情報と成果
「イティラは立派だよ」
四の型に慣れるために学院長と剣を交えていると不意にそんなことを言われた。
「前にああやって生徒の精神を追い詰めて鍛錬した時は習得までに一ヶ月も掛かったのに」
昔を懐かしむ様にそう言った。
「あの精神状態で一ヶ月もいられたその人十分凄いと思いますが」
「まあ、そうだな。無理矢理過ぎたせいでしばらく避けられてたっけなあ」
「あの時の学院長は怖かったですし」
今でもあの言葉の数々やこの身に刻まれた斬撃を忘れられない。
「どうしても剣士を育てるとなると力が入り過ぎてしまってなあ」
そう言ってはははと笑った。
「はははじゃないですよ」
僕はもしかしたら人が死んでしまうほど恐ろしい鍛錬と今の調子を比べて呆れた。
「ああやってやる相手は選んでいるから大丈夫だよ。僕は耐えられると思った人にしかやらない」
さっきとは打って変わって真面目な調子でそう言って
僕は教育者だからね。生徒の安全が第一さ、と付け加えた。
「学院長は急に真面目になったりしますよね」
単純に疑問だった。
「オレは元々真面目じゃないからな。学院長であり教育者という立場上、真面目にならなくちゃいけない時もあるって事だ」
「社会って大変ですね」
「オレはそこまでじゃないけどな。本当に大変な人はごまんといる」
「学院長、お話が」
女性の先生が近付いてきて言った。
「見つかったか」
「魔王は見つかっていませんが、九位階が上空にいたとの情報を得ました」
「九位階か……。やつらも復活したのか」
「九位階ってなんですか」
「九位階は魔王の配下の中で最も強く魔王に最大の忠誠を尽くしている九名の総称だ」
「そんな者たちがいるのですか」
「ああ、何故魔王が大陸全土を支配出来ていたのか知っているか」
「いいえ」
魔王に関しては魔剣士学校では習わなかった。
「なぜ魔王が支配を続けてこれたのか、それは数だ」
「数……」
「魔王は自らの魔力によって魔獣や魔族を生み出すことが出来る。その生み出した魔族達が全土に広がって支配をしていた」
「その中九人が九位階って事ですね」
「そうだ。だから、魔王単体はそこまで強くない。万が一遭遇してしまったら命を奪っても構わない」
「命を奪ってもですか」
「ああ、奴は何人もの人を殺害している、やつの凶行を阻止するにはそうするしかない」
(普段おちゃらけていても根は正義感で溢れている人なんだよな)
「まあ、ただ単に討伐するだけだと復活してしまうらしいけどな」
「そうですね」
「オレは詳しい話を聞いてくるから今日はアレンとでもやっててくれ」
「はい。アレンよろしく」
「その言葉を待っていた」
「では学院長」
学院長はああ、と言って女性の先生に付いていった。
「じゃあイティラ、最初から飛ばす。四の翼──武神解放」
本人の努力とこの鍛錬の日々によって彼から発せられる気が多く濃くなっている。
「四の塵──性質変化・剛」
『塵山流』は軽い斬撃を速く浴びせる事で相手を倒す流派であるが、四の型はその一撃一撃を重くする。
それ故に今までよりも一振りをしっかり振らないとかえって弱くなってしまう、と気づいた。
「一の翼──三段袈裟斬り、二連」
「一の塵──八切り」
だから、アレンの強力な斬撃を真っ向から弾いて彼に迫る。
アレンは僕が剣を振り抜くと同時に視界から消えた。学院長から技術を見て盗んだのだろう。
「ニの翼──真空斬」
彼は背後から現れて強大な一撃を振り抜いてくるが
連日、学院長と鍛錬をした僕は気配で位置を感じ取れるようになっていた。
「二の塵──身躱し連斬」
「うっそだろ」
彼の一撃を去なして斬撃を浴びせる。
「イティラ、強くなりすぎだろ」
心底楽しそうな表情を浮かべてそう言った。
「ありがとう。アレンも今の動き、学院長のでしょ」
「ああ。オレもただイティラに学院長を譲っていたわけじゃないんだ」
「そうみたいだね」
「それじゃあ、いくぜ」
アレンが一気に距離を詰めて斬りかかってくる。
「ああ」
僕は彼の剣を弾いて反撃を仕掛けて、彼はそれを見切って剣技を放つ。
僕らは斬って斬られて去なして、時に避ける。その繰り返しが、そして痛みすらも楽しんでいた。
見て覚えられられるのは才能の塊。




