魂の世界と試練
目を覚ますと目の前に影と傷だらけの僕が転がっていた。
「また、死んでしまったの」
背後から声が聞こえたが、この声には聞き覚えがあった。
「お久しぶりです」
振り返ると前と同じような格好の女性がいた。
「ええ、久しぶり。元気にしてた?」
「お陰で無事に生きています」
「それは良かった、ってあなた死んだのだけれど」
にこやかな顔になったと思いきや、困った顔でそう言った。
「はは、そうですね」
「死んだっていうのに随分と穏やかね」
「ええ、あなたがいますから」
「今回は私、あなたを回復しないわよ」
きょとんとした顔でそう言った。
「え……あなたに回復していただけないと僕は『魂の転移』を使えないのですが」
驚いてそう言うと
「何も私だけが回復させられるわけじゃないでしょ。
何のためにあなたは己と戦ったの」
「えっと、『超回復』を習得するために魔導書を開いて……。
そうか、自分で回復が出来る」
「その通りよ」
分からない問題が解けた子供に向ける様な顔で僕を見た。
「けど、あなたが使えるのは『超回復』の力の一端。
回復しきるまで時間がかかるから、その間話でもしましょう」
「はい」
そう言って僕は身体に魔力を流していく。
「まずは魂と肉体の結び付きについて話しましょう。
どこまで分かったって聞きたい所だけどお爺さんに殆ど聞いたものね」
「ご存知でしたか」
「ええ、もちろん」
女性は胸を張って答えた。
「僕から質問なんですが、この魂の世界から干渉できるのはこういった回復魔法だけなのですか」
「いいえ、攻撃魔法でも干渉できるわ。けれど、回復魔法と同様に恐ろしいほどの魔力が食われるけどね」
「ということは、ここからの魔法攻撃で死んでしまうということもあるんですか」
恐ろしくなってそう聞くと
「ええ、普通にあり得るわね」
同然の様に言った。
「けど、急に魔法が飛んできたなんて話、聞いたことありませんが」
疑問に思ったことが言葉に出てしまった。
「だから言ったでしょう、ここで魔法を使うには魔力が沢山必要だって。常人では発動できずに終わるのよ」
ちょっと怒ったかの様に言った。
「そうです……か。っと、終わりました」
身体を回復し終えた。
「よく出来ました。それじゃあお別れね」
「そうですね。また会える日まで」
この女性と話すのは非常に楽しいからそう言ったが
「って、何また死ぬ発言しているのよ」
目を細めてそう言われると
「確かに可笑しいですね。はは」
この女性は楽しいだけじゃなくて、落ち着いた気分になる。
また会いたいなって思う。
「それじゃあ、行きます。ありがとうございました。
『魂の転移』」
落ちていく意識の中、女性は
「次死んでしまっても私、魂の世界にいないからね。
私と会うには壁を取り払う、この事を覚えていてね」
その言葉を最後に意識が完全に落ちていった。
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目を覚ますと目の前には影だけがいた。
「汝の意識の回復を確認。汝に問う。
その限定的な力を持ち帰るか、また我と戦い完全な力を習得するか」
影の問いに対して僕は
「勿論、全ての力を吸収させてもらう」
「剣を構えよ」
両者剣を構え、互いに見合う。
今回先に動いたのは僕だった。
「一の塵──六切り」
影は僕の速さにギリギリ対応して去なしてくる。
しかし──
「三の塵──五月雨斬り、二連」
さっきよりも桁違いに速くなった三十の連斬に対応することが出来なかった。
切り離された多くの影が身体に流れ込んでくる。
影は初めよりも薄くなっていた。
「あと少し、ふっ」
影が斬りかかってくるも半身で避けて
「一の塵──六切り」
六つの斬撃が全て影に当たる。
「三の塵──五月雨斬り、五連」
影は最後の力を振り絞ったのか今まで以上に速く、重い剣技を重ねてきた。
それを去なし、避けを繰り返していると影の動きが鈍くなっていく。
どうやら影にも疲れがあるらしい。
そしてその隙に
「三の塵──五月雨斬り」
研ぎ澄まされた十五の連斬が影の腕、足、肩、胴、様々な部位を切り刻んでいく。
最後の一撃が影に当たると影は弾けて、全てが僕の中に入ってきた。
そして無機質な空間にヒビが入り砕けていった。
「汝、試練を突破せし者。祝福と共に『超回復』を授ける。よくぞ成し遂げた」
影の声を聞き、目を開けるとみんながいる訓練場であった。
『超回復』習得完了




