アレンと力試し
「うーん、久しぶりの学院だ」
僕は伸びをして、約一ヶ月ぶりとなる学校を拝む。改修はとてもしっかりと行われており襲撃前と変わらない学院が立っていた。
「何故か少し離れていただけなのに懐かしい気分になりますね」
「うん。僕の家に来てから濃い日々が続いたからね」
学校祭にイルビィに神、その他諸々が続き毎日が飽きないほど大変で楽しかった。
「最後にもう一度、お爺様に手合わせ願いたかったですけどね」
僕や父さんの気絶などで時間を食ってしまいあっという間に出発日になってしまった。そのせいでロニエはお爺ちゃんと稽古する時間がなくなってしまった。
「ごめんね」
「いえ、イティラ君が悪いわけではありません。あそこで襲ってきた神様がいけないんです」
ぷりぷりと怒るロニエもとても魅力的で可愛らしい。
僕がロニエのことを見ていると
「……アレン」
キョウカが指を指してそう言った。
「おっ、イティラか。遅かったな」
「アレン、久しぶり」
学院と同じくアレンもほとんど変わりなくて……。
「アレン、かなり鍛えたでしょ」
「分かるか、イティラ。この休み中、強くなる為に必死に努力したんだ」
努力家のアレンが必死に努力とはどれほど厳しいメニューを熟したのか、それは感じ取れた。
見た目にはあまり変わりはないが、筋繊維の太さや強度が段違いに上がっている。
「虎翼流のオワリノ型を使えるようになる為に身体の丈夫さが必要だったからな。無駄がないように鍛え上げてきた」
「凄いですね……」
ロニエもアレンの努力の成果を感じ取り、そう言葉を零した。
「と言うことでイティラ、久しぶりに勝負しようぜ」
「うん、しよう。荷物だけ置いてくるから待ってて」
僕は急いで部屋に行って荷物を置いて戻った。走ってしまうほどアレンとの勝負は楽しみであった。それは彼の成長を感じたいという思いと自分の力を試したいという思いが高まっていた証拠である。
「お待たせ」
「速いな、全然待った感じがしない。ここから部屋まで五分以内で行って帰ってくるってイティラの成長も期待していいんだな」
「どうでしょう。それでどこでするの?」
「ここからかなり遠いが岩場でやろう。このイティラの速さなら十五分も走れば着く」
「どうして?訓練場とかでもいいんじゃないの」
「折角直したばかりなのにまた破壊しちまったら学院長が流石に可哀想だ」
「なるほどね」
虎翼流のオワリノ型を本気で使ってくるらしい。神話の時代にその剣技は神をも葬ったといわれる程の威力を持っているから周辺の色々なものを巻き込んで大惨事を起こしてしまうのだろう。
僕とアレンは全速力で走っていくと十二分でアレンの言う岩場に着いた。
「さて、走ったおかげで身体も温まったし、早速やるか」
「うん」
アレンは如何にも街同士そうな様子で剣を抜くのに対してイティラは冷静にこの休みで行ったことを振り返っていた。
「いくぞ。二の翼──真空斬」
アレンが接近しながら薙ぎ払いを繰り出してくる。僕はそれを正面から受け止めようとするが、不意に嫌な予感がした。
アレンに立ち向かうようにして近付いていた身体の進む方向を無理矢理逆にして飛び退くと、僕が入ろうとしていた空間が裂けるように見えた。
見えないはずの空気が彼の圧倒的な剣技の威力よって真空になるのが見えた。
「ちっ、避けられたか」
「危なかった。やっぱりアレンは凄い」
彼の真空斬はイルビィが行った真空斬以上であり、イルビィと戦っていなかったら今頃僕は負けていただろう。
「一の閃──雷轟、三の塵──五月雨斬り」
「一の翼──三段袈裟斬り、五連」
雷轟の勢いを載せたイティラの斬撃とアレンの斬撃が弾き合う。その力は互角であった。
「まだまだいくぞ、『操氷』『意識分割』」
アレンが氷像を創り出したかと思ったらその氷像は動き出した。
「戦闘で使うのはデストロイ以来か。あの時よりも格段に操作精度が上がった氷像を楽しんでくれ。二の翼──真空斬」
アレンと氷像が逃げ場を塞ぐようにして剣技を振るう。一死乱れぬその動きに対して僕は──
僕はその斬撃を飛んで躱し、頭上から剣を突き刺して氷像を壊した。
「一の塵──六切り」
着地と同時にアレンに斬りかかり、避けられる前にその身を斬った。
「まさか先にもらうとはな……」
バックステップをされたが、確実にその身に斬り込めていた。
「斬られちまったし本気でいくぞ。四の翼──武神解放」
アレンが四の型を行った時、いつもの風のような気はではなかった。
──アレンから発される気は赤く輝き、そして熱かった。
燃えるように揺らめくその気はアレンを中心にして漂い、舞っていた。
「アレンには驚かされてばかりだ。これは凄い」
「はは、今度こそイティラに勝つ為に必死だったからな」
(これは僕も全力を出さなければ失礼だ)
そう感じざるを得なかった。
「四の塵──性質変化・剛」
僕も四の型を行って、更に肉体と魂の結びつきを一致寸前まで強化した。
「いくよ、アレン」
「ああ」
「五の塵──豪剣連斬」
「五の翼──神如翔崩剣」
「「ハアアアアア」」
岩場だけが広がるその空間に二人の男の声と激しい剣戟が響く。
「ハアッ」
「っ……」
僕は──押し負けた。特に速さに特化した僕は速さと力強さの両方が高いアレンに剣技の合間を縫われ、逆に剣技を差し込まれてしまった。
「ふう、やっと一撃、これで同じだ。次の一撃で勝つ」
そう言うと彼の気はさらに膨れ上がり、熱量も増した。
僕は『超回復』で傷を治してアレンを見つめ予測する。
(アレンの次の攻撃は…………上段からの振り下ろし)
僕は構えて──アレンが動くよりも早く放った。
「オワリノ塵──大嶽穿」
「オワリノ翼──神滅斬り」
僕の斬り上げに読み通りアレンは振り下ろし。
神にも届いた剣技と神をも葬ったといわれる剣技が正面からぶつかり合う。
あまりの勢いに僕らはお互いの目を見て笑った。
──そして決着は一瞬だった。
僕は合をすり抜けてアレンに迫った。そのまま、アレンを斬りつけ吹き飛ばした。
が、アレンのオワリノ型の威力は止まらず、完全に内側に入り込んでいたはずの僕は衝撃に巻き込まれた。
「がはあ」
「くっ……ぐふ」
爆発を思わせる激しい衝撃は辺りを巻き込み、僕を吹き飛ばした。
やっと、衝撃の勢いがなくなったかと思ったら全身からひどい痛みを感じる。
(結構骨が折れちゃったな)
ゴツゴツしていた岩場を平地に変えてしまった衝撃は当然ながら骨をも砕く。
むしろ、身体が消滅しなかっただけ幸運であった。
「『超回復』」
痛みが割と鎮静化しているうちに全てを治して、アレンの元に駆け寄った。
『超回復』は本当に便利。




