イティラとお爺ちゃん
「ちょっと頑張りすぎやしないか」
目の前の男はそう言って心配してくる。
「まだ、まだ足りない」
「かあ、お前のその皆のためにって精神は尊敬する」
手をヒラヒラとさせて俺には無理無理、と呆れたように言った。
「お前だってそうだろう」
「俺はあくまで自分が生き残るためだよ」
「そうか」
「死ぬんじゃねえぞ、リオルト」
俺は新たな発見情報の元へと駆け抜けた。
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ガンガンと日が差し、カラッとした風が吹くこの場、石材を軽く並べて作られた特訓場。
僕とお爺ちゃん、父さんにロニエの四人はに来ていた。
「さあ、やろう」
お爺ちゃんは剣を構えてそう言った。
「うん」
僕も剣を構えてお爺ちゃんの前に立った。
(やっぱりお爺ちゃんは凄いなあ)
お爺ちゃんから感じる威圧のようなものは今まで戦った人にはなかった。
「いくぞ、せやあ」
お爺ちゃんの剣は一撃で僕を仕留めるべく最短、最速の斬撃が僕を襲う。
前の僕では反応すら出来なかったが
「二の塵──身躱し連斬」
身体に当たる寸前で躱して反撃を仕掛ける。
「ふむ」
お爺ちゃんは僕の剣技を観察するようにして目を細めてバックステップで距離をとった。
(身体が軽い、『魂の転移』のお陰だろう。生存本能には怒られてしまうかもしれないけど)
ガミガミと言ってくる生存本能を想像しながら僕から攻める。
「三の塵──五月雨斬り、二連」
お爺ちゃんは今度はバックステップをせずに、僕の剣技を弾いてきた。
「なるほどな。確かに強くなったようだな、イティラ」
成長が嬉しいのか珍しく微笑んで僕を見つめてきた。
「ありがとう」
勇者学院に入学してからの成果を褒めてもらえて嬉しかった。
「けど、本気じゃないだろう。見せてみなさい、四の型を」
僕はふう、一息ついて
「四の塵──性質変化・剛」
瞬時、僕の身体から気体のようなものが溢れ出てきた。
「これは……気!」
僕も気が発生するようになった。それが嬉しかった。
「何をよそ見をしているんだ」
その声がした時には左肩にお爺ちゃんの足が突き刺さっていた。
僕は吹き飛ばされて地面をずった。
「いててて」
「今のが本当の戦いだったら死んでいたぞ」
「ごめんなさい」
気の発生の嬉しさにお爺ちゃんの気配から意識を外してしまった僕がいけない。
「受け止めてみろ、三の塵──五月雨斬り」
お爺ちゃんは剣技を放ってきた。
「塵山流──五月雨斬り」
魂と肉体の結び付きを意識してお爺ちゃんの剣技を弾くようにした。
しかし、この剣技を誰に教えてもらったのか僕は失念していた。
お爺ちゃんは四の方の強化なしがない状態で余裕で僕を上回り、正確な剣筋で僕の剣を弾き飛ばした。
「あっ」
剣が宙を舞う。
飛んで行った剣を見据えて、着地点に雷轟で先回りすると
「そうはさせないぞ」
お爺ちゃんは雷轟以上の速度で上回ってきて一閃した。
「成長したな、イティラ」
僕は薙ぎ払いが当たると同時にしゃがみ込んで剣を躱し低い体勢で腰を入れて内股蹴りを入れた。
突然の衝撃には流石に反応出来なかったらしく、お爺ちゃんは体勢を崩して後ろに倒れそうになっていた。
僕は飛び上がって剣を掴み上空から突き刺すようにして襲いかかった。
「しかし、まだ甘い」
「ごふあ」
突然の下方からの衝撃に耐えきれず僕は上空に吹き飛ばされた。
やがて、上昇が止まると重力に引かれて地面に向かって落ちていって
衝撃もなく、お爺ちゃんに受け止められた。
「強くなったが、まだ足りない」
「くうっ、まだまだかあ」
前よりもかなり強くなる事ができたと思ったけどまだまだであった。
「イティラ、覚えておけ。相手の隙は自分の隙だ」
「相手の隙は……自分の隙?」
「相手の隙に大きな攻撃を差し込もうとすると必ず自分にも隙が出来る」
正にさっきの僕、ということか。
「大丈夫ですか。イティラ君」
そう言ってロニエが駆け寄ってくる。
「凄かったですね、後ろに倒れたと思ったら後方転回で蹴り上げるなんて」
「本当に凄いな。もう歳なのにあんなに素早い身のこなしなんて」
前から鍛錬も見にくることはなかったし。父さんはお爺ちゃんが剣を振るう姿をあまり見たことがないのだと思う。
「毎日の農作業と鍛錬による成果だ」
お爺ちゃんはふん、と鼻を鳴らしてその場を離れようとする。
「お爺さん、私も稽古してもらえませんか」
すかさずロニエがそう言った。当然だろう、この家に来た目的はそれなんだから。
「ふむ。せっかく来たんだいいだろう」
お爺ちゃんは振り返って頷いた。
お爺ちゃん、強し。
もう十一月ですね……。




