第三十八話
ザー ザー
雨が降り、僕の体を打ちつける。
勢いも相まって、ただ濡れるだけでなく痛みも感じた。
もう夜の帳が下がりきり、人を見かけなくなったこの時間帯。
雨に打ちつけられながら夜道を歩く子供に、声をかける人物などいなかった。
今日も一人の夜を過ごす。
一人でいる時間は嫌いではないけれど、だれも僕の周りにいないのは寂しく思うことのほうが多かった。
虚しく今日も街を歩く。
その時、急に僕の周りだけ雨が止んだ。
「風邪ひくよ?」
そう言って目の前の男の子は僕の上に傘をさす。
気がついた時には、男の子が自分の傘を僕が濡れないようにと使っていた。
その気遣いが今は痛い。
ふと、目の前の彼の顔を見上げる。
その美しいスカイブルーの瞳は、心配そうにこちらを見つめていた。
それから少し、彼と言葉を交わした。
彼の身なりからして、相当裕福な家の子供だろう。
そんな子が僕みたいな庶民に、それもとてもみすぼらしい格好の僕に話しかけていいのだろうか。
話している間、僕はひたすらそのことだけを考えていた。
雨も止み、彼との別れ際、彼は僕に一言こう言った。
「これを持ってたらいい事あるかもね。」
そうして手渡されたのはひとつの宝石だった。
やや青みがかった緑のその宝石がはめ込まれたアクセサリーを残して、男の子は姿を消してしまった。
その宝石はまるで光のように、僕の人生を照らしてくれた。
僕の人生を大きく変えてくれた次期魔王候補の一人によく似た少年。
たしか名前は…………。
パチッ
目を開くと同時に映り込む灰色の天井。
何だかとても懐かしい夢を見たような感覚に包まれる。
最後、何故か聞こえなかった言葉は何だったのだろうか。
普段ならあまり気にかけない夢の内容が、少しの間
僕の頭から離れることは無かった。
自分の記憶を探り、今何をしていたのかを思い出す。
内容を思い出していくうちに、頭の痛みがひいていることに気がついた。
けれどそんな感情も、直ぐに僕の脳内から一度消え去っていく。
「大丈夫か?」
聞き覚えのある声を耳にし、咄嗟に聞こえた方向に視線を動かす。
そこにはいつものような怒り気味のたこきれ、ではなく少し眉間にしわを寄せたたこきれがいた。
その姿はまるで、何かを心配しているような素振りだった。
たこきれが何をそんなに心配しているのかがくみ取れず、少しの困惑を抱く。
「なにが?」
そう僕が尋ねたとき、たこきれの表情が少し緩んだ気がした。




