結果と先生
「どうしたんだ、イティラ。すごい眠そうだが……」
「昨日は色々あって眠れなくて」
「そうなのか。悩みがあるならいつでも相談に乗るからな」
学院長は心配そうな声でそう気遣ってくれた。
しかし、僕が眠れなかったのは悩みじゃなくてロニエのせいだ。余計に心配をかけさせてしまって申し訳ないが、あそこで違うと言うと面倒なことになりそうだから僕は口をつぐんだ。
「いやー、申し訳ないです」
そんな反省しているのかいないのか分からないような眠たそうな声を発するロニエ。
「ロニエはあれだけよく寝ていたのに、何で眠そうなのかな?」
「いやあ、あはは。よく眠れすぎてしまって、今も眠いと言った感じでして」
「……」
「イティラ君の匂いには安眠効果があるのかもしれません」
背後から気配を感じて振り向くとキョウカが到着したようだ。
「……上手くいった?」
「ええ、もう大成功です。ありがとう、キョウカちゃん」
「……どういたしまして」
キョウカは「私も興味あったから礼はいらない」というような顔でそう言って席に着いた。いらないと思っていても感謝を受け取るあたり彼女らしい。
「さて、全員揃ったな。では、皆んなも楽しみにしていたであろう昨日の体力テストの結果発表を行う」
教室の至る所から「おおっ!」という声が上がる。
「まずは総合評価一位は……二人いる。イティラとキョウカ、よくやった」
「イティラ君、凄い」
「当たり前だろ、イティラだぞ」
「キョウカちゃんもやばいねぇ」
「キョウカちゃん、可愛い〜」
「イティラ君も可愛い〜」
拍手が響き、僕らを包み込む。皆んなが僕らを流石だと褒めてくれている。一部は何か違うが……。
(魔剣士学校の時の記録を大幅に超えられてよかった)
しかし、キョウカにもう少し握力があれば僕を超えていた、そう考えると僕はまだまだ努力量が足りない。
「続いて第三位も二人だ。もう分かっていると思うがアレンとロニエだ」
また大きな拍手が響く。そこに僕の拍手も混ざり込み二人を労う。
「負けた……が、必ず次は勝つ。イティラ、覚えておけよ」
「私も今回は負けてしまいましたが、絶対に二人に勝ってみせます」
硬く拳を握りしめてそう決意する二人。僕はそれに「次も勝つ」という意味を込めて拳を突き出した。キョウカも合わせて四人の拳がぶつかり合うといつかの日にこうして拳を合わせて決意した日を思い出した。
体力テストはこの四人で上位を総なめして無事Aクラスから降格することは免れた。ちなみに誰も降格した者も上がってきた者もいなかった。
「体力テストが終わってすぐだが、学院対抗戦があるからな〜」
「「「ええ!?」」」
なぜこんなに急なのか、皆んなが問いかけると
「いやだって、学院の改修期の行事と本来今やるべき行事が溜まりにたまっちゃっていてだな……」
「もっと早く伝えることも可能だったのではないんですか?」
「……普通に忘れてた、すまない。後、この学院が出来てから負けたことがないから」
軽い謝りと共にウインクを繰り出した。そんなことを付け足して。
「本当に大丈夫なのかな、この学校は……」
「まあ、昔からこんな感じですがやる時はやってきた人なので安心してください」
「……!?」
よく学院長と一緒にいる女性の先生が僕の背後に立っていた。今は常に全方位の気配を感じ取れるように練習していたのに。
「学院長、翔剣学院の学院長がお見えです」
「まだ時間じゃないのに、全くあのせっかちが……。分かった、すぐに行く」
それを聞いた女性の先生は頷いて音もなく教室を出ていった。
「というわけですまない。せっかちな学院長が到着してしまったようだから説明は今度だ。では、行ってくる」
女性の先生を追いかけて逃げるようにしていなくなった。僕らも流石に来客となると止めることは出来なかった。
「学院長とあの先生はどんな関係なのでしょうか?」
昔からの関わりを示唆していたから何らかの深い関係はあるのだろうけど──。
「分からない。けど、あの先生かなり強いよ」
「どうして分かるんですか?」
「あの先生の気配を感じられなかった」
人間は生きている以上隠すことは出来ても気配を完全に無くすことは出来ない。が、僕は先生を認識しても気配を感じ取ることが出来なかった。
恐らくだが、本当に気配を隠すのが上手いのだろう、そうでなければ死んでいるのと同義になってしまう。
「名は残っていませんが、魔王討伐に関わったのかもしれませんね。あの魔王と互角に戦えるのなら強いのは間違いありませんし」
「けど、そうだとしたら何で名前を残さなかったのか分からないんだよねえ」
「ですねえ」
──この先、衝撃の事実を知ることになるのだが今の僕には知る由もなかった。
どんな関係でしょうか?




