やっと王都脱出です(紅一点登場)
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さて、気を取り直して買い物だ。
何事もなかったもんな?
この店はいわゆる何でも屋みたいで、それこそ食料品から武具までいろんな物が置いてある。ないのは生き物ぐらいかって感じだ。
早速俺はお目当ての食料品の元へ。なぜか皆ぞろぞろ着いてくる。
外観の様子だと食料品を扱ってても衛生面が心配だったけど、中はどれも綺麗にしてある。
ちょっと鑑定してみたけど、どれも大丈夫そう。
こんないい店がなんで貧民街にあるのか不思議だ。
「俺はドワーフだからな。この国じゃあ差別の対象だ」
ちょっと悲しそうに言うおじさん。それでもこの国にいる理由があるんだろう。
身軽な俺は運がいいのかも知れない。
食料品を置いてある場所は麻袋が山積みになっていて、大小の瓶もいろいろあった。
鑑定して見ていきます。
まずは小麦粉。すいとん、あわよくばうどんなんて作れないだろうか?
そしてありました、大麦。さすがに米はなさそうだ。
実は俺、なぜか炊飯器を買うのが勿体なくて鍋でご飯を炊いてたんだよね。
これがいい加減でも大丈夫なんだよ。米に水さえ吸わせていれば芯が残ることもないし、水加減が少なくても後で足しても割りといけてた。
大麦は米より水を多くして、失敗してもチャレンジするしかないよな。
葉野菜はさすがに置いてなかったけど、じゃがいも、人参、玉ねぎと王道の根菜たち。そしてそして、ニンニク、生姜まであった。
ちょっとこれ俺の腕前でもマシな物が出来るんじゃないか?
「ピア、そういうば肉はないのか?」
「肉は現地で調達できるぞ」
「え、解体は?」
「軍でも冒険者でも解体は基本だ。素材を取らないといけねぇからな」
なるほど。任せた!
俺は切り身からしか手をつけません!
では、肉が手に入るのならば塩はもちろん、胡椒も欲しいな。高そうだけどあるかな?
ありました。
砂糖、塩、胡椒。みんな高かった。特売一袋100円が、なんと50倍!
だからあんな薄い味付けだったんたろうか?
他のものが多少安くてもチャラどころか足がでるんじゃなかろうか。
輸入品だからしょうがないって?そうですか。
ちなみに醤油や味噌はありませんでした。残念。
落ち着いたら米も合わせて彼らを探しに行こうと思います。
料理酒もないから、ワインを赤白両方購入。
ピアお前のじゃないよ。欲しければ自分で買いな。
あと、油がいいのがありました。
鑑定で知らない植物の名前だったけど、癖がなくサラっとしてるサラダ油みたいだって。
大瓶で買いますよ。鳥肉が手に入ったら唐揚げを作りたい。
トンカツやコロッケもいいよね。夢が広がる。
鑑定をバンバン使ってる俺におじさんが引いてたらしい。
ということでお次は調理器具だ。
鍋にフライパンもどき。フライ返しみたいなのに、トング。
さすがに箸類はなかったので自分で作ろうかな。
チラッとピアを見る。小首傾げんな。と思いつつ昨日の食事量を思い出す。
寸胴が必要なようです。
忘れちゃならない、包丁…はないので調理用ナイフ。両刃なので使いにくそう。
いつかどこかで鍛冶屋さんに作ってもらおう。
大体揃ったかなってところで、おじさんの呆れた声がかかる。
「お前さん食い物の事ばかりだが、夜営用のテントなんかはいいのかい?」
結界あるのにテントいるかな?と不穏なことを考えてたらピアから耳寄りなお知らせが。
「俺がダンジョンアイテムの結界付きテント持ってるぞ。5人は寝れるばずだ」
「じゃあそれで」
と軽く返事したけど、大分後でふと思った。森にそんな大きなテントが張れるのかを。
そして他の夜営の道具もピアがマジックバッグにいろいろ突っ込んでいるらしく、
俺の毛布やら本当に個人的な物だけ買えばすんだ。
でも結構買いすぎか?お金足りるかな?
と不安がってたらピアが出そうとして、それよりも早くソックスから念話で話かけられた。
『ケン、これ使ったらどうっスか?』
そう言ってカゴ鞄から布袋を見せてきた。
覚えのない物だったから中を覗くと大量の大金貨が入ってた。それと木の皮の切れ端?
なんか書いてあるな…
[餞別だ。勇者殿、ピア達者でな。]
この文面とピアの話からしてゲイツ様からだろうか?
ピアに切れ端をそっと渡してると、ソックスから追加情報が。
『宿の部屋のテーブルに置いてあったあったっス』
ソックスさんや、言うの遅くない?
どうやって置かれてたの?とかなんかいろいろ突っ込みたいんだが、ピアが切れ端を握り締めて鼻をすすってるので気にしないことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ピアが落ち着くのを待って、ピー枚の大金貨を支払って(…ストレスたまってたのかな?)
おじさんが餞別だと大分オマケしてくれたりしての、やっとの王都脱出だ。
と思ってたのに何この長蛇の列。人気ラーメン店みたいだ。
俺列に並ぶくらいなら、諦める派だったんだけど。
「あっち見てみろ。入るのは厳しいが出るのは簡単だ。列もすぐ縮まる」
ピアが示した方を見ると最後尾が見えないくらいの列だった。
よし俺はこの王都に二度と来ないぞ。
そんで言ってたようにすぐに列が縮まって解放された。
門の外は幅広い街道が続いていて、人の列と少し離れた所に馬車の列があった。
門沿いには貧民街からも溢れたであろう人たちが。遠目だか人族以外の人もいた。
それから別に目を向けると荒れ地があり、その側を小川が流れていた。その先を見ると城下町より古びた民家がポツポツとあって、王都のすぐ側がこの状況ってことは魔物のせいでなるべく壁の内側に住んでるにしても、世界的人口はかなり少ないことが伺えた。
俺が周囲を見ながら暫く呆けているとピアが聞いてきた。
「どうだ、王都の外は?」
「…なんか、今更だけど異世界に来たんだなと思った」
そう言うとなんだか泣きそうな顔をするから、また見ないふりをした。
『ピアの旦那は泣き虫っスね』
さっきも泣いてたからソックスがちょっと呆れてる。
しょうがない。故郷がなくなって、10年以上この王都に住んでたんだから。
いろいろあっただろうけど離れ難い人も居ただろうしな。
そう語りかけると「そんなもんスかね」と呟いてカゴ鞄のなかで丸まった。
城下を振り返り目に焼き付けるように見ているピアを見ると考えてしまう。
本当に連れて行って良かったのか?
でも話を聞く限り結局ピアにはちゃんとした居場所がなかったように思ったんだ。
だから居場所を見つける切っ掛けになったらと思ったのも本当で(この世界を知るナビ兼用心棒とも思ったけど)だからこの国を出たらすぐ別れようと思ってた。
なのに今は長い付き合いになりそうな予感がしてる。
「あっちの大分向こうに見えるのが深遠の森だ」
吹っ切るように顔を上げ遠くに見える森を示す。
その目には迷いはないようだ。
「森に向かいがてら途中の農家で野菜貰おうぜ。欲しがってたろ?」
「葉野菜が欲しい!」
「野菜なんて旨くもねぇ。俺は肉が食えればいい」
「俺が作るんだから野菜も食べてもらうぞ」
不服そうに口を尖らすから、背中を思いっきりたたいてやる。
俺の手の方が痛んだよ。
そんなやり取りをしているとドッドッドッと地響きが近付いてきた。
「ヒッヒヒーンッ」
耳を塞ぎたくなる大きな嘶き。周りでは耳を押さえてしゃがみこむ人もいる。
見上げるような巨大な黒光りしてる馬体。どこぞの世紀末覇者が乗るような鞍を付けてる。
これってもしかしなくとも…
「うわっ、ポニー!来ちまったのか?ゲイツ様に頼んできたのに」
ピアが手綱をとり宥めているけど、踏み鳴らす土埃がすごい。
「ヒンヒン…」
鼻面をピアに押し当ててるけど俺がやられたら確実に尻餅ついてる。
『置いていかないでって言ってるっス』
ソックスの通訳が入りました。が俺にも理解できるんですが。鑑定でそれっぽい事書いてたな。
にしてもこれってもしかしなくとも…
『旅のメンバー増えたっスね』
そうだよな。まだ一歩も進んでないのにどっと疲れた。
ピアと黒毛の馬の哀愁がすごい。
わかったよ!連れて行くからその目をやめなさい!
さて、気を取り直して一歩を踏み出す。
異世界の旅の始まりだ。
※ ※ ※ ※ ※
鬱蒼と茂る木々。一歩入ると日の光も届かない樹海が広がっている。
ここを訪れる者は殆ど居らず、僅か高ランクの冒険者のみ。
高値で取引される魔物を求めて命を断つ者が後を絶たない。
近年瘴気も濃くなり更に難易度が増しているという。
この回でやっと一区切りです。
今後ゆっくり旅が始まります。
この後、更新は週に2、3回の予定です。
よろしければお付き合い下さい。
ありがとうございました。




