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聞き耳と白の空間

「なぜお前たちは人々や獣人、悪魔、魔族、あらゆる生きるものを煽り大戦を激しくするのだ」


目の前の男はにやっと笑ってそう言った。

「何故、か。ワタシたちは暇なんだ。この大戦はいい暇つぶしだ」


「俺たちの命はお前たちのためにあるんじゃない」


その言葉に首を振って

「いいや、ワタシたちのものなのだよ。絶対強者であるワタシたちにとってな」

自分よりも格下の相手の命を考えないのは、君たちも同じであろう、そう言うと剣を掲げて、振り下ろした。


その剣はどこにも当たっていなかったが、


──大地が割れていき、集落を襲わんとバキバキと音を立てて巨大な地割れが進んでいく。


「龍王ノ牙──穿」

地割れ先に回って、不可視の衝撃を剣技で抑えた。


「はああああああ」

敵ながらにして流石と言わざるを得ない。どんなものでも抉る俺の剣技が押し負けてしまっている。


「君ならそうすると思ったよ」

(まさ)しく神速で俺の背後に回り、その剣を俺の心臓目掛けて突き出した──。

─────────────────────────────────────


急いで浴室を出た僕は着替えを済ませて居間に向かうと


「レオン、イティラのあの戦う様子を見てどう思う」

中からお爺ちゃんの話し声が聞こえた。


普通に入ろうとしたが、普段は考えられない緊迫のしようであった。

そのため、僕は中に入らず戸にくっついて話を聞いた。


「あの様子は確実に──が────している」

父さんの声は小さく所々聞こえない。

もっと聞こえるようにしようとしても戸を開けたら気づかれてしまうと思う。


(けど、僕の様子がどうしたんだ?)


「昨年の今頃に言っていた『魂の転移』とやらが引き金か」


「多分な。あれからイティラの向上が著しい」

あたかも僕が強くなってはいけないように聞こえなくもない言いぶりであった。


(『魂の転移』もそうだけど、僕の知らないところで一体何が……)


「これからどうする」


「多分だが今のイティラにはもう────ないと思う。魔王撃退の件でやつらにも気付かれただろう」


(やつら?やつらって誰だ)


「イティラ君、どうしたんでっ、うむぐ」」

湯上がりで火照った顔と乾ききっていない髪によって一層と艶っぽくなったロニエがそう声を発しかけた。


僕は申し訳ないと思いつつその口を塞いで戸から離れた。


「んんぐぐ、あいをうるんえすか」

口を塞がれたままであったロニエはモゴモゴとそう言った。


「なんて言った?」

僕が手を離すと


「もう、突然何をするんですか」

腰に手を当てて、軽く怒ったようにそう言った。


「何か大切なことを話しているっぽくてね」

僕が居間に視線を飛ばすと


「なるほど、気づかなくてごめんなさい」


いいよ、と言うと


「何の話をしていらしたんですか」


「それがよく分からなかったんだ」


様子、引き金、やつら、これだけでは僕には推測の余地がない。


「今日はもう寝よう」

考えても分からないなら考えていても仕方がない。今日はもう諦めるしかない。


「分かりました。おやすみなさい」

長い電車の旅にお爺ちゃんとの稽古、山での一件、濃い一日に流石に疲れたのだろう。上品でありつつも大きな欠伸をした。


「うん、おやすみ」


ロニエと別れた後、僕は準備をして床に着いた。


(この布団で寝るのも随分久しぶりだな)

三ヶ月ぶりの自分の布団。父さんたちは僕がいない間も洗ったり日干しをしてくていて、布団の中はとても気持ちが良い。


横になって目を瞑っていると僕も一日の疲れが出たのか意識が直ぐに微睡んでいき……。

─────────────────────────────────────


目を開けると、僕の部屋とは明らかに違う視界の全てが真っ白な空間であった。


「んん、ここは」

どこか見覚えのあるような空間を見回していると


「起きたな」

背後から声がした。


「その声は生存本能か」

振り返ると全身真っ黒の獣がいた。


(前は焦っていて気づかなかったけど、目がくりっとしていて可愛らしいな)

最初に会った時は無理矢理、肉体の制御を奪われていたし、この前は脳内に会話してきたからじっと見るのは初めてで、そんなことを考えていると


「ああ。寝ているところ悪いが意識を引っ張らせてもらった」

どこか済まなそうにそう言った。


「いいや、別にいいよ。僕も謝りたかったし」

ヴェノム戦で任せると言われたのに魔王との戦いで死んでしまったことを謝る機会を欲していた。


「別に謝らなくていい。あれは別格だ」


「生存本能の目から見ても?」


「ああ、ワタシが肉体を動かしても勝てるか分からない」

悔しい事にな、と付け加えて吐き捨てるように言った。


「って言うことは僕の意識がないうちにあったっていうのも生存本能がやったんじゃないんだ」


「ああ。あれは未知だ。身体のどこに探りをいれてもそれらしきものが発見出来ない」


(逆にそんな事まで出来たんだ……)

生存本能の凄さが改めて実感出来る。


「ところでなんで僕をここに?」


「ああ、それだが。思った以上に肉体の消耗が激しい」


『魂の転移』についてであった。


どうやら、『魂の転移』を重ねるたびに肉体と魂の変換率が上がっているらしい。

その分、強化もされているけれど、転移に耐えられるのは以って五回程度であると。


「そう、か……」

僕は言葉を返せなかった。


確かに常人であればイルビィとの戦いの時点で僕の人生の幕は閉じていた。

しかし、生き永らえた人生だからしっかりと天寿を全うしたい。


「更に残念なことに、これからワタシが肉体の制御を行うのは難しい」

前回の介入が非常事態だったためにかなり無理矢理な方法で行ったらしい。だから、介入のための力が大幅に減少したと。

当然だ、本来肉体は一つの意識でしか動かせないものなのだから。


「そこでワタシがこの就寝時間中に稽古をつけることにした」


「就寝中に稽古!?」


「ただそれにも欠点がある。意識が休まらないから、ほぼ寝ていないのと同義になる、集中力の欠如が一番危ない」


「そうだね。けど稽古はつけてもらいたいから、おいおい決めていこう」


「ああ。っと、もう朝だ」


「ええ!もう」

まだ体感で一時間程度しか経っていなかった。


「伸ばそうと思えば伸ばせるが、余計な力を使いたくない」


「そっか、じゃあ」


「ああ。経路は開いておく。余裕がある時にここに来い」


「わかった」

その言葉を最後に白の空間は崩れていって──。

父さんたちは何を話していたんでしょうか……。

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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?

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