全滅
取り囲むようにして張り巡らされた無数の針がロニエ達に飛来する。
──間に合わない
距離を取ってもらっていたのが逆に仇となった。雷轟をしようにも僕の到着より先に刺さる。
「さらばだ、邪魔な小娘達よ」
口角を上げて魔王がそう言った。
「やめろおおおお」
「『操氷』」
直後ロニエ達を守るように半球状の氷が張られた。
「随分と大変なことになっているな」
声の発生源にはアレンがいた。
氷の防壁はバリンと音を立てて無傷のロニエ達が出てきた。
「ありがとう」
「魔力が切れる寸前だからもうあんなことになるなよ」
「お前は……デストロイとファントムをやってくれたやつか」
魔王はキッと睨んで
「邪魔をしやがって」
「イティラ、詳しい状況は」
「こいつは魔王。物凄く強い」
「了解」
僕の端的な言葉で全てを理解したようで格上との戦いに闘志を煮えたぎらせている。
「イティラ、二人でかかるぞ。ロニエ、キョウカ、俺たちに強化魔法をかけろ」
「あっ、はい。『筋力増強』」
「……。『鋭敏化』」
ロニエの魔法が発動すると僕の力が感覚的に強くなったような気がした。
「いくぞ、イティラ。四の翼──武神解放」
「うん。三の塵──五月雨斬り」
さっきよりも強くなった脚力で瞬時に接近して連斬を放つ。
「まだまだだな」
片手で捌かれてしまう。
「二の翼──真空斬」
魔王はアレンの横薙ぎ払いを飛び上がって避けて
そのまま空中で顔面に向かって蹴りを放った。
「ちいっ」
数瞬のところで腕が間に合って防御しているが体重をかけられる魔王の方が有利である。
「一の閃──雷轟、一の塵──六切り」
僕は魔王の背後に飛び上がって
(これは入る)
斬撃を無防備なその身体に放った。
「っなあ」
魔王は空中で蹴りを放っていたのに振り返ってこちらに蹴りを放ってきたではないか。
「まさか九位階が飛べて俺が飛べないと思ったか」
「ぐう、があ、ぎいあ、ぐふ」
強力な蹴りをもらった僕は立ち並ぶ木々に衝突しながら飛ばされた。
「ぜえはあ、ぜは。『超回復』」
どこかの骨がいかれてしまったようだけど治して
「一の閃──雷轟」
「何度やっても同じだ……ッ」
僕は剣を鞘に収めて魔王にしがみついた。
「いいぞ、イティラ。二の翼──真空斬」
振りかぶって放たれたその斬撃は
初めて魔王を傷付けた。
「はあっ」
最初の時と同じく魔力の波動で吹き飛ばそうとしてくるが耐え抜いた。
「アレン、もっと」
「小賢しい。『針山』」
「三の翼──暴衝打ち」
空中の針は瞬く間に打ち落とされる。
「『魔獣』」
所々から魔獣が湧き出てきた。
「でかい」
ファントムが生み出していたのとは比べ物にならないほど大きかった。
魔獣狩りのために仕方なく魔王から離れようとすると
「そう易々と逃すわけがないだろ」
離れようとした僕の鳩尾に肘打ちが入ってしまった。
「ぐうううううう……」
膝をついた所は魔獣の正面。獣人型魔獣はその大きな手に握った剣を振り下ろしてッ。
キイーン。今日のうちで何度目か分からない死を覚悟したがロニエが守ってくれた。
「魔獣はお任せください」
正面の魔獣を片付けて違う方に移動していった。
「僕もやらないと」
「イティラ、避けろ」
振り向くとさっきよりも明らかに近い距離にいる魔王の手には禍々しい気を放つ剣があり、振られていた。
「二の塵──身躱し連斬」
その剣を去なしながら連斬を仕掛けようとすると僕の剣に気がくっついていた。
魔王の身体に剣が当たったはずなのに手応えなく滑るようだった。
「驚いたか、これでその剣は使えなくなった」
どれだけ振っても剥がれなく、僕にはこの魔法を解除出来る魔法がない。攻撃魔法もない。僕は完全に打つ手がなくなった。
「どうすれば……」
アレンも魔力がないから創れない。
(攻撃が出来ない完全なお荷物になってしまった)
「ほら、いくぜ」
そう言うと魔王はアレンの五の翼のように縦横無尽に剣を振ってくる。
(何とか避けてはいるが、剣で去なせないからやりずらい)
徐々に僕の傷は増えていく。
「イティラ、引け。二の翼──真空斬」
アレンは魔王の背後を完全にとって一閃をくらわせ
──られなかった。
「ぐう、くっ」
魔王はアレンの首を締め上げた。
魔王の表情は無であった。殺しを躊躇わないもののそれ。
「ぐあはっ、ぐう」
「一の閃──雷轟」
「一の閃──雷轟」
僕とロニエは同時に飛び出して一方は斬りかかり、一方は蹴りかかった。
それに魔王はアレンを投げ捨てて手際よく同時に僕らの首を掴んだ。
「別にそいつはどうだっていいんだよ、俺の目的はお前達だ」
自分から寄ってきてくれてどうも、とギチギチと首を締め上げられる。
「あがっ、くがあ、あっつ」
「くっ、ぐきゃああ」
隣でロニエの身体が脱力した。
「ぐうう、てめ、え」
「この娘は死んだ、お前も死ぬ」
そう言うと魔王の握力が増し、潰された。
僕は落ちる意識の中、
魔王がキョウカにも手を伸ばし首を締め上げて投げ捨てるのを見た。
アレンが肩に担がれて運ばれていくのを見た。
首を砕かれて地面に伏せた僕は見ていることしか出来なかった。
──嗚呼、なんて僕は非力なんだ。
最大の危機。




