医者と剣術
「本当か!?」
「ええ。患者は一箇所に集まっていますよね」
神に祈って──と近くにいないと知らないようなことを言っていたからそうかと思ったが当たりだった。
「あ、ああ。私でも多少は治療出来るからな」
「なら剣士はやめません。が、休日を使ってそちらに向かいます」
魔剣士、もとい勇者のようになるという夢は変えない。が、一人でも多くの困っている人を救いたいという気持ちが僕の根底にある。
だったら、両立してしまえば良いのだ。常駐が出来ないから急な変化には対応出来ないだろうが、そこはおじさんに任せる、病気や怪我の完全治療は僕が行う。
そうすれば、上手くいくはずだ。
「休日に、って……。救われる人は今よりは多くなりますが……」
「大丈夫です。今の僕なら一日に五十回ほどなら余裕で『超回復』を使うことが出来ます」
「一日五十回!?本当か、それは」
「ええ。実際はそれよりももっと多く出来ると思いますよ」
魔王との戦いで生存本能に身体を譲ったときに何回か、同級生達に三十回、魂の転移を含む超回復のあの時の消費量は今の僕の魔力量よりもかなり少ない。
一日に七十回は余裕であると思うが、実際に大きく言いすぎて、出来ませんでしたとなってはいけない。
「それなら良いですかね?」
「はい。ぜひお願いします。困難に遭う皆んなを救ってください」
「では、詳しい話はまた後で。とりあえず測定を終わらせてしまいましょう」
僕の背後には長い列が出来ている。話しすぎてしまったようだ。
「では、『超回復』を使ってください」
僕は言われた通りに超回復を使った。目標がないとやりにくいから、おじさんの肩凝りを解消した。
「技能的には普通ですね。ただ、やはり超回復は偉大だ」
肩を回してそう言うおじさん。肩凝りの解消程度でとは思うが凝っていると大変なことも多いのだろう。
「では、また後で」
僕は次の剣術の測定場所に急いだ。
剣術の測定は如何に綺麗で鋭いかを百点満点で試す。戦うための剣ではなく、見せ物としての剣というわけだ。
一見関係ないように思えるが、狙った位置に寸分狂わず剣技を放つことは敵の守りを破るためにも使える技術であるし、鋭さは言わずもがなだ。
場所に着くとアレンが最後の一振りを終えたところだった。
「ジェネウス君、満点です」
よし、と言ってアレンは出て行った。やはり、彼は流石である。
「凄いですね、なかなか聞きませんよ満点なんて」
「……うん」
そう二人は言っているが、実は何回か見たことがある。イルビィとその取り巻き達だ。
イルビィは才能と英才教育があったから当然ではあるが、取り巻き達の剣術は何故か綺麗だった。
今思えばイルビィに比べるとそこまで強くなかったが剣筋は一流並であった。
「次はロニエの番だよ」
ロニエ、キョウカの順で測定を行ったが、いずれも──
「素晴らしい」
「美しい」
高評価で、高得点をもらっていた。その評価の後が僕の番。
僕は四の塵を使い、肉体と魂の結びつきも強めた。
「三の塵──五月雨斬り」
正確性を意識して寸断なく十五連斬を行う。
「一の塵──六切り、二連」
自分なりに美しく剣技と剣技を紡いでいく。
「五の塵──豪剣連斬」
最後の三十連斬を決めきった。
「ふう」
合計五十七の斬撃を美しくまとめられたと思う。確実に今までの僕の記録よりも高いことは自信がある。
「トロム君は……」
鼓動が速まる。それが発表の緊張なのか、激しく動いたせいなのかは分からないが恐らく両方なんだろう。
「七十点だ」
「……」
七十点はまあ可もなく不可もなくといったところだ。何故、と思って顔を上げると
「トロム君の剣術は激しく見応えのあるものだった。実際の戦いにおいて君は物凄く強いのだろう、そういう感じがした。が、美しくかと言われればそうではなかった」
僕なりに美しさを出したつもりであったが、出来ていなかったようだ。もしかしたら、満点かもとどこかで思ってしまっていた自分が恥ずかしい。
「落ち込まないでくれ、私は君の剣術が好きだ。あくまで測定基準において七十点なだけで私個人としては百点をあげたいくらいだ」
「そうですか!ありがとうございます」
「これからも頑張ってくれ」
「はい!」
下げて上げる青年に気分を良くさせられて僕は次の測定場所に胸を張って向かった。
超回復は肩こりにも効く。




