学院対抗戦と紹介
体力テストが終わって二日が経過したと思いきや始まったのが学院対抗戦。
学院長は僅か一日の訓練だけで他の学院に勝てと要求してきた。僕らはそれはそれは大変な一日を過ごした。
反射神経を強化すると言ってキョウカの飛翔斬を大量に浴びせたり、力比べに負けないためと言ってアレンと合を打ったり。僕は慣れているから良いが他の同級生達はその名の通りボロボロにされた。
更にそれらは僕の超回復有りきの訓練だったため対抗戦前なのに精神的な疲労が溜まりに溜まっていっていき、ある者は狂う寸前のところまでいっていた。
しかし、さすがはこの学院に入学を許された者達、メキメキと実力をつけていき一日が終わる頃には訓練を乗り越えられるようになっていた。
「今日はいい朝だな」
「なー」
僕はもしかしたら部屋から出てこないかもと思っていたが、精神の回復速度も早く寝たらケロッとして寮から出てきた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
ロニエも制服をいつも以上にビシッと着こなして女子寮から出てきた。
「全員、すっかり疲れは取れたようだな。では、会場まで走って向かおう」
そう言ってビュンと音を立てて走り去っていく学院長。
「速いですよ学院長〜」
「ご飯食べたばかりなんですからそんなに速く走れませんよ!」
皆んなは学院長に文句を言いながらもしっかりと着いていっている。
「わざわざ宣戦布告に来たくなるほどの生徒が翔剣学院に入ったそうだからな、これぐらいが準備運動だ」
そう言うと学院長は更に速度を上げた。
そんなこんなで走っていけばすぐで中央都市の外れにある大きな闘技場に到着した。
「沢山の学院生がいますね」
ロニエが言う通りここには勇者学院を含めた五校の生徒が集まっているのだから。
その中には同い年とは思えないほど筋骨隆々で大きい、武人と表せるような者や見て分かるほど秘める魔力の質が秀でて高い者など優秀そうな生徒が数多くいる。
「さて、イティラよりも強いやつはいるかな」
目を輝かせて辺りを見回すアレン。自分が戦いたいのだと思っていたが──
「いいや、イティラと互角に戦える奴がいないのなら見ている俺が楽しめない」
とにかく自分が戦いたい、戦闘狂のアレンらしからぬ理由だった。
「アレンはずっと見ているつもりなの?」
「いいや。もちろん戦うが、この機会にイティラの癖を見抜いておこうと思ってな。今回は魔剣士だけじゃなくて魔導士とかもいるんだろう、学院長」
「ああ、もちろんさ。他にも剣だけで戦う学院も今回は出場しているぞ」
「毛色の違う奴らを相手にイティラがどう反応を見せるのか。どうすれば攻めれるのか研究させてもらうぜ」
今は僕に勝つことだけが目的らしい。が、僕だって──
「僕もじっくりアレンのことを見させてもらうよ」
「臨むところだ」
「見るのはいいがしっかり勝ってくれよ。お前達が今回の鍵なんだから」
挑発的に微笑み合う僕らを見て呆れたようにそう言葉をこぼした。
『ようこそお集まりいただきました。戦勇祭を開催いたします』
拍手と喝采が広い闘技場に響き渡る。
『司会は私レオナルドがお送りさせていただきます。今年の出場校は五校。
一校目、魔導学院はこの都市に最初に創立された魔導師の為の学院。今年こそは歴史に見合った成果を上げられるのでしょうか。
二校目、虎翼学院は虎翼流派の剣士のみを育成する学院。今年もその圧倒的な力で他校の生徒をねじ伏せる、熱い戦いを期待しております。
三校目、大魔法学院は元魔導学院の分校で十年前に無理矢理独立した学院。掠め取った技術と技は本家に勝るのでしょうか。
四校目、翔剣学院は剣士、魔剣士両方の育成を行っており歴史が深くこの国随一の有名校。今年こそは勇者学院を破り、一位となれるのでしょうか。
五校目、勇者学院はあの魔王を倒した勇者が五年前に創立した学院。毎年負けなしの学院は今年も連勝を守り抜くことが出来るのか。
以上で紹介を終了させていただきます。まず初めは全校対決のバトルロアイヤルです。十分後にお集まりください』
鬼気迫る熱い放送が幕を閉じると各学院生徒が動き出す。ある学院はストレッチを始め、ある学院は走り込みが始まった。
勇者学院は……。
「よし、生徒諸君。互いに魔法を撃ち合うんだ。遠慮はいらない、今年は保険医に加えてイティラもいる。どんな怪我でも完治する」
その合図を聞くや否や先輩達が一斉に魔法を行使し始めた。
「また始まったよ、勇者学院の撃ち合い」
「絶対にアレに当たるんじゃないぞ。こちらには高位の治癒術師がいない」
「まさかあんな魔法如きに負けるマヌケはいないだろう。当たる前に跳ね返してしまえ」
「これに乗じて魔法を当ててしまえ」
各学院長が生徒に声をかける。大魔法学院は堂々とこちらに攻撃してきているがいいのだろうか?
「お前達も先輩を見習ってやりなさい」
学院長が生徒と生徒の間をすり抜けてそう言ってきたが
「いいんですか?戦う前に魔力を使ってしまって」
「ああ、構わない。これは入学志願者を増やす為の見せ物だからな。だけ魔法を撃ち合っていたのに勝てるなんてすごい、ってな」
観客の中には学校生も多い。多分周辺地域の学校生はここに見に来る風習があるのだろう。その学校生を引き込もうとしているのは分かった。しかし、うちの学院は……。
「あぁ……なるほど」
(入学受験料が目当てか……)
受験者が多いからそんなに困っていないと思ったが、そういう事だろう。
「イティラ君、覚悟。『放電』」
ロニエの魔法を避けて反撃を、と思ったけれど──
「そういえば僕、攻撃魔法なかった」
ロアイヤルが始まるまで反撃が出来ない僕は飛んでくる魔法を永遠と避け続けながら負傷者を回復し続けた。
──反撃出来ない僕を面白がった多くの生徒のことを僕は忘れない……。
恨みの戦士イティラ・トロムの登場をお楽しみに。




