皆が平和に生きられる世界
少し修正を加えました。
俺たちの国は大幅に発展していった。
反乱を繰り返して指導者が代わり、国はその度に良くなっていった。
国名はメリカ。大陸王メリカの名からそのままつけられた。
「本当に変わったなあ、この国は」
「そうだな。多少危ない時はあるけれど、当時とは違って国民は平和で命の危険に晒されることもなくなった」
「それに比べて俺たちは……」
俺たちの容姿はあの頃から依然として変わっていない。髪が薄くなるわけでも、身体能力が落ちるわけでもない。老化というものそのものがなくなってしまったようだ。
「魂の一致のせいだろうな」
魂の一致は完全に精神で出来ている神の身体に近づく技。その影響で一致を果たすと何かしらの作用が俺たちに働くようになってしまったのだろう。
「まあ、いいけどな」
「どれぐらい寿命が続くのか分からないが、天命が尽きるその時までこの国の変化を見ていこうぜ」
「そうだな」
俺たちが不意に空を見上げるとそこには一人の小さな少年のような者が立体映像として映っていた。
『俺は魔王ゾルーティンだ。人間どもよ、これよりこの俺と配下によってこの大陸全土を支配する。抵抗はしない方が良い。さもなくばこの大陸から悲鳴が絶えなくなるだろう』
魔王を名乗るものは舌足らずな話し方でそう宣言した。
「何だあれ。この大陸を支配って本気かよ」
「俺もそうには思えないな。それに魔族は滅びてしまったはずだ」
一人で収められるほどこの大陸は柔じゃない。圧倒的な統率力を持つ大陸王によって完璧に指導された軍がそうはさせない。
「どうするよ。もし本気だったら」
「俺は手を出さない。これから先、俺は国がどうなろうと関わらない。そう決めただろう」
「そうだな」
最初の反乱の時もギリギリまで悩んで手を出さなかった。その結果、今の国がある。
守られているのでは国には変化は訪れない。自然な形で成長と衰退を繰り返すことこそが最もこの国にとって有意義なのである。
「俺は国につく。が、俺も過度に手出しはしないつもりだ」
「そうか、それじゃあな」
「ああ、いつかまた会おうぜ」
この先、百何年という別れの時であったが、俺たちは変わらない態度で別れた。
──その後、魔王による支配が急速に広がりこの国は魔王の手に落ちた。
人々は勇者の登場を望みながら生きていった。大戦の最中よりはよっぽど安全な生活の中で──。
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学院に戻る前日、父さんから様々な話を聞いた。大戦の時に何があったのか、神の存在について、そして父さんのこと。
僕が最も驚いたのは神についてだ。
神は最高神のもと十二柱と呼ばれる力ある神々と神、そして準神がいる。
最高神はこの世界、生物、秩序などを創った後、十二の神に力を分け与えて長い長い眠りについた。
大戦時は十二柱の内、八柱が天界から降りてきていて地上を惨憺たる有様にしたそうだ。
神はその名の通り普通の神であり事象を司っている。この地上に生まれた文化などによって準神が神格という権能を得たものであり、その数は時を経るごとに増えていく。
凖神は神格を持たない神で司るものがなく、ほとんど意志を持たない。言葉を発してもカタコトであるらしい。
その他、整合神など例外はあるが基本的にその枠に収まっているという。
そして全ての神を共通に魔力を持たない。生物の生命エネルギーである魔力は生きぬ神には存在しない。
父さんは訳あって神の情報を封印した。だから、この世には父さん達しか神について知らない。
神による地上の襲撃はもうないと父さんは考えていて、もし起きたら父さんも加勢する、と言っていた。
神は常人では相手出来ない、そう父さんは言っていて実際に戦った僕も分かる。
「お父様はとても凄い方なんですね」
「そうだね」
父さんがこの世界を救ったこと。「救いたいと思った気持ちが僕に遺伝して勇者を目指すようになったんじゃないかな」と父さんは笑いながら言っていた。
「魔王の件もそうですが、私たちは勇者学院に通う勇者候補生です。自分の周りが危険に陥った時、お父様のように救いたいですね」
そう言うロニエには憧れや尊敬の気持ちが表情に浮かんでいた。
「そうだね。父さんの息子として恥じない生き方をしたいよ」
「……私も頑張る」
この世界が危険に陥ることなんてもうないのかもしれない。それが最も良いことなんだ。
しかし、逃げた魔王のことやイルビィのこと。対処しなければならない問題はあり、それは増えていってしまうのだろう。
もし、のために僕らは力をつけて人々を救う者となる。
皆が平和で生きられる世界、それこそが僕たちの望むものなのだから。
四章完。




