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イティラとヴェノム

─────────────────────────────────────


「『猛毒液』」

さっきよりも多量の紫色でボコボコと音を立てている液体が僕を飲み込むように襲いかかってきた。


明らかに触れてはマズイと直感して

「一の閃──雷轟」

ヴェノムに背を向けて液体から逃げるように離れた。


「『毒弾』」

離れたのも束の間、紫色の弾が高速で飛んできた。


「はっ」

何とか見切って当たらないように避けて打ち落とす。


「何だこれは」

ヴェノムに攻撃するために接近しようと床を見るとそこは溶けていた。



「ワタシの魔法は毒だ。当たれば溶ける。それよりもイティラの反応速度は素晴らしい」

回復魔法といい、失うのが勿体ない、と呟いた。


(廊下の石材を溶かすほどの毒。当たれば絶対に無事じゃ免れない)


「『猛毒液』」

丈夫そうな石材すら溶かす毒液が襲いかかってくる。


「一の閃──雷轟」

僕は毒液が降りかかるよりも早くヴェノムの背後に移動して

「三の塵──五月雨斬り」

十五連斬を仕掛けた。


ヴェノムは僕の攻撃に反応しきって、棒で全てを去なしてきて、更に棒を振り抜いてきた。


明らかに当たったらまずそうな雰囲気がした為、バックステップで大きく避けると

「『毒弾』」

ヴェノムがこちらに棒を向けた直後、さっきよりも格段に多くの毒の弾が飛んでくる。


(これはやばい。避けきれない)

弾は左右に避けさせないと面のようの襲ってくる。


僕は出来るだけ広範囲を薙ぐように剣を振ったが

「ぐっ、ぐああああああ」

肩や腿に当たってしまった。当たってしまった痛みはそこまでなかった。


しかし、弾が僕の肉体に突き刺さった後、今まで感じたことのないような痛みが身体中を駆け抜けた。

痛みで剣を持つことすらもままならなかった。


「イティラ、終わりだ。『猛毒液』」


毒液に飲み込まれる、と思い恐怖が身体を支配した。痛みで剣を持てず、恐怖で足が動かなかった。


誰が見ても絶体絶命な状況、イティラの死が確定していた。


「なんだと」

ヴェノムはそう声を溢した。


多量の毒液は真ん中から裂けるようにして割れた。割れた間には剣を振り抜いた後のイティラが立っている。


(何が起こった!?)

イティラ自身も何が起こったのか理解が出来ていなかった。


『強くなったがまだ足りない。しかし、頑張りは認める。よく頑張った』

聞き覚えのある声が脳内に響いた。


『今回はワタシに任せろ』

その声を最後に僕の身体は動き出した。


「『毒弾』」

廊下を埋め尽くす程、多量の毒の弾の全てが僕に向かって飛んでくる。

しかし、僕の身体は勝手に飛んでくる弾の全てを打ち落とした。


「驚いた。どんな魔法を使っているんだい」

未知なるものを見るように目を見張ってこちらを見ている。


「さあ、僕にも分かりません」


「そうか、あくまで秘密ということか。本当にここで失うには勿体ない」

心底落ち込んでいるようだ。


(どうして今回は完全に乗っ取らないんだ)

僕は動かそうと思えば自分の身体を動かせる。


『自分で言ったことを実現して見せたからだ。ワタシはこれほどの事を実現させた宿主に任せてもいいと判断した』


しかし、と置いて

『今回の敵は別格だ。どう足掻いても宿主には無理だ』


少しでも当たれば身体が溶ける毒液と当たると激痛で身体が動かなくなる毒の弾。今の僕の力では毒液を割けないし、弾を打ち落とすことが出来ない。

その判断は僕も同じであった。


僕の身体は僕の意識が付いていかないほどの速度でヴェノムに接近して斬りかかる。


「くっ」

間一髪のところで防がれてしまったがそれも見越したように連携が繋げられた。


「『猛毒液』」

一撃を入れるために踏み込んだ僕の身体はヴェノムの直近にあった。

発現した毒液が身体に当たらないように裂きつつヴェノムの身体に刃を通す。


「ぐっ。『毒弾』」

さっきのように攻撃準備をしていなかった僕の身体は無防備であり、弾が身体の彼方此方に刺さってしまった。


「よし、やっと動きを止めることがっ……」


僕の身体は動いていた。僕の身体には痛みがなかった。

──何故なら、生存本能による魔法の同時並行によって弾をくらった次の瞬間には癒えていた。


魔法の同時並行。つまり、僕の身体が癒えると同時に剣を振り抜いていた。

その剣は確実にヴェノムの肩口から腰までを捉えた。


「ぐふっ、ごほ……。イティ……」

ヴェノムは何かを言いかけて倒れた。倒れた彼の身体はキラキラと輝き始めて、やがて消えていった。


(倒したのか)


『魔力の残滓も確認されない。確実に消滅した』


(そっか。ありがとう、また助けてもらった)


「前にも言ったが、礼を言われる必要はない。ワタシはこの肉体を守っただけだ』

そう言い終わると彼の感覚がすうっと消えていった。


感覚が消え終わると僕は力が抜けて尻餅をついてしまった。

生存本能が肉体を限界以上に酷使した結果だろう。


(もっと鍛えて、強くならなくちゃな)

まだ、剣技はオワリノ型を習得できていないし、本当の肉体と魂の一致も出来ない。

今回は生存本能がいなかったらどうなっていたか分からない。


(毒液で溶かされていたら『魂の転移』すら使えなかったのでは……)

本当の死、今の僕には未知のものであり、だからこそ怖い。


「あれ、イティラじゃないか」

遠くから声が聞こえる。


そちらの方を向くとアレンを抱えた学院長が小走りで来た。


「やっぱりイティラか。大丈夫か……って床、どうした」

毒液はあくまで割いただけであるから僕が浴びなかった分は全て床に掛かり溶かしていた。


「これは……痛って。毒か」

学院長が残っていた毒液に触れて手の皮膚を少し溶かした


「イティラも戦ったみたいだな」

学院長から離れたアレンがそう言ってきた。


「うん。アレンも無事で良かった、ってなのその火傷」


「ちょっとな」


「ちょっとじゃないでしょ。『超回復』」

僕が魔法を行使するとアレンの火傷は消えていった。


「ありがとうな」


「どういたしまして。じゃあ、ロニエ達の方に行こう」

僕らは闘技場の方に向かうとしても学院長が動かなかった。


「この石材、結構高かったんだけどなあ。ちくしょう、魔王めえ」

体全体から怨みが溢れ出していた。


「ほら、行きますよ、学院長」

僕は学院長を引っ張って廊下を歩いた。

お爺ちゃんのくれた特別な剣は鎔けなかった。

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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?

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