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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

グランゴルド王国三部作

ソーニャの遺言


「アルチュール・グランゴルドハイム王太子殿下とエリザベス・マックスウェル侯爵令嬢との婚約を破棄し、デイジー・サンボーン伯爵令嬢との婚約を発表いたします」

宰相は紙を捲った。


「続いて、クラウディア・マックスウェル侯爵令嬢と、ラファエル・グランゴルドハイム第二王子との婚約を発表します。また、此度のエリザベス嬢の過失により、マックスウェル侯爵家の財産の半分をグランゴルド王室に献上するものとします。また、エリザベス嬢は国外追放。一ヶ月以内に国境を越えるように。以上です」


 宰相は発表し終えると、眉間に皺を作りながら持っていた紙を丸めた。会場は静寂。一年の始まりを祝う夜会会場での突然の通達に、驚きの声をあげるのも躊躇われた。エリザベスに瑕疵などあっただろうか?


 一人、会場の前方に呼び出されていたエリザベスはカーテシーをした。

「承知しました」


 エリザベスの姿を見て、エリザベスの友人のパトリシア・ローレンハイム公爵令嬢は込み上げてくる涙を懸命に堪えていた。


「クラウディア・マックスウェル侯爵令嬢は本日より、王室預かりとなります。クラウディア嬢こちらへ」


 贄だ、と思わず目を逸らす。マックスウェル侯爵夫妻がクラウディアの両側から娘を支え、最後の時を惜しむように三人並んで前へ進み出た。


 クラウディアをラファエルが迎えに来た。

「僕が守ります」

マックスウェル侯爵家の面々にのみ聞こえるように囁いた。


「よろしくお願いします」

マックスウェル侯爵は小さな声で、断腸の思いで声を絞り出した。


 マックスウェル侯爵家の災難は学園の教師の一言で始まった。グランゴルド王国の貴族は学園で二年間の教育を受けるのが義務とされている。


 王国の貴族が共通の認識を持つように、社会の常識を共有できるように。貴族としての振る舞い方、暗黙の了解、仕来り、ダンスの仕方、歴史、語学……


 また、同年代の男女を集めた集団お見合いという側面もある。侯爵家以上は十五歳になる年の四月から二年間と決められていた。伯爵家以下は十三歳から十八歳の間で二年間。選択肢がある。


 エリザベスは語学が得意だった。本を読むのが好きで、味わいが変わるからと原書で読みたいがために外国語を多く学んだ。


 クラスで隣国の言葉を学んでいる時だった。

「エリザベスは凄く良く学んでいる。なかなかこんなに読める十五歳はいないんじゃないか?」

クラスにいた者は全員青褪めた。


「ならば、エリザベスが俺の妃になったらちょうど良いですね。俺は語学が苦手だから」

アルチュール・グランゴルドハイム第一王子。この王国は男女関係なく第一子が王位を継承する。


 理由はもう誰にも分からないが、この王国の王族は第一子に天賦の才を持った者が生まれる。大いなる存在が加護を与えたと言われていた。


 一部貴族の間ではラファエルこそが第一子だったのではないかと噂される程、アルチュールは歴代の第一子と比較されると劣る人物だった。


 それでも一般の学生からすると能力は高いのだ。コツコツと学んでさえいれば学園でも上位だっただろう。しかしアルチュールは周囲を貶めて自身の優位を保ち方を選んだ。


「大変申し訳ないが腹痛が辛いので、この後は自習で。すまない」

語学の教師はそそくさと逃げ出した。案の定翌日から二度と学園には来なかった。噂では家族を伴って隣国に夜逃げしたとか。


 アルチュールからエリザベスへの婚約の申し込みがされたのはそれからしばらく経ってからのことだった。


 マックスウェル侯爵家の面々は混乱した。と言うのも、先日王弟のラファエルからも婚約の打診があったからだ。


 ラファエルとエリザベスは図書室で知り合った。話が合い、好みの本も似ていたことから親しくなった。婚約の打診を受けて初めて王弟だと知った。


 例の日から続くアルチュールの嫌がらせが終わるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた頃だった。


 ラファエルからは打診で、アルチュールからは申し込み。王族の第二子と第一子。エリザベスに選択肢は無かった。


 手の込んだ嫌がらせだ、とエリザベスは思った。エリザベスは両親に全てを打ち明けて、来るべき時に備えるべきだと主張した。両親と妹は半信半疑ながらも、財産を隣国に移したり、信頼できる人脈作りに奔走した。


 エリザベスには確信があった。必ず自分は婚約を破棄される。アルチュールはエリザベスを甚振ることに夢中になっている。きっと彼はきっかけなど覚えていない。いじめていい、何をしてもいい、蔑んでいい相手。盲執とも言えるそれを止める手立ては思いつかなかった。


 アルチュールよりも成績が良いエリザベスを踏み躙ることで自尊心を満たしている。その上彼が嫌悪するラファエルが婚約を打診した相手。これ以上面白いことはなかっただろう。


 婚約が整うと、エリザベスは王宮で王太子妃教育を受け始めた。教育は苛烈だったが、やり甲斐もあった。王家の資料室に出入りができたからだ。


 アルチュールの執務を肩代わりする中で必要となり、前例はなかったものの、必要とあれば仕方ないと許可された。エリザベスは気になっていたことを調べ始めた。


 なぜ、今代の王子に加護がないのか。


 アルチュールもラファエルも、歴代の王族に比べて能力が低いとエリザベスは考えていた。もちろん歴史が全て本当の事を伝えているとは思っていない。それにしても違和感がずっとあった。


 エリザベスの考えでは、ラファエルが第一子、アルチュールが第二子。その順番で生まれたはずだ。仮にそうだったとしてもとラファエルの学力が足りない。


 と言うのも、学園の図書室に残されていた歴代の王族の論文を読んだからだ。もちろん代筆も考えられるが、今の学園のように教師が形骸化していなかった時代の論文は少なくとも当時の王太子自身が書いたものだろう。


 そこから推察すると、ラファエルには違和感があった。ラファエルと交流する中で、彼が自身の能力を保身のために隠していたのなら分かる。でもそれでも十分でないように感じていた。


 エリザベスは王家の資料室で資料を漁るうち、一つの可能性を見つけた。


「毒」


 今代の王子は二人とも毒に耐性を付ける訓練を経ていない。時代が変わったとも言えるが、王妃が「かわいそう」と言ったから。


 この毒の中の何かが能力の発現を促すのではないか、と考えた。しかしそれは幼少期に行わねばならない。市井で見つかった第一王子に毒耐性をつける訓練を受けさせても変化がなかった、という記録を見つけた。


 どういう状況だったのか分からなかったが、何らかの思惑のもと行われた実験だったのだろう。第一子が側妃から生まれたのも原因だったのかも知れない。


 結論に辿り着いたエリザベスはもう打つ手はないのだと悟った。後は時代の流れが変わるのを待つしかない。アルチュールの下働きとして生き存える可能性もあるのかも知れない。


 アルチュールは苦労しているエリザベスをラファエルに見せることに夢中になっていた。辛そうな、恋情の籠った目でエリザベスを見るラファエルがお気に入りだ。


 ついにエリザベスの未来が決まった。婚約破棄に国外追放、財産没収。正直対策済みだ。クラウディアが贄になったのは想定外だった。 


 クラウディアには第一子を産むのは危険だという話はしてある。賢いあの子のことだ、きっと何とかなる。次から次へと思い浮かぶ不安を押し込んだ。

 

 エリザベスは死んだ。国境を出てすぐ、盗賊に襲われて。国境から王都へは騎馬で三週間、馬車で一ヶ月かかる。つまり、お金をかけずに綺麗な状態の遺体を持って来るのは不可能だ。


 エリザベスが死んだ証拠として、着ていたドレスと髪の束を持って騎士が王都に帰ってきた。この騎士はエリザベスの協力者だった。アルチュールがエリザベスの前に甚振って遊んだ今は亡き伯爵令嬢の兄だった。


 パトリシア嬢とそのご両親のローレンハイム公爵も協力者だった。派閥のアントワーヌ伯爵家に病弱な令嬢がいた。一人娘で、病気の治療に財産のほとんどを注ぎ込んだが辛い闘病の末、娘は儚くなった。その伯爵家にローレンハイム公爵は取引を持ちかけた。


 娘の死亡届を出さないまま、療養中という事にして、必要となった時にある女性を娘として引き取って欲しい。代わりにローレンハイムの一門に加え、一族の面倒は見ると。


 アントワーヌ伯爵家は憤ったが、冷静になってみると継ぐ者もおらず、外から養子を迎えるにも財産がない。夫婦二人が暮らしていくのも不安が残る。夫婦はローレンハイム公爵に非礼を詫び、穏やかで安定した暮らしを選んだ。


 病弱だったソーニャ・アントワーヌが元気になったのはエリザベスが婚約破棄されてから半年後の事だった。髪の色と体型を変え、化粧を工夫するだけで、別人のようになった。長く療養していた間のソーニャの趣味は学問だったから、とした。


 学園に入ったソーニャは優秀な成績で卒業した。ソーニャにとって憂なく年相応に過ごせた幸せな時間であった。


 卒業後王宮に勤める選択肢もあったが、パトリシアの侍女としてローレンハイム公爵家に就職した。ソーニャはパトリシアが嫁ぐまでは穏やかで充実した毎日を過ごしていた。


 流れが変わったのは、ローレンハイム公爵が急死した時だった。ローレンハイム公爵の妹のジャクリーヌがローレンハイム公爵家を乗っ取った。


 嫁ぎ先から不貞を責められて追い出されたジャクリーヌは愛人を連れて実家に戻ってきた。その後しばらくして兄である公爵は体の不調を訴え始めた。


 ある日執事が起こしに行くと、すでに寝室で冷たくなっていた。医者は心不全だと言った。その医者はジャクリーヌが呼んだ医者だった。


 苛烈なジャクリーヌに逆らえず、パトリシアは目立たぬよう静かに過ごしていた。母は領地に送った。ソーニャもパトリシアと領地に移ろうと準備していた頃、パトリシアの婚約が告げられた。


 パトリシアは商人に売られた。アルチュールの策略だったと気付いた時には全てが遅かった。エリザベスと親しかったパトリシアに用意された嫌がらせだった。


 しかもアルチュールと結婚したデイジーの入れ知恵だった。後にソーニャが王宮で働くことになった時に理由を知った。パトリシアの婚約者に声をかけた時に冷たくされたからだった。


 パトリシアの婚約が告げられて家中が混乱している最中、夜更けに一人の侍女が大きな包みを抱えて訪ねてきた。遅い時間帯だったので、ジャクリーヌたちには見つからなかったのが幸いだった。そっとソーニャの部屋に連れて行き、小声で話す。


 その侍女は、ソーニャがよく知る侍女、アメリアだった。クラウディアと王宮にいるはずのアメリア。ソーニャを一目見て、エリザベス様、と見抜いた彼女は姉妹の幼馴染だった。


 よく見ると、衣服に血が付いている。

「クラウディア様が命懸けでお生みになったお子さまです。どうか、どうか」

どういうことだ?アルチュールにはまだ子が生まれていない。デイジーは妊婦だが産月はまだ少し先のはず。先に産むはずがない。


「早産だったのです。離宮で使う水に遅効性の毒が。クラウディア様もラファエル様も恐らくもう。仕えていた者も恐らく……私は偶々助かりました。藁をも掴む想いでここまで参りました」


「貴方はどうするの?」

「私は朝になる前に戻らねばなりません。私は仕事をサボって恋人の所に居たことになっているのです」


「そう。ありがとう。この子のことは任せて」

エリザベスはそれ以上何も言えなかった。万感の想いの籠った目で子どもを見て、エリザベスに会釈をしてアメリアは走り去った。


 恐らくこの後、遺体を集めて火を放つのだろう。片付ける側がまとめて遺体を始末したくなるように。骨が混ざって胎児が居ないことが分からないように。エリザベスならきっとそうする。


 エリザベスは万が一クラウディアが子を産んだ時に備えて協力者を探していた。ラファエルとクラウディアがそういう関係にならないとは言えない。


 でもまさか、第一子を産んでしまうなんて。今は一刻も早くこの子を協力者の元に届けねば。運の良いことに今夜は新月。暗闇に紛れるように黒い服に着替えたエリザベスはソーニャに戻った。


 子どもは睡眠薬で眠らされていた。生まれたばかりの子には過酷なことだが生き残るためだ。この子が不憫で、涙が込み上げる。ソーニャは唇を噛んで耐えた。


 協力者は以前命を救ったパン屋の女将さんだ。孤児を何人か養っている。女将になる前は伯爵家の御令嬢だった。アルチュールにおもちゃにされて命を絶とうとしていたところを救った。彼女の元に突然子どもが増えるのは不自然ではない。


 今では別人のように逞しくなって、令嬢だったことは想像すらつかない。彼女には誰の子とは伝えず、預けた。せめて名をつけてやってほしいと請われ、カーシャと名付けた。


 夜が明ける前にソーニャは公爵家に戻ることができた。王宮で火の手が上がって街が混乱していた。巻き込まれて少し遅くなってしまったが、その混乱に乗じてすんなり戻ることができた。


 クラウディア、ラファエル、アメリアの顔が浮かぶ。執事、料理長、侍女、庭師……恐らく全員もう会うことはできないだろう。ああ、今泣くのは悪手だ。見られたら上手く説明ができない。


 カーシャをパン屋に預けた時に女将に渡された手紙。子どもを包んでいた布から出てきたものだと、女将が気付いて渡してくれた。子どもの世話に慣れた人はこういう事にも敏感なのか。


 手紙はクラウディアからのもので、謝罪から始まった。エリザベスの死の報を受けたラファエルが、あまりに気の毒でそういう仲になってしまった。たった一夜のこととは言え、自ら危険を招いて申し訳ない。しかもデイジーに知られたかもしれない。


 エリザベスは思考を放棄した。今はカーシャが幸せになってくれる事だけを祈ろう。命を賭して彼女を守った者が居た事。その重荷をわざわざ彼女に背負わせる必要はない。親に捨てられたと思っている方が幸せかもしれない。パン屋の女将に全て任せよう。短い時間ではあるが、ソーニャは思考を止めて仮眠を取った。


 それから数ヶ月、表向きは変哲の無い日々が過ぎた。裏では協力者に依頼して、パトリシアが嫁がされた商会を乗っ取り、パトリシアの婚約者だった男に継がせた。彼はパトリシアを選んだ。既にその商会は隣国に籍を移してある。


 今現在ソーニャが直接守る必要のある者は居ない。ソーニャにとって最後の平穏な時間だった。


 ソーニャの生活が一変したのは、ジャクリーヌの懐妊がきっかけだった。王家にサンドリオンという男の子が生まれた頃から、娘を産んで王妃にしたいと言い出した。


 生まれてみなければ性別は分からない。彼女の願い通り可愛らしい顔立ちの女の子が生まれた時、ソーニャはその執念に怖気たった。


 トントン拍子に婚約が決まり、アルテイシアと名付けられた女の子が三歳になると、王宮に移って教育を受けることが決まった。ソーニャは命令されてアルテイシアの侍女となり、共に王宮へ。


 王宮では部屋まで貰ってしまった。以前とは異なる区画に。来たことのない区画で暮らすのは新鮮だった。


 王宮の教育係はアルテイシアとサンドリオンの教育に手を焼いた。二人の扱いが上手いソーニャも教育に協力するうち、ソーニャの聡明さに気付いた教育係はソーニャに教育を任せて自身はサボるようになった。


 王宮には二人目の男の子、ランドルフが生まれた。サンドリオンよりも愛らしい顔立ちをしていたことから、サンドリオンへの関心が薄まっていたこともあった。


 ソーニャは二人に将来王国を導く者として相応しくなれるよう全力で教育を施した。サンドリオンは付いてきたが、アルテイシアには限界があった。次第にアルテイシアは王弟のランドルフと仲良くなっていた。


 人脈を広げるという建前で、サンドリオンとアルテイシアは時期をズラして学園に通う事になった。サンドリオンの教育が早々に終わってしまったからだった。王家の特例として先に学園に入った。


 アルテイシアはランドルフと一緒に教育を受け、仲良く学園に通った。仲のいい義姉弟。そう思われていた。この頃、ランドルフの断種が、本人には知らされぬまま施された。


 何人かの侍女がまだ幼いとも言えるランドルフに襲われそうになったことから、諸々の不祥事が危惧されたからだった。アルテイシアが産むのはサンドリオンの子でなければならない。


 サンドリオンとアルテイシアの結婚は予定通り。二人の間にはアレクサンドラという娘が生まれた。サンドリオンは忙しく、王妃となったアルテイシアは暇を持て余した。


 アルテイシアには執務の手伝いができなかったからだ。学生時代そのままに、ランドルフと一緒に社交に勤しんだ。姉弟のようなものだと、兄を支えるのだという建前で、二人は隣国への視察という名の旅行にも行った。


 ソーニャはサンドリオンで試した事をアレクサンドラにも試した。「毒」だ。サンドリオンには完全に効果があったわけではなかった。第二子である可能性、少し遅かった可能性。アレクサンドラにはもっと早い時期に与える必要がある。


 果たしてその効果は恐ろしい程だった。まだエリザベスだった頃のソーニャの仮説は正しかった。大いなる存在が与えた王族を試すかのような仕掛け。身命を賭して叡智を手に入れる機会。


 ソーニャはある意味もう狂っていたのかもしれない。アリー、成長したアレクサンドラにそう言って詫びた時、

「私は感謝しているわよ。貴方の献身に」

真摯な瞳でソーニャを見つめるアリーを見て、ああ、全てはこの為だったのか、と腑に落ちた。

 

「もう一つお詫びしたい事がございます」

「なあに?今日は謝ってばかりじゃない」

病床のソーニャは寝具の横の椅子に座っているアリーの手を握った。


「まだ幼い貴方に過酷な教育を施してしまって、貴方の幼少期を奪ってしまって、申し訳ありませんでした」


「いいの。だって時間がなかったでしょう?」

アリーは首を横に振った。ソーニャの憧憬の念が込められた眼差しがアリーに向けられる。

「アリー様、貴方は今まで出会った全ての人の中で最も優秀です。教えがいというのを初めて知りました。ここに手記があります。ご参考にしていただければこの上ない喜びです」


「分かったわ」

「では私は少し休ませていただきます」

「そうね。ゆっくり休んで。まだまだ働いてもらわなくちゃ。今までもこれからも、貴方には最大の感謝を贈るわ」


 そのままソーニャが目覚めることはなかった。ソーニャはグランゴルド王国がよく見える丘にひっそりと葬られた。墓碑には『エリザベス・ソーニャ・アントワーヌ・マックスウェルここに眠る』と刻まれた。


 ソーニャの手記に書かれていたことはアリーの治世で実現することは叶わなかった。「できる限りの種は蒔いた。ソーニャも褒めてくれると思う」とアリーの脳裏には常にソーニャがあった。


 





 

誤字報告ありがとうございました

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