夢魔
感想などいつもありがとうございます。
さてさて。ヒロインとの絡みはないのか?との質問がありましたが……今回の章は内政パートなので、残念ながら書く予定ないです。
次章は戦闘+イチャラブを書く予定なので、それでご容赦くださいませ。
そして……今回は……ちょっと卑猥なお話です。
アレスは自らの部屋で魔境の大地の地図を眺めながら考えを巡らせていた。
予定では明日軍議が開かれ、そのまま出立することとなっている。
魔境の大地は三人の妖魔貴族が住まうと言われていた。その中の一人は八魔貴族と言われるほどの大物だ。
しかしそれ以外は全く解らず、妖魔貴族を初め、魔族に対する情報はない。
「どうにも情報が少なすぎる……何とかして魔族の事に精通している者がいないだろうか……」
そう言うと、傍のヘルムートはそっとお茶を継ぎ足した。
「おそらく主人とて、情報なしでは手は打てますまい。存じ上げている者から聞き出さねば」
「そうだね。という事で、鼠が1匹こっちの様子を伺ってるけど、それは放っておいてもらえるかな?」
「御意。ゼートスにもそう伝えておきましょう。奴もすでに分かっているはずですので、急がなければ斬りかかりますからなぁ」
「……そういや、ゼートスはどこに行ったの?」
「外で剣の鍛錬だそうです」
「…………骨なのに偉いねー」
「骨だからこそ、感覚を戻すために鍛錬をしているのでしょう」
アレスとヘルムートはそう言うと笑い合った。
骸骨が一生懸命鍛錬する姿が滑稽に思えたからだ。
そしてヘルムートが部屋から出るのを見送ると、アレスは一つ大きな欠伸をした。
「そろそろ眠くなったんだけど……まぁ相手をしてあげようかな。はて、どんな情報が出ることやら」
◆
アレスの寝室に一体の人影がそっと浮かび上がる。
それを確認した後、アレスは身を起こして口を開いた。
「……魔境の大地を制圧する上で魔族を怖いとは思っていない。だが、やはり油断できる相手とも思っていない……だから誰か魔族について詳しい人がいて欲しい、そう思ってるんだけど…話してもらえると嬉しいな」
「……なぜ解ったのかしら?」
アレスが目を向けた方向から浮かび上がるように一人の妙齢の女性が現れる。
「どんなに気配を消していても呼吸は消せないからね…それで察知することはでき……る……」
そう言いながら多少の戸惑いを見せるアレス。
その視線の先にはスタイル抜群の美女が申し訳ない程度の面積の布の服を身につけて立っていた。
特に目が行ってしまうのはその胸……見たこともないような豊満な胸を惜しげもなく強調させたその衣服は男を狂わせるのには十分であろう。桃色の髪。妖艶な微笑み。透き通るような白い肌……男の欲望を体現したような美女であった。
「……痴女?」
しかしアレスはそう呟きながら戸惑いを見せる。
「あれ?どこかで見たような……」
「………ちょっと!忘れたの?」
その女はため息をつくと、アレスの方を向き直し言葉を続けた。
「グランツで魔物が狂った際……あなたは私を気絶させたのでなくて?」
その言葉を聞いてしばらくアレスは記憶をたどり……そして思い出す。
「あっ……あの時の痴女……」
その言葉を聞きその女は満足そうに
「こうして挨拶するのは初めてね。グランツの新しい領主殿。あたしの名前はリリス。妖魔貴族序列8位の夢魔」
とアレスに笑いかけた。
「しかし……この屋敷は何なのかしら?先程外にいたスケルトンは明らかな殺気を飛ばしていたし……おかげで入りづらかったわ」
「彼は僕の護衛だからね……外から侵入者がくればそうなるだろうさ」
「って事は、ここに入れてるということは誘い込まれたということかしら?」
「さぁ。ご想像にお任せするよ」
「全く。本音を表さないのね……まぁいいわ」
そう言うとリリスはアレスに少しずつ詰め寄っていく。
「さて、今日は貴方に聞きたいことがあったの」
「まさか、妖魔貴族だったとはね……。それに妖魔貴族殿から聞かれる事なんてないと思うけどね」
「ふふっ。つれないのね。そんなに構えちゃって」
リリスはさらにゆっくりとアレスに近づいていく。そしてその頬に触れながら耳元で囁いた。
「私達が狂った元凶……『魔王陛下の遺物』についてよ」
◆
リリスに距離を詰められた時、アレスは悟られないよう思考を回転させた。
(このまま切り捨ててしまえば、わざわざ軍を出す必要はなくなる。だが貴重な妖魔貴族だ。情報を聞き出してからでも遅くはないか)
そう思い返したアレスは微笑みながら返答した。
「君はアレをどうするつもりだい?」
「必要としているのは私ではないわ。もっと上の方……序列1位の男が、とでも言えばいいかしら?」
渋い顔をしながら答えるリリスに面白そうに問いかける。
「おや、本意ではないようだけど」
「…………余計なことを言いすぎたわ。さぁ答えてもらうわ。……いや、答えさせてあげる…」
そういうとリリスの目が怪しく光始める。と同時に体中から魔力が溢れだした。
夢魔には似つかない膨大な魔力が体中を覆う。
「おやおや。夢魔には似つかわしくない魔力だね…」
「私をその辺の夢魔と一緒にしないでほしいわね……これでも序列8位の妖魔貴族よ!!」
本来夢魔は魔人の中でも下級に位置する。それゆえ、その魔力見ればリリスがどれほどの実力の持ち主なのかがわかる。夢魔として、この境地に達したことが驚きだ。
「たしかに……これはすごい魔力だ……上級妖魔の力は伊達ではないってところかな」
その台詞と同時にアレスの身の回りの品々がリリスが放つ魔力の影響で次々に破損していく。
「さて、痛い目をみないうちに色々と話してもらいたいんだけど?」
そんなリリスの姿を見てアレスは苦笑した。
「うん。確かにこんなところで暴れられても困るしね……だから場所を変えてもらおうかな?」
そういうとアレスは右手を頭上にかかげ、呟いた。
「無の魔法、23番 『別次元』」
「!!!???」
その瞬間アレスとリリスがいた世界が闇に覆われた。
◆
「別次元」
錬金王にして大賢者と言われしゴライエが考案した無属性魔法の23番である。
次元の狭間に空間を作り別の世界を作る。それ故、この空間の中は自身の掌の中と言っても過言ではない。
初めて見る魔法に明らかにリリスは動揺した。
「なによこれ……こ、こんな魔法聞いたことないわよ……」
「そうだろうね。世界中でもぼくしか知らないだろうし」
そうアレスは嘯くとリリスに向かって笑いかけた。
「さて、この世界は僕の作り出した世界……僕を殺せば君はここから出ることができないし……それに」
そういうとアレスは自身の魔力を込める。先程のリリスとは比べ物にならないほどの魔力が全身を駆け巡った。
魔族が相手の実力を判断するのは魔力の量である。リリスは尋常ではないアレスの魔力を感じ取り、思わず後ずさりをした。
(この魔力量……!!ありえない、アスタロトと同等、いやもしかしたらそれ以上……)
リリスの額に汗が浮かぶ。その姿を見てアレスは口元を緩めた。
「さて、どうやら僕の実力は分かったみたいだね?僕としても無駄な争いはしたくないんだ」
明確な降伏勧告。その言葉にリリスは苦笑しながら両手を上げた。
「知らない魔法にこの魔力量……相手をするには分が悪すぎるわ………降参」
「分かってくれて何より」
そう言って魔力を放つのを止めると同時に再び世界が一変する。アレスの寝所に戻ったのだ。
「さて、降参した私はどうすればよいのかしら??」
「とりあえず、現在の魔族の現状を聞きたいんだけど」
「いいわ。でもね……」
そういうとリリスはアレスの方に近づき、再びその指で頬をなぞった。
その瞬間
「んんっ!?」
突然その唇を己の唇でふさぐ。
アレスとリリスの周りにいくつもの魔法陣が浮かび上がった。
「はい、これで夢魔の魅惑の術式、完了」
そう言うとリリスは妖艶な微笑みを浮かべる。
「さぁ、形勢逆転よ。今度はこちらが主導権を握らせてもらうわ」
◆
----魅惑の術式----
それは夢魔特有の魔術。どんな男も夢中になり、魅了された男は夢魔と交い命尽きるまでその精を吸い尽くされ、干からびた死体で発見されることが多い。
リリスは力の差がある事が解ったのと同時に作戦を変更した。即ち夢魔としての最大の武器……男を隷属させる魔法を使う事にしたのだ。
「さて、これで貴方は私の奴隷となるのよ……覚悟なさい」
そういうとリリスは蕩けた目をしているアレスの腕を取り寝所に引き込んだ。アレスは何も抵抗をしない。
「凄まじい魔力の持ち主だから……『魔王陛下の遺物』のことを聞いたら一滴残らずその精をいただくわ」
そう言ってリリスは己の衣服をすべて脱ぎ去ると、今度はアレスの衣服も剥ぎだした。
「さて……楽しみだわ。どれだけ素晴らしい精をもっているのか……せいぜい頑張ってちょうだい」
お互いの裸体をさらけ出しながら、いまだ呆けた様子のアレスにリリスは覆いかぶさるのであった。
◆
朝を迎えた。そこには自己嫌悪に陥り項垂れているアレスがいた。
「僕は……僕は……やってしまった……」
そしてその首には…女性の腕が巻かれている。シーツは見るも無残な状況になっており、その激しさをうかがわせる。
「まさか、この私が逆に虜にされるなんて……」
リリスは潤んだ瞳を向けながらアレスの顔に接吻をした。口づけの嵐がアレスを襲う。
魅惑の術式はアレスの本性をさらけ出すこととなった。
アレスには三人の英雄の記憶が宿っている。
軍神レオン・アルカディア
英雄色を好んだように、彼もまた多くの側室を抱え、夜な夜な相対していたと言われる性豪であった。
剣聖シン・オルディオス
彼は特定の誰かを相手にすることはなかった。しかし、時折訪れる娼館では……すべての娼婦を気絶させたという伝説を持つ。
そして何より……
錬金王ギルバート・ゴライエ
数多くの社交界で浮名をはせた「天性の女たらし」であり、女性関係で国をも陥れた「性技の天才」
即ち三人とも溢れるばかりの性欲の持ち主でありそのエネルギーを宿していたのである。
魅惑の術式はアレスの本性を目覚めさせるのに充分であった。3人の性欲を併せ持つアレスはまさに『性王』と呼ぶに相応しいほど。そう……リリスは……アレスの『性王』としての本性を目覚めさせてしまったのだ。
そして自らは膨大な魔力を持つアレスの精は……リリスにとって極上のご馳走のような存在であったのだ。さらに彼はギルバートから徹底的に房中術を叩き込まれている。
一晩の交わりの中で尽き果てるどころか激しくなっていくアレスに夢魔であるリリスもついに屈服。その勢いに飲まれ性が本業の夢魔が気絶までしてしたのであった。
「ご主人様……もうリリスはあなた様の犬になりますぅ……」
そう言ってしなだれかかる。ふくよかな胸が押し付けられた瞬間……アレスの中でまた何かがはじけた。
「このっ!この胸が俺を狂わせたんだ!!」
「あああああああああぁぁぁん!!」
こうしてアレスは再びリリスと一戦を始めることとなる。そして再び自己嫌悪に陥ることになるのだが……
未だ婚姻前ではあったが……
この日アレスの純潔はとうとう失うこととなり……大人の階段を上ることとなったのであった。
アレスの初体験の相手はまさかの魔族……苦笑




