預言者
ごくごく普通に生きていると、たまに聞こえてきますね。
○月○日、大事件が起きて、とある都市がパニックになる
×月×日、未曽有の災害が発生し、人口が半分になる
△月△日、宇宙人の存在が発表される
☆月☆日、人類は滅亡する
誰々は予知能力者だ、だから事件を教えてくれる。
誰々は未来人だ、だから災害を教えてくれる。
誰々は宇宙人の生まれ変わりだ、だから宇宙人を呼び寄せる。
誰々は神の御使いだ、だから人類は滅亡するしかない。
物騒な予言者ばかりいるのが、気になりますね。
人が恐れを抱く生き物だからでしょうか。
人が先の事を気にして生きる存在だからでしょうか。
人が現状に満足できない欲張りだからでしょうか。
明るい予言は広まらないのが、気に入りませんね。
人が誰かの不幸を喜ぶからでしょうか。
人が誰かの不安を求めるからでしょうか。
人が誰かの不運を願ってしまうからでしょうか。
予言が頻繁に現れますけどね。
1999年、何も起きませんでしたね。
2000年、何も起きませんでしたね。
2012年、何も起きませんでしたね。
2020年、何も起きませんでしたね。
2025年、何も起きませんでしたね。
2036年、何も起きませんでしたね。
人は、預言を気にして騒ぎ立てたのち、何もなかったように暮らしましたね。
1999年、事件は起きましたけどね。
2000年、事件は起きましたけどね。
2012年、事件は起きましたけどね。
2020年、事件は起きましたけどね。
2025年、事件は起きましたけどね。
2036年、事件は起きましたけどね。
誰一人、気が付きませんでした。
誰一人、話題にしませんでした。
誰一人、疑いませんでした。
2001年、事件は起きましたよ。
2002年、事件は起きましたよ。
2003年、事件は起きましたよ。
2004年、事件は起きましたよ。
2005年、事件は起きましたよ。
2006年、事件は起きましたよ。
2007年、事件は起きましたよ。
2008年、事件は起きましたよ。
2009年、事件は起きましたよ。
2010年、事件は起きましたよ。
2011年、事件は起きましたよ。
2013年、事件は起きましたよ。
2014年、事件は起きましたよ。
2015年、事件は起きましたよ。
2016年、事件は起きましたよ。
2017年、事件は起きましたよ。
2018年、事件は起きましたよ。
2019年、事件は起きましたよ。
2021年、事件は起きましたよ。
2022年、事件は起きましたよ。
2023年、事件は起きましたよ。
2024年、事件は起きました。
2026年、事件は起きましたよ。
2027年、事件は起きましたよ。
2028年、事件は起きましたよ。
2029年、事件は起きましたよ。
2030年、事件は起きましたよ。
2031年、事件は起きましたよ。
2032年、事件は起きましたよ。
2033年、事件は起きましたよ。
2034年、事件は起きましたよ。
2035年、事件は起きましたよ。
誰一人、気が付きませんでしたけどね。
誰一人、話題にしませんでしたけどね。
誰一人、疑いませんでしたけどね。
人は事件が起きても、普通に生きていますからね。
人は事件が起きなくても、普通に死んじゃいますからね。
事件が起きて、人が死んじゃうこともありますけどね。
事件が起きないから、人が生き延びてしまうこともありますけどね。
予言しても、予言しなくても、事件は起きていますからね。
予言しても、予言しなくても、人は命を謳歌していますからね。
わざわざ…予言するのも、ねえ?
予言なんて、必要ないと思うのです。
だから…私は、気まぐれに物語を綴ったのです。
私の物語を読んで、予言だと思う人はいるでしょうか?
私の物語を読んで、予言だと騒ぎ立てる人はいるでしょうか?
私の物語を読んでも、予言だと思う誰かが現れなければいいのですが。
私の物語を読んでしまって、予言だと騒ぎ立てる人が現れなければいいのですが。
私は、物語を、書いただけなのです。
私は預言者などではなく……、ただの、ごく普通に暮らしているだけの存在なのです。