り名がつけられたほどである。




しかし彼は公王家に戻った。




当時のトランベルグは公王家内での権力争いが絶えず行われていた。先代公王の息子達はいずれも派閥を形成し、その全員が公王を名乗り争いに明け暮れていた。また、その内乱に乗じて資源が多いトランベルグ征服の格好の機会到来と各大国達が介入し、トランベルグの命運は風前の灯火だったのである。


そんな争いに嫌気をさしたのは公王家に仕える家臣達であった。彼らは国の行く末を憂い、そして一つの決断を下す。それは公王家を一新する事であった。


彼らが着目したのは傭兵として名を挙げていたアルバレスである。


トランベルグはその地理上、大国に囲まれている。それ故にその長となるものに最も求められるのは『実力』なのだ。


傭兵としても冒険者としても勇名を轟かせたアルバレスは申し分ない存在であった。


各派閥の家臣達は主に気付かれないように水面下で手を結び、一斉に蜂起。そしてクーデターを成功させる。

その上で、彼らはアルバレスを迎え入れたのであった。


対するアルバレスも彼らの思いに同調。意を決して公王になる事を決意する。


こうして公王アルバレスは誕生したのである。


彼が公王に即位する際に家臣達に命じたこと。


それはこのクーデターの首謀者達の助命である。

国のためとはいえ、主人を弑逆した事には変わりはない。彼らは皆、命を持ってその責任をとろうとしていたがそれを止め、いずれも重役を担わせた。


「汝らのような者こそ、この国を動かすのに相応しいのだ」


事実、彼らは後にアルバレスの頭脳となり、そして片腕となる有能な人物であった。


アルバレスは彼らと共に領地の改革に着手する。

彼が公王に就任して僅か3年。トランベルグは見違えるような成長を遂げるのであった。


先に挙げた、新たな金山の開発。大国の文化を吸収し、街を発展させ、新たな特産物の育成……数え上げればキリがない。

いずれも彼と彼が助けた多くの家臣達で成し遂げた事である。


そのように大規模に発展するトランベルグを座して見守るほど大国も甘くはない。

アルカディア帝国を筆頭に多くの国々がその豊富な資源を狙って兵を送り出してきた。


アルカディア帝国が30万の軍勢を差し向けてきた事もあれば、トランベルグに面してる大国……アルカディア、ヴォルフガルド、トルキアが連合軍を組織して攻めてきた事もあった。


それに対してアルバレスもまた軍を編成しそれを迎え撃ち、それらを撃退してきたのだ。


そう、この数々の戦で大陸中の者たちが気付くのである。それは……





トランベルグ公国の強さに。





アルバレスが公王になり最も変わった事。それこそが軍の再編であった。


彼の『傭兵王』の勇名は多くの強者たちを惹きつけるのに十分であった。

アルバレスは前からいた精兵達と、彼の威徳を慕った多くの傭兵達を効率的に組織し、そして彼の戦術を徹底的に仕込んだのである。


こうして、常勝無敗のトランベルグ軍は誕生したのだ。


その最強を誇るトランベルグ軍において代名詞とも言える部隊、それが


『鉄騎兵』


である。


選ばれし勇猛な戦士と、選ばれし強靭な馬のみを使い、その人馬に専用の鉄の鎧を纏わせる。そして、その剣も槍も通さない人馬一体の戦士が組織的、かつ縦横無尽に戦場を駆け回るのだ。


この『鉄騎兵』こそが現在のトランベルグの強さの象徴であり、それ故にアルバレスは現在『鉄騎公』と呼ばれるようになったのである。


そして……常勝を続ける事でいつしか人は彼の事を『戦神(いくさがみ)』と呼ぶようになっていったのであった。




「伝令!!アルカディア軍、退却を続ける由!街道に残っている軍も一部かと!」


伝令の声を聞き、トランベルグ軍の諸将は一様に立ち上がり、声をあげた。


「アルカディア軍恐るるに足らず!!」


「何が大陸一の軍隊よ!」


多くの彼の諸将が、その伝令を聞き笑った。


「閣下!!今こそ追撃をする時です。アルカディアに目にものを見せてくれましょう!!」


諸将はそう言って己が主人に目を向ける。対するトランベルグ公アルバレスはその鋭い目を地図に向けると、伝令に尋ねた。


殿(しんがり)として、街道に陣を張っている旗印は如何様か?」


「はっ!!龍と剣の紋章でした」


それを聞き、トランベルグの諸将達は騒めきだす。


「アルカディア貴族において、龍と剣の紋章だと……?」


「それは……もしかして」


そんな騒めきに答えるようにアルバレスは口を開いた。


「龍をあしらう紋章は帝室か、その下の大公家。そして剣をあわせているのは……『シュバルツァー大公家』よ」


アルバレスの言葉に彼の諸将達は色めき立つ。


「なっ!?シュバルツァー大公家とな!?」


「これは好機ぞ!アルカディアの武を司る名門貴族ではないか!」


「閣下!!今こそ彼奴等を破り、我らの武を……」


「静まれぃ!!」


アルバレスの横にいたトランベルグ公王家に古くから仕える彼の参謀、ウォレス・ランドベルグは騒めく諸将を一喝する。その一声で水を打ったように静かさを取り戻すトランベルグ陣内。


静まり返った諸将の様子を確認し、アルバレスは口を開いた。


「アルカディア帝国が帰ったのであれば、それ以上深追いする必要もあるまい。多少目の前の敵と交戦し、我らは引く。皆準備にかかれ」


諸将にとって『戦神』と崇めるアルバレスの言葉は絶対である。

返事を返すや否や、彼らは一様に自分の持ち場に帰っていくのであった。



評定を行なっていた陣内にはアルバレスの他、2人の将が残っている。


1人は先程声をあげたウォレス・ランドベルグ。もう1人は猛将として名高いウォード・デクターだ。


ウォレスはトランベルグに仕える古参の将である。齢六十を超え、トランベルグの長老としてアルバレスを支えている。知恵者として評判であり、アルバレスの公王擁立も彼が画策したのは周知の事実だ。


対してウォードは傭兵あがりの将である。年の頃はアルバレスと同じぐらい。智勇兼ね備えた公国きっての名将として知られている。


3人きりになった時、そのウォードが早速口火を開いた。


「閣下。諸将達の考えもわかります。我らの方が数も多く士気も高い。今、目の前のシュバルツァー大公国の兵を破りアルカディア本隊に後ろから食らいつけば大勝は間違いなしです」


ウォードの言葉にアルバレスは静かに口を開いた。


殿(しんがり)がシュバルツァー大公でなければそれもしていただろう……だが、やはり彼らが殿(しんがり)だった。なら、我らは引くのが吉よ」


「……閣下が気にされている『シュバルツァー大公家』というのはそれほどまでに?」


その言葉に答えたのはウォレスである。


「アルカディアにおいても、北のシュバルツァーと南のロンバルディアは油断はできない。それだけ独自に兵を鍛えてると密偵達の情報だ。また、今回兵を率いているのは大公国きっての名将、ローエンとアルベルト……破る事はできてもこちらも手痛い思いはするかもしれぬ。それでは割に合わん」


ウォレスの言葉にウォードは口を噤む。

しばし訪れる沈黙。それを破ったのはアルバレスの一言であった。


「俺はシュバルツァーには恩がある」


「はっ?閣下が……?」


素っ頓狂な声を出したウォード。ウォレスもまた驚いた表情を見せた。


「私も初めて聞きましたな……それはいかような?」


「今から10年以上前の話よ……懐かしい思い出さ」


遠い目をするアルバレス。そんな主人の姿を見て、ウォレスはあることに気がつく。


己が主人の手に一通の書簡が握られていた事に。


2人の様子を無視するかのようにアルバレスは話を変えた。


「さて。今後の事だが……軽く一戦行い、我らは引くのが良かろう。ウォードよ……そなた出れるか?」


「はっ!!仰せのままに」


「向こうも本気になっては来ないだろうよ。……そうだな……一騎打ちでも申し込み、何合が合わせた後、引くと良かろう……そうすれば、お互い被害もなく戦を終わらせることができる」


「はっ……しかし不可解な事を閣下はおっしゃいます。果たして一騎打ちを受けてくれるか……そして仮にしたとして、その相手がそんなに簡単に引いてくれるでしょうか?」


「必ず受け、そして引くさ。さて……早速打って出る準備をしよう」


そう言うとアルバレスは立ち上がった。そして1人呟くのであった。


「この状況もお前が作り出したのだろう?アレス。なら、こちらも最後まで演じてやろうか」


と。










読者の皆さん、いつも応援ありがとうございます。


ここに来て……またしてもリアルの方の仕事が忙しくなりました。

朝起きて、家を飛び出し、夜遅くに帰ってくる……休みの日も少ない日々……正直小説を書いている暇がない状況です。


小説一本で食べていけるならできますが、そのような事はできず。

やはり人生において仕事は大切なので……そちらを重要視させていただきます。


なんとか時間が取れれば間章2 『トランベルグの鉄騎公 その3』まで書きたいのですが……それも正直どうなるかわかりません……


前回は体調不良、今回は仕事で、と休載ばかりですが……


どうぞお許しください。


感想は必ず読ませていただきます。本当に自分の中で支えになっております。


必ず夏ぐらいに帰ってきますので……今しばらく待ってもらえるとありがたいです。どうぞよろしくお願いします。



※休載ばかりでふざけるな!!という方もいらっしゃると思います。

もうお待たせしてばかりで本当に心苦しいので……その際はブクマから削除してくださっても構わないです。


こんな状況でも待ってくださる方、本当にありがとうございます。ゆっくりゆっくりの歩みですが、そんな方々の為、絶対にエタりません。それだけは断言させていただきます。

いつも暖かいお声かけをくださる読者の皆さん、本当にありがとう。

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