学院長と二、八、九
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魔王捜索班から話を聞いて戻ってきた学院長はその内容を全学院生徒に向けて話した。
──今回確認されたのは九位階のうち二位から九位。一位は魔王に同行していると予測されている。
九位階の目的は不明だがそれぞれが空中にとどまって、まるで'何か'を観察するかの様に。地上を見下ろしていたそうだ。
『いつ何があるか分からない、一旦集中強化はやめにする』
この前に侵入者のイルビィによって危うく生徒に被害が出るところだったのだから、個々に分かれていていては襲撃の危険性も高まってしまうから当然の処置だと思う。
『そして万が一、九位階あるいは魔王と遭遇してしまった場合、全力を持って討伐にかかるんだ』
『魔王らは飛行が出来る。単に駆けて離れるだけではあっという間に追いつかれてしまう』
その言葉が学院内の生徒に不安が募るが
『この学院で育まれた君たちの力ならば何とか届くかもしれない』
生徒の心の中に勇気が流し込まれ、
『そして、本当に駄目な時にはオレの名を叫べ、すぐに駆けつける』
その力強い言葉によって不安が消し去られた。
『話は以上だ。自分の命を守るために最善を尽くしてくれ』
魔王、九位階、一体どれ程の強さなのだろうか。単体ではそこまで強くないと学院長は言っていたが本当だろうか。
仮にも約五十年はこの大陸を支配していた魔族だ。この学院の生徒以上に強い戦士は沢山いたはずだけど……。
「この前も思ったけど、学院長は弁が立つよな」
「アレンも僕らの力じゃ届かないと思う?」
「ああ、イティラとかいう化け物でもない限りは個人で撃破はきついと思うぞ」
アレンは揶揄うように言った。
「化け物って……。僕が化け物ならアレンも化け物だよ」
「はは、そうかもな」
「それにしても大丈夫でしょうか」
ロニエが不安そうに言う。
「冗談抜きでイティラ君やアレン君なら十分戦えると思いますが、私は……」
「確かにな。けどよ、強化期間中にロニエ、何をしていたか覚えてないのか?」
「覚えてますよ。キョウカちゃんと前にイティラ君と戦った先輩方の様に連携を練習していました。」
「それだ。個々の力で届かなくても協力すれば何とかなるはずだ」
「そうでしょうか……」
「そうさ」
背後から急に声が聞こえて振り向くと学院長がいた。
「力を合わせる、なんていい響きなんだ」
「学院長……大丈夫でしょうか」
いつもの堂々とした様子とは打って変わって不安げに言う。
「ああ、大丈夫さ。それにオレがいる」
全生徒に告げた時と同じように頼もしく告げた。
何というかいつもよりも格好良く見えた。元々外見は整っているのだけれど。
「学院長は一回やり合ったことがあるんだろ。正直いってどうなんだ」
アレンは声を小さくしてそう聞いた
「アレンの見立て通りだよ。苦戦はするだろうけどイティラや君は個人で張り合える。ロニエとキョウカは二人がかりでなら一体は相手に出来る」
「ということは他の生徒は」
学院長はアレンの口の前に人差し指を立てて
「それ以上は駄目だ。言葉にするとそれが現実になることが多い」
「まあ大丈夫だ。九位階全てが襲ってくるわけでもないだろうし、学院中の防犯魔法は強化してあ……」
学院長がそこまで言いかけた時、ピピピピピピと音が鳴った。
「嘘だろっ」
いつもの見ているとどこか安心できる表情は消え、度肝を抜かれたようにしていた。
「学院長、今の音は」
「学院の最も内側の防犯結界が壊された。奴ら、結界魔法を弄れるようになっていたとは……」
学院長がそう言うと
学院の南から衝撃音が聞こえてきた。
「噂をすればってやつか……ふざけろ。襲撃者は少ないと思う、オレが向こうを対処してくるから何かあったら頼んだ」
学院長はそう言って窓から外に出ていった。
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(学院の生徒の命は絶対に奪わせない)
'オレ'は音のする方へ駆けた。
到着すると
「おいおい、マジかよ」
九位階の二、八、九位が生徒達に向けて魔法を放っていた。幸いにも怪我人はないようだが。
オレは生徒達と九位階の間に入るようにして、魔法を全て斬った。
「来たか、勇者」
九位階二位がオレに気付きさもオレが来る事を分かっていたかのようにそう言った。
「目的はなんだ」
「いいだろ目的なんて。八年ぶりだ、再会を楽しもうぜぇ」
ニヤリと顔を歪めて余裕な態度でそう言った。
「楽しむわけがないだろう。三の型──急襲」
二の死角に回り込み斬り落とす。
「おっと、危ない危ない」
最大限の速さで行ったはずなのに二は反応して防御をした。
(何!?八年前は反応も出来ず倒れたのだが)
「驚いているなあ、実は魔王様以外は先に復活していたんだよ。その間血も滲み、精神は狂いかけ、廃人となるような特訓を積んでいたんだよ」
ありゃあ大変だった、と苦労を吐き出すように言うとイティラ達がいる方の校舎が爆ぜた。
「お、向こうもやり始めたか」
(これはまずい、イティラ達予想以上に敵は強いぞ)
「それに俺しか見ていないようだが後の二人も忘れてやんなよ」
そう言うとオレの左右から魔法付与を行った剣がオレに襲いかかってくる。
オレはそれらを弾いて
「生徒達、ここは危険になるから離れろ」
その指示に素直に従ってくれてほんの十数秒でオレと九位階の三人だけとなった。
「自分の心配よりも教え子の心配ってか、泣けるねえ」
「心配はしているがそうじゃない。オレが本当の力を出して戦うためさ、辺りを巻き込んでしまうからな」
「勇者の本当の力ねえ。見せてみろよ、どうせ俺が勝つんだし」
くっくっくと笑ってそう言った。
オレは久しぶりの感覚に身を任せて
「四の型──星神憑依」
我流の四の型を使った。
瞬時、オレの身体から大量の光が発せられた。
「これはやばい。八、九やるぞ」
「『獄絶一覇球』」
「……」
二は他の二体に指示を出して三体でオレに向かって魔法や剣で斬りかかってくるが
「オワリノ型──無限星斬」
オレの意思でしか止まない無限の斬撃が三体を滅さんとするが如く襲いかかっていって──。
予想以上に強かろうが圧勝する勇者。




