氷とかき氷
いくら引っ張っても千切れなかった鎖はパキンといい音を立てて蹴られた点から真っ二つになった。
「流石だな」
「まあな。ただ自分の鎖は自分で蹴れねえ、やってくれ」
「分かった」
俺は立てかけてあった剣の元に歩いて近づこうとするがうまく立てなかった。何度やっても足が震えて上手く立つことができない。
「お前でもそんなんになるんだな。肉体と魂を一致させろ、そうすれば立てる」
「そうか、しばらく使っていないから忘れていた」
俺は自分の内側に意識を向けた外側と内側を入れ替えるような感覚を強くしていく。
俺は目を開き、全身に力を込めると爆発的な力が全身を巡り完成する。
もう一度立ち上がってみると上手く出来た。
ふう、と俺が息をつくと
「やっぱり凄いなリオルトは。俺もリオルトがいない所でも使えたらいいのに」
「なあ、不思議だよな。何で暴走してしまうのか……」
「神のみぞ知るってか」
「やめてくれ、縁起でもない」
そう言いながら剣の効果で力が上がった俺は鎖を斬ってやると彼は直ぐに立ち上がった。得意顔を添えて。
『ローランド・ギルマ』
脱出の一歩手前の段階でそう呼びかける声がどこからか聞こえた。
「何だ!?」
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「って、その声は学校長。お久しぶりです」
ピエロメイクの細部が前とは違って分からなかった。細部が変わるだけでこんなにも印象が変わるものなのか。
「勇者学院では元気に……やっているようだね」
さっきまでロニエを抱えていたのを見ていたからなのかキョウカといるからなのか分からないが、学校長はそう結論づけた。
「はい、推薦のおかげです。ありがとうございます」
「いやいや、僕は前途のある若者の手助けをしたいだけさ。──それよりどうかな、肉体と魂の方は?」
後半は耳を寄せて小声でそう言ってきた。
「進んでいます……って口に出すのはいけないと仰っていませんでしたか」
「ああ。ただ私たちの仲だろ」
物凄い謎な理論な上にそこまで関わりがなかったはずだけど納得しておいた。
「学校長はどうしてここに?」
「演出さ。最後にこんなのが出てきたらもっと怖がらせられるだろう」
悪い笑みを浮かべてそう口にする学校長。
(学校の怖さを売りにしたお化け屋敷にピエロとは何とも不釣り合いな気がするけど……)
「それじゃあ、頑張ってください」
「ああ、いっぱい怖がらせるさ」
「では」
そう言って僕らが外に出ると
「あの、大丈夫ですか」
多くの好奇の目に晒された女生徒と彼女に心配されている蹲ったロニエがいた。
「その子、僕の友達だからあとは任せて」
女生徒とロニエの間に割って入り、顔を覗き込むと
──顔を耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしそうプルプルと震えていた。
「イ、イティラ君……助けて、ください」
僕は必死に助けを求めるロニエを顔が隠れるように上手く連れていき、話を聞いた。
「えっと、その……怖くてお化け屋敷を飛び出した後、泣いていたらどんどん視線が集まってしまって。あの女の子も体調が悪いのかと親身になってくれて。……怖くて泣いていただけなのに、恥ずかしくてそのまま立ち去れなくなってしまって」
──らしい。
「そっか、大変だったね」
僕がそのサラサラな髪を撫でると一瞬安心したような顔になった。が、すぐに手を振り払われた。
「元はと言えばイティラ君のせいですからね」
「あはは、ごめんごめん」
「……氷持って、きた。冷やして」
ロニエの話の間にかき氷屋に氷をもらいに行っていたキョウカが戻ってきた──片手にかき氷を持って。
「冷たっ」
目の腫れを防ぐために氷で冷やしているロニエの傍、キョウカがしゃくしゃくとかき氷を食べる。
(本当によく食べるなあ。もうすぐ全制覇じゃないか?)
目につく屋台の食べ物を片っ端から食べていくキョウカの手は止まらない。これだけ食べるのによくこんなに細い体型のままだな、と誰もが思うだろう。
(あっ、キーンってなってる)
キュッと目を瞑って、抑えることの出来ない痛みに抗いつつも氷の山を削り進めていく。
ロニエが冷やし終わると同時にキョウカも食べ終わった。
「さて、演劇を見に行こうか」
ロニエが冷やして、キョウカが食べている間にいい頃合いとなった。
演劇の後にアルスの発表だ。今年は何でも有りの試合をするらしい。
例年は剣舞など踊ったりするのが主だが今年は違う。前日に準備がなかったのも試合だったからだろう。
アルスがどんな戦いをするのかとても楽しみだが、演劇の方も楽しみだ。
「演劇の題目は……えーっと」
手元の案内を見るが見当たらない。流石にどこかに書いてあると思うが……。
「イティラ君の手の下ですよ」
「あっ」
灯台もと暮らしだったようだ。全然気づかなかった。
──全世界大戦と勇者の誕生。
次回、演劇。




