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エルシーズ  作者: Stray__cat
7/8

エルシーズ(ふたたび)

 明日で、ハワイ島ともしばしの別れとなる。

朝起きてラナイから外を見るとコハラコーストは、今日も晴れだ。

この前、エルシーさんにも話したとおり、もう一度エルシーズに行ってみよう。

バッグにカメラ、携帯電話、財布、ペットボトルetc.を入れて部屋を出る。


 玄関前のバレーパーキングのお兄ちゃんのところに行く。

 彼は、最初車を取り違えたことで、顔を覚えている。おはようございますと言いながら車のキーの半券を受け取って、キーボックスからキーを取り出したら番号を確認してパーキングへと走って行った。


 車を待つ間に、マウナロアの方を見ると、この前のような雲はかかってはいなかった。

車を受け取る際に、念のためナンバーを確認すると、今度は間違えてないと、どや顔で兄ちゃんは言ってきたので、にやっと笑ってからチップを渡してキーを受け取り、荷物を後ろの座席に放り込んで車を出した。


 行きは前回と同じ北回りのルートにして、帰りは南回りにしてみようと思いながら車を走らせる。

車外の景色が、草原からジャングルへと変わっていく景色は、何度か同じルートを走ったので慣れてきたが、天気だけは少し違っていた。

 今日は珍しく雨は降ってこない、といっても西海岸のように快晴とまでは行かないが、雲間からの日差しもあるので、なんか不思議だなと思っているうちに、ヒロの街が見えてきた。


 ヒロの入り口の橋を渡り、右折して前回と同じパーキングロットに車を止めて店へと歩く。

ヒロの街は、思いのほか天気がいいこともあり、前回とは違い町並みが明るく見える。


挿絵(By みてみん)


 今回は、戸惑うことなく店にたどり着いた。もちろん店のドアは開いている。

この前よりは少し早い時間だ。店に入ると、前回の常連さんたちは来ていないようだった。

常連さんたちの席は開けておいた方がいいと思い、前回と同じカウンターの角の席に座ることとした。


 エルシーさんが、おはよう、また来たねといって、前回と同じく朝のメニューを流れるように説明してくれた。

 やはり、前回と同じくベーコンエッグ、トースト、コーヒーをお願いした。

それを受けてジェームスさんが厨房に入り調理を始める、しばらくすると美味そうなベーコンの焼ける匂いが流れてきた。


 料理を待ちながら、外をぼんやり眺めていると年配の女性が通りを渡っているのが、目に入った。

その女性は、通りを渡りきると真っ直ぐ迷わず店に入ってきて、この前常連さんが座っていた隣に腰掛けた。

 エルシーさんは、水の入ったグラスを女性の前に置くと、いつものでいいかねとだけ独り言のように話すと、サーバーからコーヒーを淹れて、シュガーポットとミルクポットとともに女性の前にそっと置いた。


 しばらくすると、この前とは違う老人が、やはり通りを渡ってくるのが目に入った。彼も、通りを渡りきると迷うことなく開いているドアから店内に入り、先日の常連さんが座っていたカウンターの端の席に腰掛けた。

 エルシーさんは、水の入ったグラスを彼の前に置くと、やはり、いつものでいいかねとだけ独り言のように話すと、彼はわずかにうなずくそぶりを見せた。

 エルシーさんは、それがいつものことのように自然にサーバーからコーヒーを淹れて、ミルクポットとともに彼の前にそっと置いた。


 この店には、なんで看板が目立たないものしかないのかが、判った気がした。

ここが店であると主張する、誘蛾灯のような看板は、ここの店の常連には必要ない、店に来る人たちは何年ものあいだずっと通っている人たちであり、ここに店があるのが当たり前だ。

 店の場所は体が覚えている、だから看板の文字が見えなくてもいい、ただ、ここに店があり、その店がエルシーズであることは、みんなが知っているからそれでいいのだと。


 そんな簡単なことがわからなかった自分に少し呆れていたら、いつの間にか料理が出来たようで、エルシーさんがコーヒーをジェームスさんがベーコンエックとトーストを私の前に。置いてくれた。

 かすかに湯気が立っているベーコンエッグをいつもよりゆっくりと食べていく。

食べ終わり、コーヒーのお代わりをもらいまったりとしていたら、背後に人の気配がしたら、どうやらお客さんが来たようで、エルシーさんがカウンターの外に出た。


 コーヒーショップのお客さんなのにと、後ろを振り返ると、やってきた老人の客はエルシーさんに何か話しかけていた。

 するとエルシーさんは、物差しのようなものを脇から取ってきて、背の届かないショーケースの上にあるペーパータオルをはたき落として、老人に渡した。

 どうやら、老人はペーパータオルが目当てのようだった。彼は、代金を支払いエルシーさんと一言二言話をした後で礼を言って、店を出て行った。


 グロッサリーストアならば、既に近所にはKTAストアなんかがあるはずで、普通ならばそちらで買うのではないかと頭をよぎったが、先ほどの店にやってきた人たちのことを思い出した。

 彼にとっては、自分が若いときからここにエルシーズがあり、エルシーズがグロッサリーストアだという想い、彼にとっては、それがあたりまえであり、いつものことであると。


 ここにはわずか2回来ただけだが、ここの店とそれに係る人たちの時間を感じた気がした。

 そんなことを思っていたら、いつの間にかエルシーさんは、カウンターの中に戻ってきて常連さんたちと世間話を始めていた。


 そんな世間話をなんとはなしに聴いていたら、女性から、どこから来たのかと話しかけてきた。

私は、この店を訪れたことのある知り合いから、もしかしたら年末に閉めるかもという話を聞いたので、それはもったいないと思いやってきたことや、この店の居心地がいいこととなどを話した。

 そうすると彼女は微笑みながら、エルシーズは、日本一有名なヒロのコーヒーショップだと言ったら、エルシーさんたちは、にっこりと微笑んだ。


挿絵(By みてみん)


 それからしばらくの間、話の輪に入れてもらっていたが、良い時間になってきたので、会計をして暇の挨拶をすると、エルシーさんが、縁があったら、また会いましょうと声をかけてくださり、私も再訪を約束して、店を後にした。


 その日は、せっかくだからとスイサンマーケットに立ち寄ってみたが、時間も遅かったので、魚市場やせりは終わっていた。

 丁度小腹も空いてきたので、ロコモコの元祖といわれているCafe100に立ち寄って、ロコモコを食べてからホテルに戻ってから、翌日の移動の用意をしてその日は早々と就寝した。


 翌日、アロハ航空でホノルルへ向かったが、残念ながらヒロ発11時58分の便ではなかった。


(続く)

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