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七草粥の嘘

作者: ウォーカー
掲載日:2024/01/08

 日本列島の外れの海に浮かぶ小さな島。

その島は、七草島と呼ばれている。

七草島では、神社を中心に、七つの部族に分かれて暮らしている。

七つの部族はそれぞれ春の七草を独占的に栽培し、

それにちなんだ部族名を名乗っている。

名前のみならず、七つの部族は七草に由来する性質を持っていた。


セリ部族は、強い香りと歯ざわりから、鼻につく態度をしている。

ナズナ部族は、どこにでも生える性質から、何にでも首を突っ込みたがる。

ハハコグサ部族は、灰汁あくが強い性質から、嫌味な性格をしている。

ハコベ部族は、葉が尖っているところから、とにかく攻撃的。

コオニタビラコ部族は、茎が斜めに生えるところから、いつもしゃに構えている。

カブ部族は、大きく張り出した根から、態度が大きい。

ダイコン部族は、品種が変わりやすい性質から、態度がコロコロ変わる。


このような性質から、七草島の七つの部族は、

日常的に部族間の争いが絶えなかった。


 仲が悪い七草島の七つの部族だが、年に一度だけ、争いを止める日がある。

それが、一月七日の、七草粥のお祭りの日だった。

毎年一月七日、人日の節句に、七草島では、

七つの部族がそれそれの七草を持ち寄って七草粥を作り、

神社に奉納して一年の無病息災を祈願する。

七草島の中央に位置するこの神社は、七草島唯一の神社で、

昔から七つの部族の人々から信仰の対象として敬われている。

神社への敬意を表し、この日だけは七つの部族が協力してお祭りを行うのだった。

七草粥のお祭りの日だけが、七つの部族が協力して交友できる日だった。

そして今年も、七草島に、七草粥のお祭りの日がやって来た。


 一月七日、七草粥のお祭りの日。

七草島の七つの部族は、島の中央にある神社に集まると、

例年通り、それぞれに七草を持ち寄って七草粥を作り、神社に奉納した。

無病息災、家内安全、厄除開運。

祈祷は、七草島の長でもある神社の宮司が取り仕切り、

若い息子がその補佐を務めて、滞り無く執り行われた。

祈祷が終われば後は楽しいお祭りの時間。

神社に集まった七つの部族の人々は、

お互いに酒を酌み交わし、正月料理に舌鼓を打った。

この日は年に一度の楽しいお祭り、

七草島の人々は存分にお祭りを楽しんでいた。


 そろそろ日が傾こうかという頃になっても、

七草島の神社では、七つの部族によるお祭りがまだ続いていた。

神社の境内には、空になった徳利とっくりがいくつも転がっている。

人々は酔いが回って上機嫌。

するとそこに、何やら大声を上げてやって来る者がいた。

「た、大変だ!火事だ!」

そう叫ぶ者は焦燥した様子で、煤で薄汚れた格好をしていた。

指差す方、いずこかの村がある方からは、黒い煙がもくもくと立ち上っていた。

「本当だ、火事だ!ありゃあ、どこの村だ?」

「とにかく、皆で火を消しに行かなければ!」

いつもはいがみ合っている七つの部族も、火事や葬式などは話が別。

人々は我先にと黒い煙が上がっている方へと駆け出した。

黒い煙の元にたどり着くと、

そこでは既にいくつかの民家や倉庫が炎に包まれていた。

七草粥のお祭りで人々が神社に集まっていて、発見が遅れたのが災いしたようだ。

消火作業の遅れが火事の被害を大きくしてしまっていた。

それでも、七つの部族が協力して、火事はできる限り迅速に消し止められた。


 ようやく火事が収まって、七つの部族の人々は、再び神社に集まった。

煤まみれにこそなれど、大きな怪我をした人などはいなかった。

しかし、もうお祭りという気分ではなくなってしまった。

酒の酔いがすっかり覚めてしまったから、ということだけが理由ではない。

七つの部族の人々は深刻そうに顔を合わせて話し合いをしていた。

「それで、火事の被害は?」

「家と倉庫が何件か焼けてしまった。

 後は軽い火傷をした者が何人か。

 幸い、重傷者や死者なんかはいなかったよ。」

「そうか、それは良かった。」

「そう喜んでもいられんぞ。

 祭りの日に火事だなんて、原因は何だ?」

「祭りに出す料理を作る火が原因だったようだ。

 皆が出払っていて、火事に気が付くのも遅れた。」

「そういうことを言っているのではない!」

老爺が苛立った様子で机を叩いた。

七つの部族の人たちが心配しているのは、もっと別のことだった。

老爺が神経質そうに言う。

「今日は七草粥の祭りの日だ。

 ついさっき、七草粥を神に奉納して、無病息災を祈願したばかり。

 それなのに、どうして火事などという凶事が起こったんだ?」

七草島の人たちが心配しているのは、まさにそれだった。

今日は一月七日、七草島では最も大事なお祭りの日。

風習に従って、七つの部族が持ち寄った七草を使い、七草粥を作った。

そして七草粥を神に奉納し、神の加護を乞う祈祷をしたばかり。

それなのに、火事などという不吉な出来事が起こってしまった。

七草島の人々にとって、七草粥のお祭りは重要な意味を持つ。

神社は昔から七草島の人々の信仰の対象として敬われている。

お祭りの日に火事が起こるなど、あってはならないことだった。

人々は口々に理由を挙げ合った。

皆が出払っていて、火の番をする者が少なかったから。

台所の設備が古かったから。

ただの火の不始末では。

そんな話の行方が、ある者の発言で、一気に変わることとなった。

「・・・もしかして、神の天罰が下ったんじゃないか?」


 七草島で最も重要な儀式、七草粥のお祭り。

七草島の中央にある神社で今年一年の無病息災を祈願した直後、

家や倉庫が何軒も焼け落ちる火事が起こった。

原因は祭りの料理の火の不始末と思われたが、

しかし七草島の人々はそれでは納得できない。

今日は七草島で最も大事な七草粥のお祭りの日。

普段はいがみあう七つの部族が協力して七草粥を奉納した。

神のご利益により無病息災が約束されたはず。

だから少なくとも今日この日だけは、島に凶事が起こってはならなかった。

しかし、それがこうして火事が起こってしまった。

それには何か特別な理由があるはず。

七草島の人々はそう考えた。

そうしてある者が口にしたのは、神の天罰。

神のご利益とは真逆のことだった。

その発言にはすぐに方方ほうぼうから反対の声が上がった。

「天罰だと?そんなことがあるものか。

 俺たちは今年も七つの部族で協力して七草粥を奉納したんだ。

 ご利益こそあれ、天罰が下るはずがない。」

「まったくだ。軽率な発言は謹んで頂きたい。」

「・・・でも、じゃあ何で今日に限って火事なんか起こったんだ?

 この島では、普段、火事なんてそうそう起こらないのに。」

重ねての疑問に、今度は誰も反論できない。

神のご利益にしろ天罰にしろ、どちらも人の目には見えないもの。

誰も明確に肯定することも否定することもできなかった。

誰もがうつむき加減で、上目遣いで様子を伺っている。

一度くすぶり始めた火は、用意に消すことはできない。

火事は神の天罰という意見に同調する者が現れ始めた。

「そうだ。お祭りの日に火事なんて、偶然とは思えない。

 やっぱりこれは天罰なんじゃないか。」

「原因は何だ?」

「奉納した七草粥の何かが悪かったんだろう。」

「どこかの部族が傷んだ物でも入れたのか?」

「どこの部族だ?そんなけしからんことをしたのは。」

するとまず発言したのは、セリ部族の者だった。

「きっと、どこかの部族が、七草を供出するのを渋って、

 偽物でも出したのでしょう。

 七草には似たような別の植物もありますからな。」

そんな嫌味な言葉に、ナズナ部族の者が食いついた。

「何だって、七草の偽物?

 それは聞き捨てならないね。

 放っておけば、今後も偽物を寄越されるかもしれない。」

ナズナ部族の差し出口に、ハハコグサ部族の者が嫌味を言う。

「白々しいことを言って、犯人は君たちじゃないのかね。」

睨み合う二者に、ハコベ部族の者が噛みつく。

「そういうお前こそ犯人じゃないって証拠は無いだろう。

 偽物を入れた奴は私刑にかけて取り調べと処罰をするべきだ。」

物騒な話に、コオニタビラコ部族の者が白い目を向ける。

「私刑とは穏やかじゃないね。

 そんなものを行う権利は誰にも無いんじゃないのか。

 我々は捜査機関とは違うんだよ。」

たしなめるような言葉に、カブ部族の者が便乗して言う。

「それならば、我らカブ部族が捜査機関の代理になってやってもいい。

 なぜなら我らカブ部族は潔白だからな。」

自信満々のカブ部族に、ダイコン部族の者が同調する。

「それは頼もしい。ぜひとも、中立な立場で捜査して欲しい。

 いや、待てよ。カブ部族が潔白でない場合もありえるか。

 やはり仕切るのは別の者が良いだろう。」

けんけんがくがく々。

七つの部族の者たちはお互いを罵り合い、

話し合いは収拾がつかなくなっていった。


 神に奉納した七草粥の何が問題だったのか。

偽物の七草は何だったのか。

お互いこそが偽物の七草の犯人だと罵り合う七つの部族。

紛糾する話し合いを収めたのは、

七草島の長でもある、神社の宮司の一声だった。

「皆、争いを止めよ!

 七草粥の七草の何が偽物だったのか、

 お前たちがお互いを疑り合っても意味がない。

 だから、これからわしが七草島の長として皆に聞く。

 正直に答えよ。

 祭りの七草粥のために供出した七草に、偽りがあった部族はいるか?」

七草島の長である宮司が立ち上がって、七つの部族の人々を見下ろした。

この中に嘘をついた人はいるのか。

その質問に、七つの部族の人々は口々に答えた。

「いいや、我らセリ部族は偽物など供出してはいない。」

「我らナズナ部族も同様だ。きちんと本物を供出した。」

「ハハコグサ部族も同じ。偽物などありえない。」

「俺たちハコベ部族も、嘘はついていない。

 疑われるのは心外だ。」

「私たちコオニタビラコ部族が嘘をつくわけがなかろう。」

「カブ族、皆に同じ。当然だ。」

「僕たちダイコン部族も嘘はついてない、そのはずだ。」

七草島の長の言葉をもってしても、七つの部族の誰も、

七草粥のために偽物の七草を供出したとは白状しなかった。

七草の何が偽物だったのか、話は振り出しに戻ってしまった。

と、思われたのだが、しかし一人だけ悟った表情の人がいた。

「そういうことか。儂には全てが分かった。」


 七草粥に混ぜられた偽物の七草。

その正体も犯人も見つけることはできなかった。

誰も偽物の七草を入れたりはしてないという答え。

それを聞いて全てを悟った表情をしていたのは、

質問をした七草島の長である宮司だった。

宮司は腕組みをして、深く頷いて言った。

「お前たちの話を聞いて、全てが分かった。」

「と、言いますと?」

まだ事情が掴めない七つの部族の人々の疑問に、宮司が答える。

「儂には、七草粥に入れられた偽物が何か分かった。」

「本当ですか!?」

「何が、何が偽物だったんですか。」

もしや自分たちが犯人呼ばわりされるのではと、

七つの部族の人々が慌てている。

宮司はそれをたしなめるように、柔らかい笑顔で話し始めた。

「そう慌てんでもよい。

 七草粥に入れられた七草、

 セリ、ナズナ、ハハコグサ、ハコベ、コオニタビラコ、カブ、ダイコン。

 いずれの七草も偽物ではない。れっきとした本物だ。

 間違っていたのは七草ではない、米だ。」

「・・・米?」

「そう。

 七草粥に入れられた七草が全て本物であるならば、

 原因は自ずと残った一つの材料に絞られる。

 七草粥に使われた米が、偽物の正体だ。」

「偽物だったのは、七草粥の米・・・。」

「米って、どこの部族が供出したんだ?」

七つの部族の人々は、お互いの顔を確認する。

しかし誰もが首を横に振っている。

宮司が代わりに答えた。

「どこの部族でもない。

 神への供物である七草粥に使う米は、

 付き合いがある外部の商人から特別な米を仕入れて、

 この神社に保管してあった。

 この七草島で採れる米は、去年は不作で、

 神に奉納するには相応しくない状態だった。

 それ故、去年の秋に、取り引きがある外部の者から、

 儀式に使う特別な米を取り寄せておいたのだ。

 その米が傷んでいたか間違っていたか何かしたのだろう。

 結果として、神には誤った七草粥を奉納することになってしまった。

 きっと神はそれをお怒りになって、天罰を下された。

 つまり、問題だったのは米であり、七草のいずれでもない。

 だからお前たちはお互いにいがみ合う必要は無いんだ。」

七草粥の偽物は米、七草は全て本物。

だから犯人は七草島にはいない。

宮司の話にすっかり毒気を抜かれて、

七つの部族の人々は落ち着きを取り戻していった。

「そうか、そうだったのか。」

「通りでおかしい気がしていたんだ。

 七草の偽物なんてな。」

「おい、ナズナの。さっきは疑ったりして悪かったな。」

「いいや、あの場合は仕方がない。」

七つの部族の人々はお互いに冷静になって、謝罪の言葉すら口にしていた。

それを宮司が笑顔で見下ろし、手を優しく打ち鳴らして場を締めた。

「そういうことならば、急いで七草粥を作り直そう。

 皆が持ち寄ってくれた七草はまだ残っているな?

 米は神社にある他の米を使えばよかろう。」

そうして、七つの部族の人々は、七草粥をもう一度作り直した。

今度は別の米を使って、注意深く。

そうして出来上がった熱々の七草粥は神に奉納され、

代わりに偽物の米で作られたという七草粥は、他所へどかされた。

簡易的だが心の込められた祈祷が行われ、

今度こそ七草粥の神への奉納は完了したのだった。

祈祷を終えた宮司が、笑顔になって皆の方を向いた。

「よし、これで今年も一年、七草島は神のご利益に恵まれることだろう。

 それでは、今年の七草粥の祭りはこれまでだ。

 この場の片付けは神社の者たちでするから、

 皆はもう家へ帰るがよい。

 また来年の一月七日に、七草島の皆で協力して、

 楽しい祭りができることを、楽しみにしているぞ。」

今年の七草粥のお祭りも終わり。

集まっていた七つの部族の人々は、ドヤドヤと神社を後にした。

優しい笑顔でその背中を見送る宮司。

しかし、その場にいた宮司の若き息子は、それを無表情に眺めていた。


 七草粥のお祭りは終わり、七つの部族の人々は神社を後にした。

後は神社の者で後片付け、と思ったところで、

今まで一度も発言しなかった、宮司の息子が、静かに口を開いた。

「宮司様、お話が御座います。」

「ここにはもう我々しかいない。

 形式張った話し方でなくていいぞ。」

「はい、では父上。お話があります。」

「何かな?言ってみなさい。」

「果たして、七草粥の偽物は、本当に米だったのでしょうか。」

「・・・どういうことだい?」

宮司が後片付けをする手を止めて、息子に向き直った。

息子は真っ直ぐな視線を父親である宮司に向けて言った。

「僕には、米が偽物だったとは思えません。

 あの米を持ってきた商人は、きちんと注文通りの米を納入しました。

 納入されたのは去年収穫されたばかりの生米です。

 そう傷むとも思えませんし、傷めばすぐに分かります。

 その米を使って作った七草粥に問題があったとは思えません。

 そもそも、最初に作られた七草粥も、作り直された七草粥も、

 どちらも手付かずです。神は七草粥を口にしてはいません。

 七草粥が傷んでいたところで、問題にはならないでしょう。」

「では、お前は、あの七草粥の何が偽物だったと思う?」

宮司はもう笑顔を収めて、真剣な表情になっていた。

息子も真剣な様子で考えを述べた。

「僕が思うに、あの七草粥で偽物だったのは、

 七草粥に偽物が入れられているという話の方でしょう。

 偽物だったのは、偽物が入っているという話自体です。

 火事は神の天罰などではなかったのです。

 ・・・本当は父上もご存知だったのでしょう?

 何故あのような話に乗ったのですか。」

すると宮司は、息子の顔から目を反らして言った。

「お前の言う通りだ。

 あの七草粥におかしなところは何もなかった。

 七草は本物であるし、米にも異常は無い。

 では、もしもそれを七つの部族の人々に言ったら、

 どうなっていたと思う?

 今年も七草粥のお祭りをして、七草粥を神に奉納して、

 これから一年、神のご利益を受けられると思っていたのに、

 正月から火事に見舞われたら、七つの部族の人々はどう思うだろう。

 きっと、彼らは、神のご利益など無いのではないかと疑うだろう。

 正月から火事の一つも防げなかったのだからね。

 そうしたら最後、七つの部族の人々は信仰を失っていくだろう。

 七草粥のお祭りも、この神社も、信仰を失った人々には無力。

 七つの部族の人々は、七草粥のお祭りもしなくなる。

 このお祭りは、普段はお互いにいがみ合っている七つの部族にとって、

 一年にたった一度だけ協力できる大事な日だ。

 そのお祭りがなくなれば、七つの部族の人々は協力することを忘れ、

 七つの部族の争いは激化するだろう。

 あるいは、七草粥に入れられた七草の、

 どれかが偽物だったという結論になった場合も、結果は似たようなものだ。

 疑われた部族は、他の部族から責められ、

 苦しい立場に立たされることになるだろう。

 そうすれば、七つの部族の均衡は崩れて、

 七草島全体の闘争に発展することもありえる。

 もしかすれば、七草島の今の形も失われることになるかもしれない。

 それらの望まぬ結果を防ぐためには、

 この七草島の外部に、七草粥の偽物の犯人が必要だったんだ。」

「では、父上は、この七草島全体のために、

 七草島の七つの部族の人々全てを騙したと言うのですか。

 これからも、七草粥のお祭りの時期に凶事が起こる度に、

 いもしない外部の犯人を探してまわるのですか。」

目を反らしたままの父親に、息子の真っ直ぐな視線が突き刺さる。

父親は息子には目を合わせずに続けた。

「お前もゆくゆくは私の跡を継いて、この神社の宮司になる。

 この神社の宮司は、七草島の長として、七つの部族を束ねる役割を負う。

 だから、覚えておきなさい。

 この七草島の人々が上手くやっていくには、

 時には偽物うそも必要なのだということを。」

「・・・はい、分かりました。父上。」

息子はまだ何かを言いたそうにしていた。

しかし、目を合わせぬ父親の背中から答えを感じ取ったのかも知れない。

今はただ黙って、父親の嘘に従うのだった。

お祭りの片付けをするその傍らで、

偽物と疑われた七草粥は、誰にも手を付けられることもなく、

ただ静かに冷めて固まっていくのだった。



終わり。


 一月七日なので七草粥の話を書こうと思いました。

七草粥を書くのなら七草も書きたいと考えていって、

七草をあしらった七つの部族が暮らす七草島の話になりました。


信じるものがある人は強いけれど、

その信じるものが揺らいでしまった時には返って問題になります。

揺らぎを避けるためには、時として嘘も必要かも知れない。

そんなことを考えながら、七草島の話を考えていきました。


お読み頂きありがとうございました。

今年もよろしくお願いします。


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