魔導書と力
バトル・ロアイヤルの翌日、僕たちは席に着いて学院長を待っていた。
教室の扉が開き、学院長が入室すると
「やあみんな、おはよう。昨夜の疲れは取れたかい」
いい笑顔で言った。
「「「「はい」」」」
「そうかそうか、元気は良いことだ。
さていきなりだが、昨日の賞品を渡そう」
「「「「待ってました」」」」
そういうとキラキラした顔をした。
「あ、そうそう。魔導書は使わずに待っていてくれ」
思い出したかの様に言った。
「何故でしょうか」
真面目そうな生徒がそう聞くと
「習得したらすぐに使いたいだろ」
ふっ、といい笑顔をして言った。
「それじゃあまず、一位から三位まで出てきてくれ」
みんなの拍手が響く。
「イティラ、どれがいい」
数多くの上級魔導書を教卓の上に広げて言った。
筋力増強、魔力強化、精神統一、神速、意識分割、武装破壊、洗脳、超弱化、蒼白焔舞……超回復。
僕は超回復に目を付けた。
超回復さえあれば、もし死んでしまっても魂の転移が使えると思った。
「おお、イティラは『超回復』に興味があるか。
それは恐ろしいほどの魔力が必要だけど、イティラの魔力量なら使えるな」
よく考えてその人に合っているか考えてくれるみたいだ。
「攻撃魔法でも良い気がするけど、まあイティラがそれが良いならそれにしな」
よく考えてくれるが最終判断は本人次第らしい。
「はい、これにします」
魔導書を持って席に行く。
「次、ロニエ」
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基礎体力、基礎魔法についての授業が終わると
「よし、みんな魔導書を持って訓練場に行くぞ」
学院長はそう言って僕らを導いた。
「ここが訓練場だ」
闘技場から観客席を取っ払った様な見た目で、人の形を模した藁人形などがある。
「魔導書を使用次第、好きにしてくれて構わない。
同級生同士で戦ったり、藁人形に打っても訓練の仕方はそれぞれだ」
それぞれが魔導書を開くと
辺りが光で埋め尽くされた。
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「汝、新たな力を欲する者」
目を覚ますと真っ白な無機質の空間で目の前には僕と同じ背丈の影がいた。
「あなたは」
「我は汝。新たな力を欲するならば自らを超えろ」
そう言って剣を構えてくる。
「分かりました」
僕も剣を構えて互いに見合う。
先に動いたのは影だった。
「三の塵──五月雨斬り」
僕は躱そうをするも
「速い」
十五の内、十をモロにくらってしまった。
「ぐっ。一の塵──六切り」
五月雨斬りの後は多少の硬直が起こってしまうが影はそんなものはないかの様に蹴りをしてくる。
「が、ふ……」
強い、強すぎる。
「あ、あなたは僕なんですよね。なのに何故あなたは僕よりもそんなに強いのですか」
僕が問いかけると影は動きを止める。
「我は力を得た後の汝だ。力を欲するならば自らを超えろ」
そう言って斬りかかってくる。
魂と肉体の結び付きを意識して、
「一の塵──六切り」
影の攻撃を跳ね飛ばし、二撃を入れることが出来た。
しかし、斬られた衝撃をものともせず
「三の塵──五月雨斬り」
「っ、三の塵──五月雨斬り」
影の十五の連斬に対して十五で返す。
影の十五の連斬を去なし躱しを繰り返して影の最後の一撃に
「二の塵──身躱し連斬」
綺麗に反撃が出来た。
そうすると、切り離された影が身体が入り込んできた。
「何だこれは」
「それが力の素だ。我を斬り、力を吸収せよ」
そこからの影の攻撃は熾烈を極めた。
僕が一斬りすると影は二撃。
僕が六斬りすると影は十二連撃。
合を重ねるにつれて僕の身体はどんどん傷ついていった。
しかし、傷ついた箇所を触れるとその傷はたちまち癒えた。これが回復の力らしい。
「三の塵──五月雨斬り、二連」
僕はいつしか剣技を繋げることが出来る様になった。
しかし、戦闘中に魔力を使うという慣れないことを続けたせいで集中が一瞬切れてしまった。
「三の塵──五月雨斬り、三連」
僕の剣技の終わりに影の剣技を合わせられて、僕は四十五の連撃を全て身体に受けてしまった。
そして──
僕は命を落としてしまった。
アレンは『意識分割』、ロニエは『筋力増強』を選択しました。
彼らは影に勝てるのでしょうか。




