イチャつきと阻止
世界大戦は終わった。
俺、ローランド、ルアンの三人体制になったことによって最後の一ヶ月は世界中で死者ゼロという偉業を成した。
俺とルアンは元凶の捜索を行いながら神を中心に相手をした。ルアンはラデックスの権能と相性が悪かったが、それ以外の肉弾戦はとても強く安心して背中を任せられた。
ローランドには各種族の主力を殺さずに無力化をさせた。偶に大怪我をして帰ってくることはあったが、何事もなく任務を遂行してくれた。
多くの神を率いていた者は天に帰され、各国も戦力がなくなり大戦の火は次第に小さくなっていった。
そこを司令部のお偉いさん方に話し合いをつけてもらって完全に争いはなくなった。
「やっと……終わったな」
「そうだな……」
大戦継続期間は三年間。随分と走り続けた日々だった。各地を回って生きる者を救い、時に神と剣を交えた。
俺もローランドも何度も危ない目に遭いながらなんとかここまで生き延びた。
夢にまで見た理想とは少し違うがそれでも大戦は終結した。
「やる事、沢山だな」
「そうだな」
まずは緑の復興が第一にすべき事だ。大戦中に木は破壊され、野は焼けた。どこも貧相な見た目となってしまっているからそれを直したい。
その他にも表面がボコボコの地面を直したり、住居を建てたり、豊かな国の再建など、やることは山積みだ。
「そういう自覚があるのならあなた達も口だけじゃなくて身体を動かしなさいよ」
先に緑の整備を行っていたルアンが空を見上げてぼんやりしている俺たちを怒った。
ルアンも大量にあった仕事がここ一ヶ月は全くなくなり、俺らと行動を共にしていた。
「すまない。が、もうちょっとこうしていていいか?こんな気持ちが安らぐのは久しぶりなんだ」
「そう……。じゃあいいわ、ゆっくり休んで」
そう言ってどこかに行ってしまった。彼女も俺と各地を回っていたから多少なりとも三年間の大変さは理解してくれているのだろう。
「でも、あんなに強い只人が女性の中にいたなんてな」
面倒くさくなるのは目に見えていたから俺はローランドに彼女は只人であると嘘をついた。俺はルアンの神特有のオーラを消して、普通の只人に見えるようにした。
「ああ。本当に運に恵まれたよ」
その後も世界を元に戻すために俺らは働いた。途中、国から勇者なんて大それた名前をもらいはしたが、今後は平和に暮らしたい俺は歴史書に名前を残さなかった。
沢山の国民に感謝され、愛されるよりも俺は一人のあの女性を愛し愛されたかったのだから。
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親と子の最高の一撃はラデックスを斬り、倒した。
「イティラ君!」
ロニエとキョウカがそう言って駆け寄ってくる。僕は彼女達をまっていた。
しかし、その途中に意識が朦朧として気付いた時には倒れていた。
少し離れた所でも人が倒れる音がした直後、ロニエが慌てた様子で動く姿を最後に僕は目を閉じた。
目を覚ますと見知った天井が視界に広がっていた。起き上がって確認すると僕の身体には包帯が巻かれていた。
「起きましたか」
近くの椅子に座っていたロニエが立ち上がってそう言った。
「僕、どれくらい寝ていたの?」
「十二時間ぐらいですかね。疲労と多量失血によって倒れてしまっていました」
話に聞くと最後の一撃で僕と父さんの傷が開いてそこから出血、二人して倒れたという事だったらしい。
ロニエの判断が間違っていたら僕はまた魂の世界に行っていたとなると彼女には感謝しなくてはならない。
「お父様はまだお眠りです。お爺様の見立てによるとイティラ君以上に体力を消耗していて、数日は起きそうにもないそうです」
まあ、あのペースで戦って疲れていなかったらそれこそ完全な化け物だ。最後に戦ったのも百年近く前だと言っていたのに。
(そういえば、父さんの寿命長いな)
当たり前であるが只人は百年生きれば相応に老け、身体面を中心に衰えるはずだが、父さんにはそれがない。僕はずっと三十歳やそこらだと思っていたほどなのだから。
(父さんには色々聞きたいことがあるな)
「具合は大丈夫ですか?」
「うん。もう大丈夫」
僕は起き上がって身体を動かして無事を伝えようとすると身体がふらついた。そのまま倒れそうになったところをロニエに正面から受け止められた。
「もう。まだ大丈夫なんかじゃないじゃないですか」
僕を胸に抱いて優しく頭を撫でてくる。僕はされるがままになっていると
──戸が開いて、父さんが顔を出した。
「イティラ、元気か……って」
「「あ」」
「失礼しました」
状況を理解した父さんは一瞬で戸を閉めてどこかへ行ってしまった。
「ちょっと父さん!?」
この家でロニエと何かをすると父さんが邪魔をしてくる呪いでもかかっているのか、と思ってしまう出来事だった。
父さん…………。




