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七宝怪異話集  作者: 七宝


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1/10

夜中のバイク旅

  表紙絵

  挿絵(By みてみん)

 やぁみんな! 俺の名前は松平 無何有郷(ゆーとぴあ)、みんなにはまつゆーって呼ばれてる!

 今日は今日とてバイク旅! え? なんで裸なんだって? 君たちの目は節穴か? このネクタイが見えないの? ほら、裸じゃないだろ? え? 大事なものが見えてるって? 夜中の三時だぜ? 誰もいるわけないだろ?


「うわー!」ドンッ


 やってしまった。普段から運転してる時はあまり記憶がないんだ。ちゃんと信号は守ってるはずなんだけど家に帰ると『あれ? どうやって帰ってきたんだろ』という感じになるんだ。さっきも頭の中でなにか考えてたはずなんだけど思い出せない⋯⋯しょうもないこと考えてた気がする。


「痛い⋯⋯救急車を⋯⋯なんで裸でバイク乗ってんだ⋯⋯」


 まだ息がある。救急車を呼ぶべきなんだろうが、俺はもうパニックだ。指が震えて電話なんて出来るはずがない。夜中ということで幸い周りに人はいない。逃げてしまおうか


『まつゆーよ⋯⋯私はひき逃げの神・ムヒキだ。お前に二つの未来を見せてやろう』


 突然脳内に女が語りかけてきたと思ったら、映像が流れ始めた。どういう理屈だ。


『まずは、お前が救急車と警察を呼んだ場合だ』


 俺はバイクを降り、持っていたスマートフォンで救急車を呼んだ。ひかれた男は頭を打ったようで大量の血を流している。両肘と両膝にも血が滲んでいた。


「ありがとう⋯⋯誰も見ていないのに逃げないなんて、なかなかできることじゃない」


 ひかれた事はともかく、男は俺に感謝していた。本当に誰もいない、信号もない道で、お互い油断していたのだ。


「もしもし、人をひいてしまいました」


 その後俺はしっかり警察も呼び、罪を償うことを決めた。警官が到着し、なにやら道路を調べている。


「ねえ君、なんで裸なの? 事故よりよっぽど珍しいんだけど」


 被害者の男は五日間昏睡したのち死亡した。


 そうか、俺は人殺しになってしまうのか。刑務所に入らないといけないんだろうか。俺ってこんなテンション低くなれるんだな⋯⋯


『もうひとつの未来、ひき逃げを選んだ未来を見せてやろう』


 そうだった、もうひとつあるんだ。こっちの内容のほうが良ければこっちにしよう。


「うおー! やっちまった! ごめん、逃げるわ!」


 テンションそのままなのか。パニックになってるんだろうな。


「そんなぁ⋯⋯」


 取り残された被害者は悲痛な声を上げる。悪いな、どのみち君は死ぬんだ。悪く思わないでくれ。いや、そんなの無理か。


 しばらく走っていると、後ろから誰かが走ってきた。こんな時間でも運転してる人がいるんだなあ。その車はサイレンを鳴らし始めた。


「見つけたぞ! そこの裸の原付、止まりなさい!」


 見つけたぞ? 通りかかった誰かが通報したのか? どのみち逃げられないのか⋯⋯


「おい! 君だぞ! なぜ止まらない!」


 俺はスピードを落とすことなく進んでいる。聞こえていないのだろうか。パニックで訳が分からなくなっているのか?


「止まれコラァ!!」


 ようやく止まった。ヘルメットを取った俺は落ち着いた顔をしていた。いや、呆然としていると言ったほうが当てはまるだろう。


「君、なんで呼び止められたか分かるよね?」


「いや分かんないっす。そもそも自分が呼ばれたと思わなかったんで」


「裸で原付バイク乗ってるやつなんてこの世に君しかいないだろ。通報受けてびっくりしたよ」


 裸の原付バイク、という通報があったのか。ということは、あの場に誰かが居て見てたのか?


「自分の罪状、分かるよね」


「は、はい⋯⋯」


 がたがたと身体を震わせ、泣き出す俺。やはりさっきまでは心ここに在らずといった状況だったようだ。それが今やっと、我に返った。


「公然わいせつ罪ね」


「えっ?」


 あまり重苦しい雰囲気でなく、バカの相手をするような顔をしている警官。


「えっ? じゃないよ。分かるでしょ」


「いや、あの、いつもこうなんで⋯⋯」


「いつも!? じゃあしょうがないな、夜道には気をつけるんだぞ」

 

 あろうことか、警官は俺を捕まえずに帰って行った。神が俺の味方をしているとでも言うのか? そうか、ムヒキ様の仕業か!


『どうだ? お前が選んだ未来に飛ばしてやるぞ。選べ』


「もちろん逃げるさ!」


 ムヒキ様がそう言ったかと思うと、俺の身体は光に包まれた。そして、いつの間にか俺はバイクで家に向かっていた。


 そうか、終わったのか⋯⋯どうも疲れたな。しばらくここで休憩するか、誰も来ないだろうし。


 俺はそのままバイクを道の脇に停め、路肩のあたりに腰を下ろした。尻がひやりとする。そうだ、俺今裸なんだ。まぁ、いつもなんだけどな⋯⋯ん? トラック?


「おい、なんかいるぞ!」ドンッ!


 次の瞬間、俺の身体は宙を舞っていた。身体中が痛い。いや、痛くないかも? 痛いのかどうかも分からない。血が出ている。俺は死ぬのか⋯⋯?


「いやー、山道は嫌だねえ」


「ほんとほんと、月に一回は何かしらひいちまうんだもんなぁ」


 待て⋯⋯助けてくれ⋯⋯救急車を呼んでくれ⋯⋯


怪異データ

[裸バイク男]

こんな奴いたら怪異だろ






※ご本人には出演許可をいただいております。

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