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七宝怪異話集  作者: 七宝


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5/10

殺し屋レンサ

 誰にだって殺したい人間の一人や二人くらいはいる。自分が手を下さずに殺せるとしたら、あなたは殺しますか?


 今から五分ほど前、俺の前にアイツはいきなり現れた。歳は二十代半ばといったところだろう。背が高く、整った顔には青い瞳が輝いていた。


「お前、殺したい人間はいるか」


 駅のホームでいきなりこんなことを聞いてきたのだ。俺は少し驚いたが、青い瞳や綺麗な金髪から日本語に慣れていない外国人だと思い、あまり気にしなかった。


「いるなら言え。殺してきてやる」


 何だこの男は。嘘を言っているように感じない。俺の心を覗いているような、そんな気すらする。現に俺には殺したいほど憎いやつが二人いる。


「一週間のうちに答えを出せ。答えが出たらまたここに来い」


 そう言って彼は消えてしまった。そんなこと言われても、電車通勤なんだから毎日ここに来ちゃうよ。


 ⋯⋯殺したいやつか。そんなの一週間じゃなくたってすぐに思い浮かぶ。ただ、どちらにするかが問題だな。俺にだけキツく当たるパワハラ上司・斎藤か、貸してやった金をいつになっても返さないどころか、逆ギレをされて犬猿の仲になった同僚の平田か。


 斎藤は最低なやつだけど、毎日会うわけじゃないからなぁ。あいつが居なくなると会社にもダメージがあるだろうし⋯⋯

 となると平田か。席が隣なこともあり、毎日気分が悪くなる。アイツがホンモノかは分からないが、殺してくれるならありがたい。会社に着く前の電車内で決まってしまった。案外決断が早いんだな俺は。


『臨時ニュースです』


 俺は通勤中はイヤホンでラジオを聴いている。音楽もいいが、聴きたい曲を選ぶのが面倒なのだ。


『今朝、都内に住む平田 洋司さんが何者かによって殺害されました。警視庁は⋯⋯』


 平田が殺された!? ⋯⋯まぁ、あいつのことだし、いろんな人間から恨みを買ってたんだろう。ざまあみろだな。じゃあ斎藤を殺してもらうか。


 あいつには何度も酷いことを言われたし、された。自分のミスを俺のせいにして、俺が仕事の出来ない奴のように仕立てたり、機嫌の悪い時には殴ったりもしてきた。

 思い出したら腹が立ってきた。反対の電車に乗って今すぐアイツに会いに行こう。そして斎藤を殺してもらおう!


 次の駅で反対方面の電車に乗り換え、例の駅に戻った。そこには案の定アイツがいた。


「俺の上司の斎藤という男を殺してくれ!」


「分かった。早かったな⋯⋯残念だが」


 そう言うと男は俺の腹に包丁を突き立てた。


「おい! 殺すのは斎藤だ! なんで俺に包丁を向ける!」


 男はそんな俺の言葉は聞こえていないかのように、表情を変えず何度も俺の腹を刺した。


 お腹痛い。死ぬのか⋯⋯くそ⋯⋯


 男は俺の事など構わず電車に乗っていった。







「斎藤だな。お前、殺したい人間はいるか」

怪異データ

[殺し屋レンサ]

一人一名指名させ、その者を殺す。指名された者は自分が指名されたことは知らされず、次の者を指名した瞬間に殺される。

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