宣言
僕らはロニエの気を鎮めて服屋の外に出た。
「ロニエの服もとっても良かったんだよ」
「つーん」
ロニエの気は鎮まったがこんな状態になってしまっていた。
「どうしたら……」
僕がロニエの機嫌を取り戻す方法を考えていると周囲が暗くなった。
そして都市の中央の空に人の形が描かれていき黒服の男が映し出された。
その男は動きだして話し始めた。
「私は魔王ゾルーティンだ。勇者に滅ぼされし私は死の淵より復活した」
その声を聞いた周囲の人がざわつき始めた。
「復活した私はこれより再びこの大陸の支配を開始する」
そういうと魔王の姿が消えていった。
「魔王ってあの魔王ですよね」
「勇者に倒された魔王、って言っていたからそうなんだと思う」
魔王ゾルーティン、全大陸戦争の後からこのメリカ大陸を支配していた魔族。
勇者──学院長が撃破したことによってこの大陸を救った。
復活……。『魂の転移』かあの女性のどちらかが関わっているのだろうか。
「詳しい話は学院で聞こう」
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僕が教室に入るとその中は生徒で一杯で大荒れであった。
「魔王の復活ってどういうことですか」
「勿論、学院長がすぐさま討伐なされるのでしょうね」
「魔王の支配なんて嫌ですよ」
等々の声が所々から上がっていた。
「ちょっと待て、ちょっと待て。この後、音声拡張魔法で放送するから」
いくら学院長でもこの騒ぎは大変そうだった。
そして、学院長の対応によって騒ぎは止んだ。
「ああ、疲れた」
学院長はそう言葉を溢して教室を離れた。
『えー、これから今回の魔王復活についての話をする』
『魔王復活は誰も推測することが出来なかった。だから、復活は仕方がないというわけにはいかない。しっかりとオレが討伐する。』
確固たる意思を持ってそう断言した。
『しかし、肝心な魔王の居場所が突き止められていない。そちらが見つかるまでの間、君たちには集中鍛錬を行ってもらおうと思う』
『座学は無しにして、これから毎日が鍛錬だ。君たちはこの学院の生徒である以上次代の勇者候補達だ。魔王を討伐出来る素質はある、その素質を名目一杯引き出す』
『この学院だけでなく、メリカ大陸全土の危機だ。皆で力を合わせてこの危機を乗り越えよう』
そう言ったのが最後に音声拡張魔法は途切れた。
「これから集中強化期間だとよ」
そうだね、と僕は返しつつアレンの方を向く。
(集中強化、この機会に肉体の制御と塵山流の四の型を習得しよう)
「それよりも学院長も弁が立つよな、次世代の勇者だなんて」
「元々、それが目的で開かれた学院だからね」
僕らや同級生達が端々で話をしていると
扉が開き
「話は聞いたな、訓練場に移動だ」
そう言いながら学院長が教室に入ってきた。
「全校生徒が訓練場に集まると流石に鍛錬どころではなくなりませんか」
真面目な生徒──ルークソン君がそう声を上げると
「大丈夫だ、外部から敷地を借りて各クラスを散らす。訓練場はオレが担任ということでこのクラスが使うことになった」
その話が終わると僕らは闘技場へ向かった。
「イティラ君、一緒に鍛錬しませんか」
ロニエが近づいてきてそう提案した。
「ごめん、学院長に手合わせしてもらおうと思っているんだ」
「そうですか……」
ロニエはしゅん、としてしまった。
「放課後にやろうよ」
僕が急いで取り繕うと
「はい、楽しみにしています」
機嫌を直してくれた。
(そういえばロニエ、あの休日から落ち込んだり、元に戻ったり感情の起伏が大きくなっているかも)
訓練場に着き、僕は学院長の元に進む。
「学院長、鍛錬していただけますか」
「勿論だ。アレンはよく来るけどイティラは初めてだな」
僕は放課後はロニエ達と鍛錬をしていたから、学院長にこうして申し込むのは初めてだ。
「あの、入学試験からどれくらい強くなっているのか確かめさせてもらおう」
如何にもワクワクとした表情で僕と向き合う。
「肉体をもっと扱えるようになってと剣技の習得を行いたいのですが」
「分かった。イティラは塵山流か。それならオレでも教えられるぞ」
「本当ですか」
「ああ。昨年に生徒に教えるために勉強して出来るようになった。流石に他の流派は無理だったけど」
塵山流はアレンの虎翼流と違って最も習得しやすく、教えやすい流派と言われている。それ故に学院長も教えることが出来ようになったのだと思う。
「肉体の扱い方はオレとやりながら慣れていけ、剣技はその後だ」
「はい」
「まずは手始め、二の型──無双十段」
一振りで十回斬る学院長だけの剣技が僕に向かって襲いかかってくる。
「一の塵──八切り、二連」
それを弾くために今の僕の最速の剣技を繰り出して──。
話が始まった当初から静かだった魔王が今、動き出す。




