第31話 ギルドマスター
明けましておめでとうございます。本年も『ご都合能力の冒険者は自重する気は無いようです』をよろしくお願いします。
ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
2階に上がると、奥に向け一直線の廊下になっていた。
その廊下を左右等間隔に部屋が造られているようだ。
エレーラさんはその廊下の部屋には目もくれず奥に向けて足早に歩いていく。
そして一番奥のGM執務室と書かれた部屋の前で止まった。
「こちらです」と言うと、エレーラさんはノックどころか声すら掛けず執務室の中に入っていった。
えっ! 何も言わずに入っていったけど大丈夫なの?
ウイも同じように目を丸くして驚いている。
「どうされました? こちらです」
俺が驚いて固まっていると、中に入るように促してくるエレーラさん。
執務室に入ると、気骨隆々のオッサンが居る……、どころか誰も居なかった。
どういう事?
俺の反応を見て何故かエレーラさんが満足そうだ。
「では、少々お待ちください」
エレーラさんはそう言うと、執務机の上に置いてある、直径5cmほどの小ささ水晶球に触れ魔力を込めた。
すると水晶球は机の後ろの壁に向け光を放ち始める。
何が起こるんだ?
やがて光が当たった壁に一人の人物が映しだされる。
年の頃は40代半ばだろうか? 細身の体格で眼鏡を掛けた如何にも文官的な男がそこに映し出されている。
「君が噂のレオンハルト君かい?」
唖然としている俺に男は声を掛けてきた。
「……はい」
何これ? 魔道具? こんな魔道具もあるの? すげ~、などと思いながら何とか言葉を絞り出す。
「少し驚かせてしまったみたいだね。これは王都とエルセンを映像で繋げる魔道具だよ。あっ、紹介が遅れたね。ウインザー王国、王都のギルドマスターをしているハリー・クラムだ」
ウインザー王国王都の冒険者ギルドって、確か冒険者ギルドの総本部なはずだけどそこのギルドマスターって事はすべての冒険者ギルドのトップって事か? 取りあえず失礼の無いようにしないと。
「レオンハルトです。よろしくお願いします。そしてこの娘は私のパーティーメンバーのウェンディです」
「ウェンディと申します。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく、レオンハルト君の事は色々伺っているよ」
とニヒルに笑う、ギルドマスター。色々伺っているって、そういえば俺の噂って言っていたけど、どんな噂だろう、凄く気になるんですが。
「どのように伝わっているかは分かりませんが、自分などまだまだです」
「まぁ、謙遜しなくてもいいよ、君の実績は充分に優秀な冒険者だよ」
「ありがとうございます」
「うん、謙遜も大事だけど時には自分の力を誇示する事も冒険者には必要だよ」
「はい、肝に銘じておきます」
「うん、ただ自信過剰になりすぎると命を失うことになるから気を付けてね」
何が楽しいのか、実に楽しそうに話すギルドマスター。
「では、本題に入ろうか。ゴブリンロードを討伐したとの事だけど、魔石を見せてくれるかい?」
「はい」と返事をして【神倉】からゴブリンロードの魔石を出す。
「ほぉ、これはまたデカいな、エレーラ君、鑑定してくれ」
「はい、すぐに」そう言うと魔石を机の上に有った黒色の石板の上に置き魔力を流す。
しばらくするとエレーラさんは石板を確認し
「ゴブリンロードの魔石で間違いありません」とギルドマスターに報告する。
「ありがとう。本当にゴブリンロードを君が討伐したんだね」
「いえ、私1人ではなく私達2人でです」
俺の言葉にウイが反論しようとするがそれを手で制する。
その行動を見ていたのか。
「まぁ、そういう事にしておこう」
としたり顔を見せるギルドマスター。
「では、話を続けるが、君の報告の中に異常成長種の可能性があると有ったようだが、その根拠は?」
「はい、それに関してはこれを見て下さい」
俺は【神倉】から2つのサイズ違いの魔石を出した。
「その魔石は?」
「この魔石は2つともゴブリンの魔石です。小さい方はリッカ村への移動中に倒したゴブリンの物で、大きい方が今回の討伐で倒したゴブリンの魔石です」
魔石は本来同じ種類の魔物の場合殆ど大きさに差が出ない。そして魔石の大きさはその魔物の強さに比例して質が良くなり大きくなる傾向がある。つまり同じ種類の魔物なのに明らかに魔石の大きさに差がある場合、その魔物が異常成長種である可能性が高くなるという事だ。
「ほぉ、エレーラ君、鑑定を」
「はい」
エレーラさんは手際良く2つの魔石を鑑定していく。
「お待たせいたしました。確かにこちらの魔石は2つともゴブリンの魔石ですね」
「なるほど、そうすると君の言うように異常成長種の可能性も高くなるね。他の種類のゴブリンの魔石も持っているよね?」
「はい、他にはゴブリンジェネラル、ゴブリンウィザード、ホブゴブリンウォーリア、ホブゴブリンの魔石があります。ただ、今回の討伐ゴブリンの物しかないので通常の物の大きさが分かりません」
「ふむ、エレーラ君、ゴブリンロード以外ならエルセンギルドに今言ったゴブリンの魔石のストックが有ったはずだよね。取って来てもらえるかな」
「はい、かしこましました」
そのままエレーラさんは足早に退出していった。
「いま、通常の物を持ってくるから、少し待っていてくれ。あっ! 待っている間にゴブリンの魔石をだして置いてくれ」
言われるままに種類を説明しながら魔石を机の上に出していく。
「なるほど、比べるまではっきりとは言えないが確かに少し大きい気がするね」
この人よく水晶越しに大きさが分かるな。さすがはギルドマスターって事なのかな? いやギルドマスターは関係ないか。
そのまましばらく待っているとエレーラさんが執務室に戻って来た。
今度は俺達がいた為かちゃんとノックもしたし、声掛けをして入って来た。
「お待たせいたしました。そちらがレオンハルトさんが討伐したゴブリンの魔石ですね。では早速鑑定を致します」
それから、エレーラさんは俺が持ってきた魔石の種類を聞きながら1つずつ鑑定していった。
「確かにレオンハルトさんが持ち込んだ魔石の方が明らかにすべて大きいですね」
「そうか、そうすると、ロードも異常成長種であった可能性が大きいね」
うん、可能性が大きいどころか確実に異常成長種です。【ロラ】が言っていたしね。
『はい、間違いありません』
ほらね。
「レオンハルト君、ゴブリンどもの巣の調査はしたんだよね。何か原因になるのもは無かったかい?」
「はい、実は受付では騒ぎになると思い言わなかったのですが、ゴブリンの巣からこんな物を発見しました」
『魔皇石』と『魔晶石』を【神倉】から出す。
「それは、まさか!!」
魔皇石と魔晶石を見た瞬間ギルドマスターの表情が一変する。
「はい魔皇石と魔晶石です。ゴブリンの巣の奥に置かれていました」
エレーラさんも名前を聞いた瞬間、表情が強張る。
「君はそれが何か知っていたのか?」
「ええ、実物を見るのは初めてですが」
「君はいったい何も……、いや、詮索するのは良そう」
いや~、何者でもないですよ。ただ【神眼】&【神賢】があるから色々分かるだけですから。
「しかし魔皇石や魔晶石などめったに世に出回る物ではない、それが同じ場所に、それもゴブリンの巣などに……、何か作為的なものを感じずにはいられないね。一番に考えられるのはやはり魔人か……」
どうやら、ギルドマスターも俺達と同じ結論らしい。まぁ、俺達でも考え付く事だからそりゃギルドマスターも考え付くよね。
「しかし、なぜ魔皇石だけでなく魔晶石まで置いてあったんだ。魔皇石だけでも充分事をなしたと思うが……」
ギルドマスターがつぶやいている。
俺もそう思ったが、考えても分からないので、もう諦めた。ギルドマスターにお任せします。
ふと、エレーラさんを見ると魔人の名前が出たからなのか、魔皇石と魔晶石から漂う魔力に恐怖しているのか顔が真っ青だ。
「エレーラさん大丈夫ですか?」
俺の言葉に我を取り戻したのか、頭をふって
「はい、大丈夫です」と一応返事を返して来た。まだ顔色は優れないようだど。
「君には悪いが、それをギルドに売ってくれないか? もちろん相場通りに、いや、少し相場より高めの金額は出す。どうだろう?」
そりゃ、もちろんOKですよ。と言うか、元々ギルドで買ってもらえるか聞くつもりだったし。
「問題ありません、お譲りします」
俺の返事に一つ息をついて安心した表情に変わる。
「それで、大変申し訳ないのだが、魔皇石と魔晶石2つの買取となるとさすがにエルセンギルドではそれだけの金額をすぐに用意できそうにないんだ、それと魔皇石と魔晶石のしっかりとした鑑定もしたいしね。だから支払いは半月ほど待ってくれないかな? あっ、それか王都まで来てくれたら1週間後には支払えると思うけど、どうする?」
どの道、明日には王都に向け発つつもりだったし丁度いいや。
「分かりました、王都に行きます。と言いますか、元々明日には王都に向かう予定だったので丁度よかったです」
「そうか、それなら王都のギルドに私宛に来てくれ、直接渡そう。あっ、それと今回のゴブリンロード討伐の報酬も一度こちらで精査して報酬額を決めたいので、こちらも王都のギルドで支払う形でもいいだろうか?」
「はい、大丈夫です。あっ、魔皇石と魔晶石はどうすれば?」
「エレーラ君に渡して置いてくれ」
エレーラさんさっき青い顔していたけど大丈夫かな? と、エレーラさんを見ると
「お任せください」
といつものエレーラさんに戻っていた。この人も中々の強者だと思う。
「それと、レオンハルト君のランクをミスリルに、ウェンディ君はゴールドにランクアップしておいてくれ」
おお、いきなり2人とも2ランクアップだ。
「よろしいのですか? シルバーから2ランクアップなど前例が在りませんが」
「問題ないよ。ゴブリンロードが率いる群れを2人で殲滅したんだ、実績的には充分。と言うか、レオンハルト君は本来トロール討伐でゴールドに上がっていてもいいくらいだったのだから、丁度いいんじゃない」
「かしこまりました、ではそのように手続き致します」
話がまとまったようでエレーラさんは「1階の待合席でお待ち下さい」と言うと、俺達のギルドカードとゴブリン達の魔石、魔皇石、魔晶石を持って退出していった。
その後ギルドマスターも「じゃあ、王都で待っているからね」と言って消え去った。
なんか気さくな人だったな。
「さあ、俺達も1階に戻ろうか」
「はいです」
1階の戻り、エレーラさんを待つ間、今のステータスを確認することにした。
今回のゴブリンロード討伐ではかなりレベルが上がっていたようだし楽しみだ。
【名前】 レオンハルト 【年齢】 15歳
【種族】 人族 【職種】 冒険者
【ランク】シルバー
【レベル】40(GS)
【HP】3092/3092
【MP】31016/31016
【筋力】1333 (GS)
【耐久】1327 (GS)
【俊敏】1327 (GS)
【器用】1325 (GS)
【知力】1330 (GS)
【魔力】1332 (GS)
【幸運】1332 (GS)
【加護】創造神の加護
【装備】魔鋼のバスタードソード+2 黒巨鬼の革鎧+2
黒巨鬼の革籠手+2 黒巨鬼の革ブーツ+1
黒巨鬼の革シャツ+1 黒巨鬼の革パン+2
スキル一覧
【究極スキル】
:神眼
神倉
神器
神賢
【特殊スキル】
:偽装者 解放者(NEW) 再生者(NEW) 武の神才
闘の神才 魔の神才 補の神才 探の神才
隠の神才 耐の神才 匠の神才(NEW)
【上位スキル】
:武装術 レベル 5
闘鬼術 レベル 4
魔道術 レベル 4
探知術 レベル 4
隠密術 レベル 3
七元魔法 レベル 3
結界魔法 レベル 3
空間魔法 レベル 2
転移魔法 レベル 3
付与魔法 レベル 3(UP)
精神魔法 レベル 2
死霊魔法 レベル 2
召喚魔法 レベル 1
匠創魔法 レベル 2(NEW)
七元耐性 レベル 2(UP)
混合魔法耐性 レベル 2(UP)
物理攻撃耐性 レベル 3(UP)
【通常スキル】
:生活魔法 レベル 3(UP)
採取 レベル 4(UP)
ゴブリンロードのレベルからするともう少し上がっていても良い気がするが、それでも7も上がったのだから充分過ぎる結果かな。
あと、スキルに関しては攻撃面のスキルは上がらなかったが、耐性スキルは軒並み上がっていた。
さすがに今回はかなりダメージを受けたその結果だろう。
さて次はウイのステータスだ。
【名前】ウェンディ 【年齢】15歳
【種族】狼人族【職種】奴隷(所有:レオンハルト)
【レベル】34 (S+)
【HP】1159/1159
【MP】3006/3006
【筋力】754 (SS)
【耐久】538 (A)
【俊敏】757 (SS)
【器用】756 (SS)
【知力】646 (S)
【魔力】861 (GS)
【幸運】547 (S)
【加護】創造神の加護(下位)
風精霊王の加護(獣王)
【装備】魔鋼の細剣+2 魔鋼の短剣+1 黒巨鬼の革鎧(女性用)+2
黒巨鬼の革籠手+2 黒巨鬼の革ブーツ+1
黒巨鬼の革シャツ+1 黒巨鬼の革レギンス+2
スキル一覧
【特殊スキル】
:精霊姫(NEW) 風之巫女(NEW) 風精霊化(NEW)
武の神才[共有] 闘の神才[共有]
【上位スキル】
:二刀流 レベル 3(UP)
闘鬼術 レベル 4[共有]
精霊魔法 レベル 3
精霊視 レベル 5
【通常スキル】
:剣術 レベル 3
短剣術 レベル 3(UP)
弓術 レベル 2
危機感知 レベル 2(UP)
気配感知 レベル 3
暗視 レベル 3
隠密 レベル 3
採取 レベル 3
料理 レベル 3
ゴブリン戦の前から比べるとレベルが11も上がっている。
ステータス値も軒並みすごく上がっており、基本の戦闘能力も高いし既に上級冒険者クラスの実力は有るかも知れない。
スキルも若干ではあるがレベルアップしている。
やっぱり【創造神の加護】の恩恵はすごいな。
「レオンハルトさん、お待たせしました。ギルドカードをお返しします」
どうやら終わったようで、エレーラさんがギルドカードを渡しにわざわざ、ここまで来てくれたみたいだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですから。後、王都には明日出立されるのですか?」
「ええ、そのつもりです。乗り合い馬車で行くつもりなので到着は5日後の予定ですが」
「そうですか、では王都のギルドに行かれた時にギルドカードを提出して下さい。今回の件が伝わるようにしてあります。まだ5日後だと少々早いと思いますので、王都観光などをされてから向かっていただければ丁度いいと思いますよ」
「そうですね、じゃあ、時間に余裕があるようなら王都観光でもしてみます」
「はい、そうして下さい。世界最大の都市ですからきっと驚かれますよ」
「楽しみです。あっ、後、今回のゴブリンの素材も売却したいのですが、そのお金を王都で一緒にもらう事は出来ますか?」
「分かりました。ではそのように言付けておきます」
その後、素材を素材倉庫に出して、最後にエレーラさんと挨拶をして、ギルドを後にした。
そして翌日、俺達は王都に向けて出発した。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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ストックが無くなりました。毎日の更新を楽しみにしていただいいる方には申し訳ないのですが、次回から3、4日ごとの更新のなりそうです。




