戦乙女鎧(ヴァルキリーアーマー)
ご無沙汰しております……
はい、このご無沙汰していた間に大変な事になってしまいました。
とりあえず、活動報告にはちらほら書いていましたが……割とスルーされる笑と思っておりますので後書きに書かせていただきます。
長くなってすみません。
その日、私リリアナ・レドギアは一日中機嫌が悪かった。
「兄上もまったく……歓待なぞせずにとっとと追い出せばいいものを……」
私の不機嫌の元。それは親愛なる婚約者にして敬愛するご主人様、アレス・シュバルツァー。彼の私以外の婚約者達がレドギアを途中訪問したことが原因だ。
兄上としては、同じご主人様の婚約者同士。後から婚約が決まった私がすんなりと仲間に入れるようにとの配慮であるのだろうが……そんなのは迷惑の極みだ。
「いい加減にしないか!リリアナ!!」
部屋に戻るなり、兄上は私を叱責した。見れば胃のあたりを手で押さえている。胃痛だろうか?暴飲暴食は良くない。
婚約者達の初顔合わせ。正妻となるコーネリア・アルカディア殿以外の者達との食事会。
兄上は必死に彼女達に話しかけていたようだが私には理解できなかった。なぜ、こちらから擦り寄る必要があるのだ。そのようなことをするのは弱者だけだ。私は強い。
「なんで私があんな軟弱そうな者達に愛想良くしなければいけないのですかっ?」
「愚か者!お前は後から婚約が決まった……言わば後輩ではないか!!礼を尽くすのが当然だ!」
礼?なぜ礼などを尽くさなければならないのだ?弱者に対して。
「くっ……まぁよい……明日の朝食ではそのような態度は控えるように」
そう言って兄上は部屋から出て行く。私は……兄の言葉を一切聞き流してベッドに倒れこむのであった。
◆
翌日になり……私は今、レドギアの城の地下、訓練場にいる。向かいにいるのはご主人様の婚約者の1人。確か名は……シャロン・ロクシアータとか言ったか?金髪のいけすかない奴。
そう私は彼女と決闘をすることになったのだ。
あれは……今日の朝食の時間であったと思う。私が彼女と口論になったことがきっかけだ。
「だからなぜ其方とともに副軍団長をやらねばならぬのだ。私一人で十分だ!」
「……本当に昨日から突っかかってくるわね、貴女は。そもそもね……」
こうしてあれよあれよと言う間に口論は激しくなり、最終的に
「決闘だっ!!」
「望むところっ!!」
と言う話で落ち着いた。
そう、私としては理想的な展開だ。実力差を思い知らせてご主人様の横に並び立つのはただ一人というところをこの女どもに見せつけてやろう……
おや、さっきから兄上が死にそうな顔をしている。よく見れば隣のジオンもだ。体調が悪いなら休んでいればいいのに。
私は聖剣アルフレックスの柄を握りしめ魔力を高めていく。
私の相棒、私の愛剣。この剣を一振りし、圧倒的な実力差で終わらせてやろう。
「準備はいいか?金髪」
「……本当に失礼なやつね。名前で呼びなさいよ」
「弱者に対してそのような事は必要ない。一気に終わらせる」
金髪があからさまに溜息をつくのが見えた。随分と余裕を見せているのが鼻につく。此奴らは私の事を知らないな。このレドギアを長きにわたって守ってきた『白銀の姫騎士』たる私の事を。
絶対に後悔させてやる。
「ウィルフレド殿は体調が優れないみたいなので私が始めの合図をさせていただきますね?」
唐突に現れたのは……これまたご主人様の婚約者の一人だ。黒髪で胸が異様に大きな女だ。この、おっぱいお化けめ、私に対する当てつけか?始まりの合図とともにお前も吹き飛ばしてやる。
「では……始めっ!!」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
その言葉を合図に私は手に握りしめていたアルフレックスの魔力を解き放ち、横薙ぎに振りかぶった。
剣圧が地面を抉っていく。砂埃が巻き起こり辺り一面何も見えなくなったのだった。
◆
「ふんっ!どうだ?」
勝ち誇った私の声が響く。遠くから兄上が倒れ、ジオンが大慌てで助けているのが視界の端で見える。しかしそちらには目をくれず私は前方の金髪がどうなったかだけ集中した。
砂埃が収まり視界が明らかになっていく。何かが変だ。
「なんだ……?あの光は??」
砂埃の先が輝いている。私は訝しげにそちらの方を睨んだ。
そしてその返答は別の方向から帰ってきた。
「あれは『戦乙女鎧』ですわ。アレス様が作成した……シャロン殿専用の鎧、その魔力の波動」
驚いて声の方に目を向けて……私は絶句する。見れば一緒に吹き飛ばしたと思っていた筈のおっぱいおばけが平然とそこで立っているではないか……しかも信じられないほどの厚い魔力障壁を作りながら。
「あんた……関係のないロクサーヌまで一緒に攻撃したわね……」
前方から金髪の声がする。
馬鹿な!?直撃させた筈なのに??
砂埃が収まり視界が開ける。そこには金髪が剣を構えながら立っていた。奴の背中には魔力で作り出された大きな翼が広がっている。
剣を持ち、青い鎧を纏ったその姿は……まるで神話の『戦乙女』そのものだ。
「なんだ……?あれは……」
「これはこの『戦乙女鎧』が作り出した魔力の翼……通称『光の翼』とでも言うのかしらね」
そういうと金髪はゆっくりとこちらに向かって歩んでくる。
「この鎧の中には『不死鳥魂』が埋め込まれているわ。その魔力を最大限に引き出せるのがこの鎧」
その声とともに背中の翼が虹色の輝きを見せた。
『不死鳥魂』
魔石の中でも『龍心』等と並び最上位に位置する魔石である。
10000年に一度フェニックスがその生を終える際……己が心臓に魔力を集め爆散する。そしてフェニックスは再びその魔石のエネルギーを持って復活を図るのだ。しかし……中には復活することができなかったものもいる。そのため、その命と力は魔石の中に永遠に宿るのだ。それが……『不死鳥魂』である。
「そしてアレスは……このフェニックスの力を最大限に引き出すこの鎧を作り上げた……そしてこの子に選ばれたのが私。例え魔石とはいえ、その力は神獣と同等」
そう言うと金髪は剣を構えた。それにあわせて虹色に輝く翼が大きく開かれる。
「確かにあんたは今までこのレドギアを守ってきた将軍であり、強い……でもね、私達がアレスの飾りだと思ったら大間違いよ!」
その言葉とともに金髪の魔力がどんどん上がっていくのが見てとれた。
正直驚いた。認識を改めなければいけない。まさかこれほどとは。
「おや……?軽口がなくなったわね。少しは認めてもらえたのかしら?」
「まぁな。本気でいかねばならぬ事はよくわかった」
そう言うと私はアルフレックスを握りしめた。
「今までの非礼、詫びよう。すまぬ。」
私の言葉に金髪は少し驚いた表情をする。
「……だが、純粋にお前と手合わせがしたくなった。相手してくれるよな?」
「ここまできたら当然でしょ?」
金髪はそう言うと小さく微笑む。
「じゃあお互い本気でいきましょう。いざっ!!」
「応!!」
それを合図に金髪は恐ろしいまでのスピードで襲いかかってきた。私もアルフレックスに魔力を込め、それを向かいうつ。
奴の金色の魔力と私の青く輝く魔力がぶつかりあい、あたりは爆風による砂煙がまった。
こうして、私と金髪はしばらくの間、全力でその力をぶつけ合うのであった。
◆
「しかしこうも化け物揃いとは……驚いたよ」
私は向かいにいる金髪……シャロンにそうやって話しかける。
「化け物って……ちょっと失礼じゃない?」
「ってか、私達もさりげなく一緒にされてますし」
ワイングラスを傾けながらシャロンはそう苦笑し、隣にいたロクサーヌは少しふてくされた顔をした。
あの手合わせを通して、私達はお互い意気投合。今はこうして夕食をともにしている。
ふと見ると兄上は疲れ切った笑みを見せている。しかし、この二日ほどで年をとった感じだ。どうしたのだろう??
「あのぅ……私は全く何も力はないのですが……」
「右に同じく……」
メイド服に身を包んでいるシータとマリアがそう呟く。しかし横にいたニーナが笑ってそれを否定した。
「何言うてんの。シータの記憶力や家事能力は化け物クラスやん。うちのお父様が秘書に欲しいほどだ、と絶賛してたで。マリアに至っては魔導じゅ……ふがふが……」
「それは言わない約束です!!」
マリアは大慌てでニーナの口を塞ぐ。その様子を見てその場の者たちは大笑いした。
私はご主人様の婚約者と呼ばれる者達を見る。
皆、整った顔立ちをしているだけでなく……改めて見れば、そして話を聞けば、どれもこれも一癖二癖はありそうだ。
シャロンの武勇、ロクサーヌを始め、三姉妹の魔力。ニーナの財務知識とシータの記憶力と家事能力。そして一番普通そうに見えるマリアも何かあると聞く……
「でもね……あんたまだ本当の化け物を知らないのよ」
シャロンは上品に口の周りを拭きながら、言葉を続けた。
「あんたも一応、この後会うからね……言っとくけど。アレスと婚約すると言うことはあと二人、凄い人達と関わることとなるから」
その言葉に先ほど軽口を叩いていたニーナも少し顔を強張らせた。
「確かに……あの二人は同類やからなぁ……アレス、あれで生きていけんのかなぁ?」
「下手するとアレス様は次々と女性と関係をもちますから……その方がいいのかもしれませんよ?」
先ほどとは打って変わって声のトーンが変わる。私は気になって尋ねた。
「まてまて、お主らにそこまで言わせる人物とは……誰の事だ??」
一同は静かに黙り込み……そしてシャロンが口を開いた。
「アレスの母君で私達の義母になる……セラ様と、アルカディア皇女のコーネリア様よ」
それを聞き、ニーナは笑いながら、さらに説明を加える。
「セラ様は……まぁ納得やけど、コーネリア様は想定外やったなぁ」
「ニーナさん、様づけをするとまた怒られますよ?」
「おっと、そうやった。コーネリアはん、て言わないと」
ニーナの言葉にその場の者達が笑う。
「まぁ、気持ちは解りますわ。あの人を前にしたらついつい頭を下げたくなりますもの」
「一応、ボクも他の皇族は見てるけど……威厳というか何というか……本当に凄いよね……」
「私みたいな身分の低い方にもお優しくしてくださいますし」
まてまて、一体どういう事だ?此奴らは……ご主人様の婚約者。本来なら、ライバルと言ってもいい。
なのに、そのコーネリアと呼ばれる人物を敬う……そして自分たちは、というとまるで姉妹のように仲が良い……
「あんた、変な顔をしてこっちを見てるけどね」
突然シャロンが声をかけてきた。
「私達は言うなれば全員『セラ様の娘』なのよ。もちろんケンカはするけれど……世に言う側室同士の争いみたいな事はないわ」
「そもそも、私らは『側室』という立場ではないけどな」
ニーナの言葉にシャロンは頷き、そして続ける。
「そ。皆平等なのよ。ただ……コーネリアだけは別。彼女には……絶対に頭があがらないわ」
その場の全員が頷く。
「あの方の事だから、平等にしてくださいっ!!ってきっと言うと思いますけど……あの方がいるからこそ、さらにここまでの結束が生まれたのだと思いますわ」
今度はロクサーヌが口を開いた。
「彼女は私達にとってのリーダーです。それに異論を挟むものはここにはいません。そして……」
その場の者達が私に視線を向けた。
「会えばあなたもきっと納得すると思いますよ」
◆
英雄皇アレスの後宮はあれほど多くの女性がいたのに不思議と争いは起きなかった。
それは恐らく正妃コーネリアを中心とする他の妃達の結束の強さだと言われている。
年齢は様々であったが、その関係は、まるで本当の姉妹のように……仲良く過ごしていたと言われている。
ちなみに……リリアナはその後コーネリアと出会い……共に過ごすうちに心酔し、彼女の騎士を自認する事になるが、それはまた後のお話。
閑話休題。
お読みいただきありがとうございました。
あとがき、ちょいと長くなります。めんどくさいと思いましたらスルーを笑
読んでくださる方、ありがとうこざいます。
ここでお話ししたいことは3点。
1点目は、読者の方が100倍以上増えまして、ランキングにて1位にさせていただいた事。
あれよあれよと言う間にブクマ数も増えまして……当初は本当に何が起きたのか分からず困惑しかありませんでした。でも多くの方から楽しみにしている、とか頑張って!とか、ファンです!!とか……コメントをいただき、本当に嬉しかったです。それにしても、ファンって……人生でファンがつくとは思いませんでした(笑)そんな事言ってくださる方がいるだけで小説書いてて良かった、と思います。
本当にありがとうございます!
2点目は……書籍化の依頼が来たことです。
何度も申し上げた通り、この作品を書くにあたり、書籍化は考えておりませんでした。好きなように書く、その作品に賛同してくれる読者を大切にする……それが一番の目的でした。
……そんな中、まさか本当に依頼が来るとは……
とはいえ、色々考えた結果、とりあえず保留にしてもらおうと思っております。まだ、お金を貰って本にするほどの文章力はないと思っておりますし、仕事も忙しい……そんな中、進めていけば、わざわざ私なんかに声をかけてくださった担当者にも、今の仕事仲間にも迷惑がかかってしまう。
そして何より……この読者の方々。もし、忙しくて更新が行き届かなくなってしまったら……エタってしまったら。それが申し訳ないです。
こんな作品を押し上げてくださったのは読者の方です。それを最優先にしたいなぁと思います。
3点目。
やはり読者の増加とともに色々な方が読まれるようになりまして。また感想で色々な事を言われるようになりました。
誤字脱字の事や設定の事などは全然受け止められるんですけど。
文章が雑で読むに耐えないだの、私には合わないだの……
前にも書きましたが……私シロートでして、文章雑なのはよく分かっておりまして。そんなに嫌なら読まなきゃいいのに……と思う次第です。
やはりアンチから来るとモチベーションは下がります。その時はこの作品を待ってる方を思い起こしてやる気をあげるようにしています。
本当に2ヶ月間ありがとうございました。そして楽しみにしてくださった方、ありがとうこざいました。
モチベーションとストックの関係で、今回は3日に一度の更新予定です。ご了承ください。
では間章を挟んだ新章をお楽しみください!




