魔力測定
突然知らされた体力テスト。その最初の種目は魔力測定であった。
「どうなるでしょうか」
もう指名された順に測定を行っている。
魔力測定は専用の魔法が掛けられた水晶に魔力を込めるとその人の魔力が数字となって表示される。
例えば今、測定しているウィグル君の魔力量は1057。同年代の一般的な数値が900と考えるとかなり高いということになる。
「魔力量だけは自信があるから安心して出来るよ」
「本当にイティラ君は悍ましいくらい魔力を持っていますよね」
「武の才能がない代わりに魔力だけ異常に多いからね。けど、自然に発言した魔法が魂の転移しかないってのが勿体ないんだよね」
魔導書で習得した『超回復』は当然ながら便利であり助かっている。しかし、攻撃魔法が有ればもっと有利に勝負を進められることは確かで、僕は魂の転移を出来るだけ使ってはならないから有利に進められるならしたい。だから攻撃魔法が欲しいのだが……。
「何故か、魔法が発現しにくい体質らしいんだよね、僕」
「そんな事があるんですか?」
「あるらしいよ。魔力が少ない体質や魔法力が低い体質みたいに魔法が発現しにくい体質もあるにはあるって聞いた。ごく稀らしいけど」
多分、アレンは魔力が少ないか魔法力が弱い体質、或いはその両方なのだと思う。
「ふーむ、世の中はまだまだ知らない事が溢れていますね」
と話しているうちに最後に回されたいつものメンバーの測定となった。
まずはアレン。
「正直言ってこれだけは自信が無いが、標準は超えてやるよ」
そう言って水晶に触れた。
そこに表示された数字は──853。完全に届いていなかった。
「もう一回だ、もう一回すれば絶対に超える──」
「はーい、次も控えているから魔法技能の方に移ってね」
「ちょちょ、押す直すな。短時間で終わらせるからもう一度だけ……」
アレンは学院長に連行されていった。プライドが高いアレンのことだ、何か不思議な力を発揮して自分の魔力以上の数値にしてしまうかもしれない。実力以上を出されては測定の意味がない、と思って無理矢理連れていったのだと思う。
「次は私ですか。張り切ってやっちゃいますよ」
アレン同様に水晶に触れて表示された数字は──1201。
「わ!やった、やりましたよ、イティラ君」
魔力量が1200とは一般で働いている魔工技師以上の魔力である。魔工技能は魔力を特に使う職業で、魔力が足りなくて断念する人が多い。
しかしロニエはそれを超えているから専門知識さえ入れれば魔工技師になれるということだ。働き口が一つでも多いのはいいことである。
「おめでとう」
ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶロニエを撫でる。ロニエは無邪気な笑顔を浮かべて少しの間、そうしていた。
どうやら、学校で最後に測った時は950辺りだったらしく1000は超えていなかったらしい。魔力量が急激に増えたのは実家に行って、戦闘訓練をしたときにずっと『筋力増強』を行使したり『放電』を使っていたからだろう。
「次はキョウカちゃんですよ」
「……うん」
トコトコと水晶に歩いていくキョウカ。そのまま何の気なしに水晶に触れると──10024。常人では見ることが出来ないほどの魔力量。
「えっ……キョウカちゃん?」
普通の人でも驚く数値だが、魔法関連についてよく調べている者には尚更驚かされる状態である。只人史上最大値を誇る魔導師であっても7638なのだから。
当然、魔力や魔法技能の測定のために待っている生徒の視線がキョウカに集まる。
「……一杯見られてる」
「まあ、そうなっちゃうよね」
キョウカ自身はその異常さに全く気が付いていないようだ。いや、昔からこうだったのか……?
「こんな注目されている中やるのは嫌だなぁ」
ここには全生徒の半分がいる。その殆ど全てから視線が集まるのは威圧感が恐ろしいほど強いわけで。
「でも、イティラ君はキョウカちゃんよりも魔力量が多いでしょう?」
「そうなんだけどさあ」
魔力量10000は七歳の時に超えていた。父さんが僕を多くの人に知られたくないと公表はしなかったけれど。
そう言えばそれから僕の魔力量についての話がなくなった。父さんの権能である【封印】が使われたのだろうか?
「頑張ってくださいね」
「……頑張って」
「うん。出来るだけはするよ」
僕は水晶の前に立ち、見つめた。
(久しぶりだな。そうそう、水晶が放つこの独特な雰囲気、好きなんだよなあ)
なんて思って緊張を紛らわせてから目を閉じて水晶に触れた。
彼方此方から響めき、騒めきが聞こえる。信じられない、夢か、と言った声が聞こえる。
僕は恐る恐る目を開けると
──128091。
魔王から大陸を救った者は史上最大魔力量持ちという称号までもらうのであった。
魔力量最大のその男、規格外。




