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七宝怪異話集  作者: 七宝


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3/10

行列

 行列があると並んでみたくなる。ネットのクチコミよりも私は行列を信用している。いいものだから行列ができるのだ。


 それにしても、こんなところにラーメン屋があったなんて知らなかった。まだ十一時なのになかなかの列ができている。二十人ほどいるだろうか。


 さて、行列に並んでいる時、あなたは何をして過ごすだろうか。スマホを見る、音楽を聴く、二人以上なら話しながら並ぶこともあるだろう。しかし私はいつもひとりだ。基本的に前の人の頭を見て過ごす。前の人の観察が終わったら周囲の会話を盗み聞きする。


「オープン記念で全品半額ってやばいよな」


「ああ、やばいな。店の人も大変だろうな」


 しまった、私としたことが。オープンゆえの行列だったか。しかも半額ときたもんだ。この行列は信用できない。しかし、半分くらいまで進んだので今日のところは食べておこう。


 私はまた前の客の後頭部を見ることにした。長い髪の女性。やはり長い黒髪は綺麗だ。頭の中は今ラーメンでいっぱいなんだろうな。この人も一人らしく、ずっと無言で前の人の後頭部を見ている。私が言うのもなんだが、前を見たまま全く動かないので少し怖い。私もそう思われているんだろうか。


「ばっひょい!!」


 失礼、突然くしゃみが出てしまった。あまりにも突然鼻に来たので手で抑える暇も無かった。前の人の頭に全部かかってしまった。


「あの⋯⋯すみませんでした」


「⋯⋯⋯⋯」


 返事がない、聞こえていないのだろうか。それとも怒っているから無視しているのだろうか。

 そんなことを考えていると、前の女性が動いた。ハンカチで頭を拭いている。本当に申し訳ないことをした。もう一度謝ってみよう。


「あの、本当にすみませんでした」


 耳がピクリと動くのが見えた。完全に聞こえているはずだ。少し間を置いて、女性はゆっくりとこちらを振り返る。


 体の向きを変えずに、ゆっくりと、ゆっくりと、真後ろまで首を回す女性。バキボキと骨の音が鳴っている。その顔はこの世のものとは思えぬほどの、まさに鬼の形相だった。


「ボケナスコラァ!」


 そう叫ぶと女性は首を前に戻し、一回舌打ちをして店の中に入っていった。


 もう一席空いていたようで私も呼ばれた。若い店員が二人がけのテーブル席に誘導する。あの女性と相席のようだ。他の客と向かい合わせで座らされたのは人生で初めてだった。


「失礼します、さっきはどうも⋯⋯」


 例によって女性は無言。早く帰りたかったので、メニューをすぐに決めた。店長と思われる男性が一人で厨房を回しているが、デカデカと書いてあるこのメニューならすぐに作れるのではないだろうか。


 三分ほどでラーメンが運ばれてきた。女性のラーメンはまだ来ていない。よく見たら水も無い。店員が忘れているのだろうか。


「なかなか来ませんね、何頼んだんですか」


 勇気を出して聞いてみた。


「あなた、自分に悪いイメージ付いてるの分かってます? そんな状態でわざわざ人にお節介焼いて。黙って食べてください、また唾飛ばされるのはゴメンですからね」


「すみませんでした⋯⋯」


 この人超こわい。私が悪いのは分かってるけど、こんなに言わなくてもいいのでは?


 結局、私が食べ終わってもあの女性のラーメンは来なかった。一体何を頼んだんだ。裏表紙にあった超特製ジャンボウルトラゴージャスまぜそばでも頼んでたのか? 今となっては知る由もない。


 翌日、例のラーメン屋の店主が殺人罪で逮捕された。オープン前日に妻と喧嘩になり首の骨を折って殺害したという。遺体が冷凍庫から見つかったことで発覚した。

 ニュースで流れた被害者の女性の顔写真を見た私は目を疑った。昨日のあの女性だったのだ。

 

怪異データ

[おばけ]

スタンダードな怪異。いろんなのがいる。

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