一時間目 雨月アナな学園
自分で一話出すって言っといて、こんな時間かかるってどうなのよ私?
しかも飛んだ駄作だし。
桜の舞う通学路、そこは期待と不安を胸いっぱいに詰め込んだ少年少女達が、明日へ向かって歩き出す輝ける道。
今年も沢山の高校生が、学び舎へと駆けていきました。
―――………の、30分後……、
「ちぃィィィィこぉォォォォくぅゥゥゥゥだぁァァァァアアッッ!!!」
その輝ける道とやらを明日への期待や不安ではなく、遅刻と言う恐怖の一点張りの思いで自転車を駆る少年が一人。
彼は高校の制服に黒いセカンドバック、ボサボサの髪を持っており、口にはおいしいマーガリンを塗った食パンをくわえていた。
ーーークソぅ、高校生活初日で遅刻ってどうなのよ俺ぇ〜!これ急がねーと入学式間に合わなねーぞ!!
少年は自らの思考回路の中で軽く自責をした後、自転車のスピードを早めた。
カンのいい人はもうお分かりだろう。
そう、この少年、ピカピカの高校生なのである。それなのにあろうことか、入学式を遅刻しそうになっているのである。
入学式早々ちこくってどうなのよ。勿論ダメなのよ。
尋常じゃないスピードで走る自転車を、危なっかしさ100点満点のハンドルテクニックで操る少年。
もはやその顔は切羽詰まり過ぎて、泣く子も黙る鬼神と化している……。
そのかいあってか、すぐに彼の目的地である高校が見えてきた。
彼は先程の倍以上のスピードを出して正門を潜り、駐輪場に自分の自転車を突っ込んでから、ダッシュで校舎、ではなく体育館に滑り込んだ。
「ハァ、ハァ。……ギ、ギリギリセーフッ………!」
そう言って少年は、安堵しきった表情を浮かべて、体育館の床に座り込んだ。
……、視線。
「ん?」
少年は突き刺すような視線を辺りから感じ、体育館を見渡す。
見てみるとビックリ、何とそこに居た人間全員の痛々しい眼差しを、この男は漏れなく全部頂戴していた。
何か偉そうな先生もこっちを見ている。
居心地が悪くなった彼は、とりあえず群衆に手を振る。引きつった愛想笑いを添えて。
すると彼は、群衆の中に見慣れた顔を見つけて目を輝かせた。
「あ、お〜い、ルーチェ〜!」
彼は人集りに隠れたた白銀の頭に声をかける。
すると、彼が『ルーチェ』と呼んだ少年はその呼びかけに気づいたらしく、周りの(え?コイツあのバカのダチなの?)という視線視線を気にも留めず、微笑して小さく手を振った。
……だがその微笑みも、わずか5秒で消え去った。
ボキッ、バキッ、という、指の骨を鳴らす音で。
「ん?何だろ?」
そんな軽いノリで後ろを振り向く彼の後ろに立っていたのは、厳つい顔をして竹刀を持って、ジャージ着ていたおっさんだった。
その人こそ、この雨月高校の生徒指導の先生であることを、彼、松田ナオトはこのあと身を持って知ったのだった………。
+++
数時間後・雨月高校・屋上
「さ、災難な一日だった………」
黒髪の少年は座り込んで、憔悴しきった顔でそう呟いた。
「……ナオト、……それ、……お前、……悪い」
隣で突っ立っていた別の少年の駄目押しによって、『ナオト』と呼ばれた少年の心のHPは0になってしまった。
「お、お前まで!お前までそんな事言うんじゃねーよルーチェ!」
『ルーチェ』と呼ばれた白髪の少年は、その整った顔がもったいない程の無表情で
「……だって、……ホントの、……事」
と呟き返す。
「んなっ!こ、この薄情者ぉー!!」
勢いよく立ち上がり、ルーチェに向かってそう叫んだナオトなのだが、どうやらルーチェは『薄情者』の意味が解らないらしく、無表情で小首を傾げた。
それを見て意気消沈したナオトは、もういい、と言って落下防止の金網に身体を乗せる。
そして少しの沈黙の後、
「なあ、ルーチェ、」
「……ん」
「この学校、何か楽しそうだな」
「?」
「他の生徒見りゃあ分かるだろ、み〜んな、ヤバそうな眼をしてた……!」
「……ん、……そう、……だっけ?」
「ああ、そうだったよ。だから、中学ん時は退屈だったけど、ここなら---」
「……退屈、……じゃない」
「………ああ、そうだ」
ナオトは無口で無表情な自分の友人に向かって、まるで欲しかった玩具を買って貰った子供のような、無邪気で楽しそうな笑みを浮かべて見せた。
「これから何が起こるんだろうなぁ〜!何でもいいからメチャクチャな事が起きて、命の限り笑っていたい!!……そう思うだろう?ルーチェ?」
ルーチェは明るく元気な自分の友人を見て、薄く微笑みながら、
「……ん、……そうだな」
と呟いた。
「じゃあそんなわけで、これからも楽しくやろうぜ?」
ナオトはそう言って拳を突き出す。
ルーチェはまた、ん、と生返事と一緒に、その拳を重ねた。
ん〜と、
とりあえず、こんな感じです。
こっからは皆さんがよろしくお願いします。
ナオトとルーチェの通う雨月高校で、しっちゃかめっちゃかトラブル起こしてください。
……ホント、誰か応募してッ!!