三人と訓練
(さて、一通り周辺の拳闘士は蹴散らしたしリオルトを手伝いに行くか)
俺、ローランド・ギルマは唯一の仲間であり友であるリオルトの元へ駆ける。
俺たちは魔法で互いの状態が常に分かるようになっている。リオルトが胸に剣を刺された時もそれで気付けた。
今もそれを頼りに向かっているが……っ!
(リオルトが気を失った……!?)
戦った様子がなかった。不意打ちでリオルトを気絶させただと。
あいつは自分に対する害意を即座に感じ取って防御が出来るから不意打ちに対して強いが……。
「これは急いで行かなければならない」
「その必要はありませんよ」
「んなっ」
いきなり目の前にピエロメイクの男が現れた。それだけならまだ良い。何より驚いたのはピエロの手にはリオルトが抱えられていた。
(転移魔法か……?しかし、魔力の動きを感じなかった。そうかこれでリオルトを)
目の前の男からは害意が感じられない、しかし確実にやり手の風格を纏っている。
「リオルトを返してくれないか?俺の仲間なんだ」
「残念ながらそれは出来ません。ただ、あなたも一緒に来てもらいます」
そう言ってリオルトを地面に置くと手を鳴らした。
パン、という音が響くと大量の短剣が空中に現れた。
「道化の名の下に決してあなたを飽きさせません」
短剣は縦横無尽に空中を駆け回る。
拳闘士にとって飛び道具は最悪だ。拳では剣ほど範囲が広くなく、撃ち落とせる数も少ない。
「『高速化』『魔纏い』」
──しかし、魔法があれば別だ。
魔法を行使して人知を超えた速度を得て、魔力を纏わせることで巨大化した拳。正面から、背後から、側面から飛来する短剣を確実に破壊する。
「面白いですねえ。これはどうですか」
そう言うと男は手を二回鳴らした。すると、空中の短剣は二倍、四倍と増えて辺りを覆い尽くす。
「ちっ、せいやあああ」
俺は地面を本気で殴ると地面は抉れ、強力な衝撃が発生した。
その衝撃波は俺を中心にして広がり、覆っていた短剣を破壊し尽くす。
「ふっ、こんな程度か」
所詮は不意打ちだけ得意な男だと俺はそう思っていた──。
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昔から孤児院の食糧取りはキョウカが手伝っていたらしい。木の実から獣の肉までを集めていたキョウカは木々を伝って移動したり、足場の悪いところでの戦いに慣れていたらしい。
故にキョウカの山への適性は凄まじいものだった。
「本当に、凄いです……キョウカちゃん」
はあ、はあとロニエは息を乱しながらそう言った。
「本当に凄いや」
僕も息を乱して地面に寝転がっていた。
事の発端はロニエがキョウカに合わせるという言葉だった。
まだ、キョウカが山に慣れているなんて知らなかった。
山に着くなり、いかにも慣れている動きでキョウカは移動していき、僕らは置いてかれた。
その速度に食らいつこうと頑張って結果がこれだ。更に、キョウカは全く息を切らしていない。
「……ありがとう?」
どう反応して良いか分からなくて困っている様子だ。
「キョウカはここで訓練する必要はないな」
あそこまで慣れているのなら普通の足場でやったって変わりはしない。
「そろそろ内容を変えよう」
キョウカが来た時から考えていた事だ。僕はずっと楽しみだった。
ということで来たのが稽古場。
「二人対一人ですか?」
「そう。ひたすら戦いに慣れようと思ってね」
戦場では必ず一対一であるわけでない。常に他方からの攻撃に反応出来るようになっていないといけない。
一人は強化魔法あり、二人は無し。その他は何でもありでの訓練だ。
「とりあえず僕が一人の方をやるよ」
「分かりました。それではいきますよ」
ロニエとキョウカが柄に手をかける。
僕は剣を抜いて
「四の塵──性質変化・剛」
「三の閃──爆雷刃」
ロニエはいつも通り迫りながら居合い斬りをしてくるが──
「速っ……ぐふ」
前よりも何倍も速度が上がった居合い切りを僕は避けることが出来ずに吹き飛んだ。
ロニエが本気で斬るつもりなら僕の首は飛んでいただろう。
「……油断。三の雪──狂雪月花」
背後から剣が迫ってくるような気配を感じ取り、正面に転がると直前まで僕がいた空間が斬り刻まれた。
「あっぶない」
「ふふふ、イティラ君と戦うと改めて自分の強化具合が分かりますね」
ロニエがそう言うとキョウカもこくりこくり、と頷いていた。
どうやら想像以上に大変な内容らしい。が、
「絶対に負けないよ」
楽しくて楽しくて仕方がない。
「こちらこそ。三の閃──爆雷刃」
「三の雪──狂雪月花」
「二の塵──身躱し連斬」
ロニエの居合い斬りを去なし、キョウカの連斬を弾く。
「今度はこっちからいく。一の閃──雷轟、五の塵──豪剣連斬」
接近して、僕は二人に連斬を仕掛けた──。
キョウカの成長も凄い。




