二つの一撃
すみません、遅れました。
「……うん。私もよ」
「本当か!?本当なのか!?」
「興奮しすぎ。ちょっとは落ち着いてよ」
ルアンが手を伸ばして俺の顔の前に広げて動きを静止する。
「おっと、すまん、すまん」
こんなに子供のように興奮したのはいつぶりなのか。もしかしたら初めての経験かもしれない。
それほど嬉しい事だった、なにしろ勝算は塵ほどしかないと思っていたから。
「それで、どうして整合神は私を離したのよ」
「もうその話に戻るのか……。俺の権能は【封印】、封印神シールシジッロのだ」
「封印神の……。発展したこの時代には封印するものはないからバランスは崩れないか」
神の権能は世界のバランスをとるためにある。さっきの整合神であれば度を超えて世界に混乱を招くような生物、また反乱して世界を滅亡を招くような神の粛清が役目だ。封印神は自然災害を中心にした多くの生物の命を奪うようなものの封印。
おれは数多くいる神の中で一番影響が少なく、俺と相性が良さそうな封印神を選んだ。この先、どのような災害が起こるか分からないが、数十年前と違って設備が発展した今であれば大丈夫であろう。
「この権能は力を練り上げる時間によって影響力が変わる。例えば魔法や権能などの能力の完全封印には一日、記憶であれば生きる全ての者のを消すために丸二日かかる。今回はラデックス一体を相手にルアンという少ない情報を封印したが、それくらいなら一瞬で出来る」
(もし仮にラデックスの意識が一つにまとめ上げられているのではなく、全てがバラバラの意識を持っていたならば出来なかった)
かなり危ない橋であったが上手くいって良かった。
「そういう事ね。確かにそれなら可能だわ」
「そうだろう、そうだろう」
「ええ。さて、相談があるのだけれど──」
俺はルアンが立てたこの大戦を止めるための作戦について聞いた。
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父さんが立てた戦略は至って簡単、攻撃あるのみだった。僕と父さんが交代で攻撃しまくり、ラデックスに休む隙を与えないという脳筋なものだった。
「そのためにもイティラ、魂の一致をしたことがあるんだろう」
「うん。どこでそれを……?」
「昔からの知り合いに聞いた。んで、その時の感覚を覚えているだろう、そうであればそうなる一歩手前の所までしてくれ」
今の僕ではついていけない。だからこそ、必要なのだろうが……。
「やってみる、けど難しいかも」
「難しくても、何でもするしかないんだ。けど、絶対に暴走するな」
(父さんは無茶を言うなあ。しかし、やるしかない)
僕は力を欲して意識を内側に向ける。あの奇妙な予感を呼び起こすんだ。
心臓が早鐘を打ち、汗腺が開き、高揚するようなあの感覚。頭の中に思い描き、全身に指令を出す。
突然、ドクンと心臓が鼓動したかと思えば、小さく速く動き出した。
「来た」
あの時よりは酷くないが、通常よりも遥かに速い動きに、多い発汗量。
このまま、魂を引き出すッ。
「ハアアアアア」
カチリ、と自分の中で何かがハマるような感じがした。今まで感じたことがないほどの力が湧き出てくる。
これで完全でないとは、本当に凄い技術だ。
「ふむ。二回目にしてそこまで出来るとは我が息子ながら驚きだな」
先にロニエ達と代わってラデックスと戦っていた父さんがそう言った。
「ここから速度を上げるぞ」
そう言った父さんの移動、剣速は格段に上がったが僕の目はついていけた。
こうして改めてみる父さんの剣筋は美しく、迫力があった。学院長など僕が知っている人達よりも遥かに磨かれたその剣技には見た誰しもが引き込まれてしまう。
尤も見れる人はごく限られた人のみだろうけれど。
ラデックスの攻撃を跳ね返した時、父さんの体勢が僅かだが崩れた。ラデックスはその機を逃さないとばかりに追撃を仕掛けようとする。
僕の役割はそれを防ぎ、攻撃の手を止めないこと。二人の間に割り込んで剣を受け止め跳ね返す。
「五の塵──豪剣連斬」
ラデックスがした事を真似するように隙に追撃を仕掛ける。
──今の僕には三十連斬のこの剣技は一瞬の隙さえあれば全て当てられる。
僕は余さずラデックスの身体を斬った。
「はっはっは。本当に立派になったなあ、イティラ」
いつの間にかラデックスの背後に回った父さんが剣を振り回しながらそう言った。
「【刑戮】」
「もうこれ以上変なことはさせないぜ。イティラ前から頼む」
「分かった」
──僕らは構えて放つ。
「龍王ノ牙──穿」
「オワリノ塵──大嶽穿」
二つの一撃はラデックスを挟み込み、断ち斬った。
親子の一撃が神を断つ。




