暴走と謎の空間
立ち上がったイティラ君は男の人の方に向かってフラフラと歩いて行った。
「あの魔法を直で受けて生きていられるとは驚きだなあ。
まあそんなボロボロで何が出来るのか楽しまさせてもらおうか」
イティラ君をあんな状態にしたのは男の人らしい。
しかし、言っていることは確かだ。
あんなにボロボロじゃ流石のイティラ君でも何もできないはず、そう思った私は男の人に雷轟で接近しようとすると
「えっ」
イティラ君の身体の傷がなくなっていた。
イティラ君の魔法は強力でどんな傷でも治すことが出来る。けど、一瞬で治すことは出来なかったはず。
(何が起きているの)
傷が治ったにも関わらず彼はフラフラと歩いていく。
「イティラ、しっかりしないと死ぬぞぉ」
男の人はニヤニヤとして
「『星如魔弾』」
魔法が行使されて魔力の塊がイティラ君の周りに展開される。
危ない、と思った直後周りの魔弾が消えていた。
正確には跡形もなく斬り刻まれていた。
そしてイティラ君もいなくなっていた。
「イティラ〜、逃げたのかぁ。流石は落ちこぼっ……ぐは」
イティラ君を煽るように叫んでいた男の人の胸に大きな斬傷が出来た。
「ぐら゛あ゛あ゛あ゛」
イティラ君が現れたと思ったら彼は高速で男の人を斬りつけ始めた。
「落ちこぼれがぁ…生意気な。五の翼──神如翔崩剣」
イティラ君の高速の連斬を高速の連斬で弾こうとするも
イティラ君の方が何倍も速かった。
しかしイティラ君は男の人を斬りつけることしかせず防御を捨てていた。
男の人の斬撃がイティラ君を斬り裂く。
しかし、次の瞬間にはその傷はなかったかのようになくなっていた。
時間が経つにつれて
イティラ君は無傷であるが男の人は傷が増えていった。
「お前みたいな落ちこぼれに…負けるわけには」
傷が増えてなお執念で戦っているように見えた。
「『爆殺』」
男の人がそう言うとイティラ君の周辺が物凄い勢いで爆ぜた。
「イティラ君!」
離れていてもあの魔法は命をなくす威力であることが分かる。
イティラ君が死んでしまったのではないか、と思ったら自然と声が出ていた。
土煙が晴れるとそこにはさっきと変わらない状態のイティラ君が立っていた。
「何!?俺の魔法を無傷で……」
男の人が驚愕で動きが止まった瞬間
「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ」
イティラ君は吠えながら斬りかかった
「ぐふ、があああああ」
男の人は斬り刻まれていく、多くの血を噴き出しながら。
「イティラ君、そろそろやめて!その人死んじゃうよ」
私がそう叫んでも彼は剣を振るのをやめてくれない。
「イティラ君!イティラ君!」
私は雷轟で接近した。
彼は振り向くと剣を私の方に振ってきた。
私はそれを受け止めるも力が強すぎて身体ごと吹き飛ばされてしまった。
「イティラ君」
彼はまた男の人を斬りつけ始めた。
私は何度も接近して、何度も吹っ飛ばされた。
しかし彼は自制するかのように追撃をしてくることはなかった。
そうして十数回の接近を重ねた頃
とうとう私は彼の強力な斬撃で胴を大きく斬られてしまった。
「きゃあ……イティラ君」
私は痛みで涙が出て、傷からは大量の血が出ていても構わず彼に近づいた。
彼はまた剣を振ってきたが私に当たる直前でその動きが止まった。
「イティラ……君?」
─────────────────────────────────────
僕は僕を呼ぶ声がして目を覚ますとそこは魔導書内のような真っ白な空間であった。
「ここは……」
辺りには誰もいない。
突如、空間に映像が現れた。
それは僕がロニエを斬りかかっているところであった。
「駄目だ」
僕は叫び、手を伸ばすものの僕はロニエに斬りかかるのを止められなかった。
幸いにもロニエは受け止めてくれたが彼女を吹き飛ばしてしまった。
「くっ、どうすれば」
僕は僕を自制する力を強めてこの真っ白い空間を探し回った。
「何か、何かないのか」
どれだけ探しても何もない空間。どれだけ走っても終わりのない空間。
自分の身体を止めるための方法を探し始めてしばらくが経った頃
──真っ白な空間に外の映像を見つめる真っ黒な獣がいた。
その獣はこちらに顔を向けて
「何の用だ、肉体の所有者よ」
そう言って鼻を鳴らした。
イティラの中の喋る獣の正体とは……。




