アデクと自覚
「ハアッ」
俺は心臓を握り潰そうとする女性の肩口から腰までを剣で振り抜いた。
日課をこなして俺はその場を立ち去ろうとすると背後から羽交い締めにされた。
「何!?」
「ふふふ。ありがとうございます、リオルト」
俺を捕まえているのは女性。しかし、直前にしっかりと斬ったはず。
(とうとう力すらも弱めてしまったのか……?)
最近、ずっといたいという思いが増していく一方だ。しかし、剣を振ることにおいてはその思いを振り払い、していたはずだが……。
「あまり落ち込まないでくださいね。私が強くなっただけですよ」
うふふ、と上品に笑う女性。こんな状況であるにも関わらずその表情に引き込まれそうになってしまう。
「どうやって……」
「私はあなたに攻撃されて消える毎に力をつけてこの世に降り立てるのです」
(日に日に強くなっている、と感じたのは勘違いではなかったということか)
「あなたには感謝しています。私をここまで強くしてくれて」
口角をニヤリと上げ、されど綺麗な目には怒りを広げて続けた。
「あの者たちがこんな戦争をさせるせいで、私の仕事が増えていく。しかし、私がしなければいずれは許容量を超えてしまう」
何の話かは分からないが相当な苦労と疲れが見える。
彼女は俺のように自らに課したのではなく他から己に課せられた使命を果たし続けなければならない。続けても終わらない、やめたらもっと面倒なことに。
そのストレスよって今の彼女の大変な苦労が生み出されてしまったのだろう。
「だから、元凶を仕留めれば良いと思った。けど、私には力が足りなかった。だから、あなたを利用させてもらうことにしたのよ」
「よく帰された者たちが言っていたの、只人、いや生物の中で最も強いあなたの情報を。私はそれを頼りに降りてきてあなたと出会った」
「あなたの目的はこの戦争を終わらせることか……」
「ええ。と、自己紹介がまだでしたね。私はルアン」
「ルアン……か。ルアン、俺と協力してくれないか」
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「イティラ、凄かったなあ。しっかりとお前の勇姿、観客席から見ていたよ」
会場から離れて、また学校祭を回っていた僕らにアデクが近付いてきた。
「そうか。ありがとう」
「さっきのイルビィだろ。あいつも強くなっていた、イティラもそれ以上に強くなっていた。凄いよなあ、強いやつらは」
俺はあまり強くないからなあ、と自虐を交えてそう褒めてくれた。
アデクの戦っている姿を僕は一度も見たことがなかった、というか付き纏ってきていたが俺はあまり彼のことを知らなかった。
何故そんな人間に彼は関わり続けていてくれたのか、疑問になった。
「何故、アデクは僕といつまでも関わろうとしていたの?」
気付いた時には疑問が口から飛び出していた。
「何故って、イティラが面白いからだよ。強き者に弱者は従う、それが俺の信念だ。そのつもりで俺はイティラに近付いた。
しかしな、と置いて
「イティラは想像以上に面白かったんだ。元々はビクビク周りを気にして生活していたお前が、イルビィに勝って自分の下手に出ようとしたやつらを突っぱねた。本当ならばそいつらの上に立って見下す選択肢もあったんだ、というか元々見下される側の人間であったらそうするのが普通だと俺は思う」
「そう、かな?」
僕はただイルビィから僕に移ろうとした彼らに失望していただけなんだけどなあ。
「ああ。だから面白いと思った。ずっと関わり続けたらどうなるのか気になった。イティラがどう成長していくのか気になった」
相手が気になって気になって仕方がないなんて、一種の恋の様な感覚かもな、と打ち明けた。
「そうだったのか。話してくれてありがとう、すっきりした」
「いいや、別にいいさ、こんなこと」
僕らは話が終わったから別れようとするとロニエが「あのっ」と言った。
「どうしたの?」
「相手が気になって仕方がなという気持ちはその……恋心によるものなん、ですか」
何故か少々顔を赤らめ、照れた様にそう言った。
「一般的にはそうなんじゃないかな、ねえ」
「俺もそうだと思うけど」
「えっと……じゃあ、その……」
ロニエの頭の中で何かが弾けた。少々だった赤さは真っ赤になり、アワアワとし出した。
「 」
ボソボソ、と何か言った後、えーーーーーーーーー、と言うロニエの声が学校中に響き渡った。
やっと気付いた本心。逆に知らなかった本心。




