乙女ゲーム 〜弟の制裁編『続編』〜
乙女ゲーム〜弟の制裁編〜の続きのお話です。
沢山の応援に答えて?弟のその後をかいてみました。
なので、前編になる乙女ゲーム〜弟の制裁編〜を読んでから読む方をお勧めします。
あと、読む前に皆様へ作者から一言。
お、お兄さんを追い出させないんだから。笑
書斎にある机は、綺麗に整頓され、唯一積み重なっている本も今は、傍に避けられている。
その奥の椅子に座る壮年の男は、今、深いため息をつきながら、報告を聞いている。
どこで育て方を間違ったのだろう?
誰かに問いたい気分だ。
最初に聞いた言葉はなんだっただろうか
?
「これは、なんだ。」
目の前に置かれた小さな物を見つめながら自分の息子に視線を移す。
「戦利品?です。」
「戦利品?・・・なんの戦利品だ。人の爪のようにも見えるが」
机の上に置かれた小さなそれを拾い上げ、手のひらでゆっくりと転がしながら見ると、それはカーブを巻いて、手の動きでコロコロと船を漕いでいる。
「兄さんの爪ですね。」
私は、ゆっくりとそれを机の上に置きなおした。
まさか自分の息子に寒気を覚える日がこようとは思わなかった。
「・・・。学園でお前は何をしてきたのだ。」
「ちゃんと、父上が
『話し合いをしてこい。』
と言うので話し合いをしましたよ」
軽く含みのある言葉だった気がするが、そこは軽く流し。
「・・・そうか。しかし、何がどうなったら爪が出てくるのだ。」
そういうと、息子は顎に手を当て首を傾げ、本当に困った顔をする。
「さあ、話の流れでしょうか?」
「流れ?どんな会話をしたのだ。」
「えっと、大まかに兄さんの噂の真意の確認と、生活態度の注意。そして、お姉さんについてどうするのか?っという確認でしょうか」
「その3つの流れでどうなったら爪が取れる事態になるのだ!!!」
つい興奮気味で怒鳴ってしまったが、なぜ息子の爪が剥がれてしまう事になったのか。
話に繋がりが本当にあるのかがわからない。
そして、また怒鳴りそうになった少し静かな室内に。
コンコン。
と響くおと。
返事をせぬまま開かれたドアから、何故か妻が入ってきた。
「どうしたんだ?エレノア」
妻のほんわかした雰囲気と、紅茶のいい匂いで、つい困惑しながらケーキを受け取ってしまったが、なんでこうなった?
時は少し遡る
「母上。ごきげんいかがですか?」
庭で紅茶を飲みながら庭を眺める母は、まだ二十代の様な若々しさにテーブルに添えられた鮮やかな花が似合う。
「あら、今日は珍しいわね。」
微笑む笑顔は可愛らしい。
「父上から呼び出されまして」
「そうなの?なんの要件かしら。いまは、学校にいる時期でしょ?学校は、たのしい?」
「はい。とても、いろんなことが起こって、本当退屈しないです。」
本当見てるぶんには楽しいんですよね。
「そうなの。例えば?」
「そうですね。とても綺麗なご令嬢がいまして、演技がとてもうまくて、学園では知らない人がいないくらい有名なんですよ。」
そう、毎日違う男を侍らせて、時には、凛々しく。時には、儚げに男を騙す演技派です。
「他には?」
「そうですね。皇太子が公衆の面前でその子に愛を囁いたことがありました。」
本当に脳内お花畑なんだから。
あれで『皇太子は、あんな女を王妃にするつもりか』と、皇太子派が、結構離れてくれた。
「まあ、素敵だわ。ロマンチックね。でも、あなたは、どうなの?王女様とは、うまくいってる?」
「ええまぁ、つつがなく。ただ陛下から、少し打診がありまして・・・」
僕は、少し考えてから
「でも、内密のお話なのでまだ内緒にさせてください。」
と唇に人差し指を当てながら、ニコリと微笑む。
まあ、皇太子が沢山の問題を起こしてくれたおかげで、彼女が王位に近づいた。
あとは、もうちょっと、押してあげるだけかな?
最後に、愛を取るか。王位を取るか王子には選んでもらいましょう。
まあ、まだ彼女に夢中みたいだから。
でも、ちゃんと忠告をしたから文句は言わせない。
まあ、僕は、どっちでも面白いからいいんだけど、最悪は、考えて。
動かせる駒はたくさんいないとつまらないから。
王子にも、他の貴族のお坊ちゃん達にもまだまだ踊ってもらいましょう。
「そうだ。母上。今日は、母上と父上が初めてお会いになった記念日でしたよね。サプライズでケーキを買ってきたので、できれば少ししたら、紅茶と一緒に差し入れしてくれませんか?」
「まあ、そうだったかしら?でも、嬉しいわ。ありがとう紅茶が準備できたら持っていくわ。」
ああ、これで説教がはやく終わる。
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「どこに行くんだ?話は終わってないぞ」
母と父の甘い雰囲気を避けるように外に出ようとすると、父から呼び止められる。
「これから、デートなんです。たまには、外で会いたいと言われまして」
「まあ、ふふふ。
あなた恋人達の邪魔はしちゃいけないわ。王女様によろしくね」
「はい。母上。」
そそくさと出て、ドアを締めると、執事がひとり僕に頭を下げる。
「兄様は、どうなった?」
「はい。ちゃんと、あちらの公爵家に謝りに行かれたようです。ご令嬢のお好きな物を準備しておきましたし、甘い方ですから大丈夫でしょう。」
「そう。さすがだね。ありがとう」
本当。さっさと、あの兄様には、皇太子の派閥からは、抜けてもらって、王女の派閥を公爵家で後押しをしてもらわなければ。
なんのために連れ戻したかわからないからね。
まあ、あまりに使えなかったら、さっさと、子供を作って隠居してもらおう。
まあ、最悪。まだ兄さんがくれた暗殺のおじさん達が苦しみながら地下室で待ってるし。
ふふふ。
そういえば。兄さんが入れあげてた彼女。僕にも、なんか言ってた気がするけど、なんだったかなぁ?
なんかムカつく言葉だった気がするけど、忘れちゃった。
まあ、彼女には、まだまだ皇太子を繋ぎ留めていてもらわなきゃいけないし、こんなにも、面白くしてくれたんだから。沢山のお礼をしなきゃね。
僕は、そんなことを考えながら、浮かれ出したくなる気持ちを抑えて。
将来の伴侶の為に赤い薔薇を買い
そして、彼女に愛をささやく。
『君だけを愛してる』
それは、異世界の乙女ゲームの僕がトゥルーエンドの時にささやく愛の言葉だったのを僕は知らない。
最後までお読みいただきありがとうございます。
皆様のおかげで、なんと乙女ゲーム〜弟の制裁編〜が、ジャンル別の日別三位をいただきました。
初めての快挙に作者は、大慌てでした。←勝手に
沢山の感想をいただきました。
特に兄さんを追い出せと、そんな皆様のご期待に逆らおう。と、兄さんを家からは追い出さない話を考えました。笑
褒めてください。頑張りました。笑
基本自己中?な弟君です。愛ゆえに?
皆様が沢山読んでいただき満足していただけたらうれしいです。