迫り来る危機
'僕'らは学院長が窓から飛び出していったのを見送ると
「大丈夫でしょうか」
ロニエが心配をしている。
「学院長なら平気だよ。とんでもなく強いのは見てきたでしょ」
「そうですね」
そうして話をしていると嫌な予感が全身を覆った。
「ウィグル君、障壁を張って」
『魔障壁』の魔導書を選んだ同級生に急いで指示を出すと
「わ、分かった。『魔障壁』」
一瞬困惑した様だったが僕の必死さを感じて急いで魔法を発現させると教室を囲むように障壁が張られた。
直後、物凄い音と共に教室全体が爆ぜた。
「ぐおおおおお」
ウィグル君が障壁を破られないように気合を入れて魔力を注ぎ込んでいると次第に爆炎が消えていった。
(何だ今の威力は。イルビィのものより範囲が広く強く激しい)
爆破によって屋根が壊され、壁も半分が吹き飛んでしまった。
上空から何かが飛来してくる。
「今のに対応するとは良い判断力だな」
紫の髪に黒づくめの服装の男だった。
「あなた、いやお前は誰だ」
「私は九位階の三、冠された名は『デストロイ』だ」
「デストロイ、お前達の目的は」
「目的な、ここは次世代の勇者を育てるところだろう。だから将来有望な芽を摘みに来た」
(どうする、どうすればいいんだ)
この事態に対処する為に頭を回していると肩を叩かれる。
「イティラ、あいつは俺が相手をする。その内に皆んなを連れて行け」
「でも……」
「大丈夫だ。俺の方が強い」
任せてもいいのか、と考えるが
「分かった、頼むよ。皆んな付いてきて」
アレンの腕を信用して僕は皆んなを連れて教室から出た。
「楽しませてくれよ、デストロイ」
廊下までそのアレンらしい声が響いた。
「アレンなら大丈夫、アレンなら大丈夫」
半ば暗示をかける様にそう繰り返していると
「イティラ君、落ち着いてください」
ロニエにそう声を掛けられてはっとした。
(あんなに不安そうだったロニエにそんな事を言わせてしまうなんて)
「そうだね、ごめん」
「いえいえ。それよりこの後はどうしましょう」
「南は学院長が戦っている、となると西か東」
「じゃあ、闘技場の方に向かいましょう」
僕らは駆けて駆けて駆けていく。やがて人影が見えてきた。
先生だろうか、そう思うとその人は突然液状の魔法を使ってきた。
「避けて」
僕のその声に反応して回避をしたが一人当たってしまった。
「くっ、ぐうう」
僕は駆け寄ると当たってしまった生徒の皮膚が爛れ、当たった箇所を押さえてひどく苦しんでいた。
「『超回復』」
僕が魔法を使うと忽ち爛れた皮膚は癒えていった。
「ありがとう」
若干涙を浮かべている彼に感謝を言われて無事を確認したところで前方の人を確認する。
「良い魔法だな。けど計画の邪魔になるから排除させてもらうよ」
そう言うとその人は超速で接近してきて剣を振り抜いた。
回復させた子は突き飛ばして、僕はバックステップをした。
「ロニエ、僕の代わりに皆んなを連れて闘技場へ」
「分かりました。気をつけて」
突き飛ばした子を含めてしっかりと離れていった。
男はその様子を見ていた。
「追いかけていかないのか」
「後でいいよ。君の方が彼女らよりも断然強い」
そう言うと男は服装を正して
「自己紹介をしよう、ワタシは九位階の四、名は『ヴェノム』。短い間だけどよろしく」
見た目はデストロイと同じ黒い服を着たに白髪の青年であった。
「イティラ・グラムだ」
「イティラ、君は何故生きるものは争いを起こすと思うかい」
僕の目を見てゆっくりとそう聞いてきた。
「お前達が争いを起こしたのにそんな事を聞くのか」
「ふむ、確かにそうだね。けどこれは目的もなく始められたものじゃない」
ヴェノムは一呼吸置いて
「これは復讐さ」
「復讐……?学院長──勇者に対してか」
「いいや、そうであってそうじゃない。魔王様が復讐したいのはこの世に生きる全ての生き物に対してさ」
手を広げて魔王の行いを崇拝するように言って
「全大陸戦争を知っているね」
「ああ」
全大陸戦争──まだこうして各大陸が一つの国家として決まる前に全ての種族が領土を増やす為に凄惨な戦いを繰り広げたと伝えられている大戦争だ。
「あの戦いには魔族も参加していた」
しかし、置いて
「ワタシ達魔族は圧倒的な力の差を感じて降伏をした」
「それなのに、多種族は我々に攻撃をやめなかった。それによって魔族は滅んでしまった」
──魔王様を除いて
クラスの二つの最強格がいなくなった。ロニエ達は大丈夫でしょうか。




