救世主
今日も今日とて荒野を駆け抜け、困っている者たちを助けに行く。魔法をもらってから俺はやつらに無敗だ。助けられる人々も格段に増えた。
集団から外れた変わり者。(いや、やつらは基本群れないから真の者の方が正しいか?)を見つけるために辺りを見回していると
──俺は驚いた。今までのと常識が覆り、天と地がひっくり返ったような気分に襲われた。
「何故、あなたがここにいる!?」
「何故ねえ……。あなたには関係ないでしょう」
俺の目の前にはこの前斬り伏せたはずの幻惑使いの女性が前と同じ何もない荒野に立っていた。
「あなたたちは帰されたらここに来れないはずでは?」
そうでなければ、今まで倒したやつらがもう一度となく襲ってくることになってしまう。
「ええ、そうね。けど、私は帰されなかったみたい」
「帰されなかった……」
俺はしっかりと光となって消えるのを見た。なのに何故……。
「もういいでしょ。消えて」
俺は彼女から殺気を感じてバックステップをとった。
「っく」
バックステップの直前、浅くだが指先で胸を刺された。前と速さが段違いで目算を誤った。
(もし、毒やらの使い手だったら今ので終わりだっ。こんな油断することは今までなかったのに、やはり幻術の類か?)
女性がまた心臓を狙って迫ってくる。
俺はそれを今度は確実に避けて、また斬り伏せたのだった──。
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(何を見ているんだ私は。市民が危険に晒されている、イティラ君を止めにいかないと。けど……)
──彼に私やキョウカちゃんでは敵わない。
「……行こ」
袖口を引っ張られ横を向くとキョウカちゃんが青い目に強い意志を宿してこちらを見ている。
(そうだ。出来る、出来ないじゃない。やるしかないんだ)
「うん。絶対に止めよう」
私たちは会場に飛び降りた。イティラ君が意思もなく暴れるその場所へ。
アルス君がちょうど目を覚ました。彼の力も欲しい。
「アルス君、状況は掴めないだろうけど手伝って」
「は、はい。分かりました」
そう言って剣を構える彼の表情には幼さはなく、困っている人を助けようとする一人の剣士の顔だった。
私たちはイティラ君と対峙する。
イティラ君は私たちを敵と見做したようで。ゆっくりとこちらを向いた。
(なんて威圧感。手足がすくむ……)
二人も同じようで、剣を構えたまま固まってしまう。
イティラ君が突っ込んできた、そう思った時にはその剣が私の首筋に当たっていた。
しかし、薄皮一枚のところでその剣は止まっていた。また、あの時のように自我を取り戻してくれたのか、と思ったけどそうじゃなかった。
横から伸びた手がイティラ君の剣を掴み押さえていた。
「ふう、危ないところだったね」
手を伝って顔を見るとあの時、お化け屋敷にいたピエロの人だった。
「学校長!」
アルスがそう声を上げた。
「学校長……」
「如何にも私はこの魔剣士学校、学校長のローランド・ギルマさ。私が来たからには大丈夫だ、危ないから下がっていなさい」
ふざけた見た目に細く戦えるようには見えなかったが、その言葉には信用出来る重みがこもっていた。
しかし、見た目とは裏腹に腕が立つ、ということは一目で分かった。何よりの証拠にイティラ君の剣を素手で止めている。
「おねーちゃん、学校長なら大丈夫。離れよう」
私たちはギルマ学校長に任せて会場から離れた。その間、ギルマ学校長はイティラ君のことを見つめていた。
「卒業生だからって手加減はしないぜ。はああああああ」
剣ごとイティラ君を振り払うと着地の寸前に拳による連打を仕掛けた。イティラ君はそれを避けたり防いでいるように見えるが定かでない。
(この戦い、目が追いつけない)
前方で爆発するような衝撃があったかと思えば左斜め方向で地面が爆ぜて、元々グチャグチャであった地面が更に崩れていく。
この様子には流石に観客も普通でないと感じて避難を始めた。
それに安心して目線を戻すと
──一瞬見えたイティラ君の姿は傷一つなかった。
さて、どうなるでしょうか……。




