作戦と陣地
『一種目目が終わったからといって今日が終わるわけではございません。続いての種目は陣地取りです。ルールは至って簡単、各所に設置されている『スポット』にこれから配られる球を設置することで陣地を獲得して、その面積が広い学院が勝利です』
──スポットに入れられた球は角形の頂点となり、頂点と頂点を結んだ時にその線の内側にある部分が陣地となる。敵の球を取り外すことは可能で、攻撃、妨害なんでもあり。とにかく、陣地の面積を広くしろとのことだ。
「要はあれだろ、端のスポットとその真反対あたりにあるスポットを取れば良いんだろ」
「それは違うのかもしれない」
「と言うと?」
「この試合は攻めもそうだけど、守りが重要だ。時間切れの時にはめられたスポットが頂点になるんだから、闇雲に遠い所に入れて敵に取り出されてしまっては意味がない。俺は近場のところから徐々に攻めていくべきだと思う」
セキグ先輩が先導を切って話を進めるが、一つ気になる点がある。
「近場のところから徐々に攻めた時、場合によっては面積が狭くなる時があるかもしれないと思います」
「ふむ、説明してくれ」
僕は地面に書き込んで良いか悩みながらも図を書き進めていく。
「この場合、スポットの位置は綺麗な正六角形の頂点の位置にあります。しかし──」
僕は正六角形の中に一点打ち込む。
「この場合、スポットの数はさっきよりも多いですが面積は狭まります。つまり、近場からどんどん入れていくというのも場合によっては悪手になります」
「なるほどな……。そうなると地図が必要だな。どうやって作ろうか」
(制限時間的に最初からスポットを狙って回らなくても余裕がある。先に地図作りをしてしまうべきだと思うが……)
とそこまで考えた所でキョウカに肩を叩かれた。
「どうしたの?」
「……私の魔法で空に飛んで描く」
「そうか、それなら」
『空気昇り』で上空から全体図を描ければ割とすぐに完成する。しかも、隠密と合わせれば見つかる心配もほとんどない。
「俺もそれで良いと思う。あと、懸念点があるとすれば──」
皆んなで頭を突き合わせてこうして作戦を練ったり、議論したりがとても楽しい。勇者学院だから出来たことだろう。何故なら──
「「なんで負けんだよ、お前たち!」」
──翔剣学院と虎翼学院。
「裏切るのはもっと後だって話をしただろうが、なんで突っ走ったんだよ」
──魔導学院。
「あれは仕方がなかったよ。また次頑張ろう」
──大魔法学院。
基本的にどこの学院の生徒も次の種目そっちのけで学院長に怒られていた。もうそれは散々に、見ていて可哀想なくらい怒られていた。
そんなこんなで時間となり、僕らは開始位置についた。
「まずは頼んだぞ」
「……ん」
「分かっている」
開幕の鐘が鳴り響くと同時にキョウカは二年のペイン先輩に『隠密』をかけて、『空気昇り』を行使して上空に飛ばした。
何故、キョウカ自身が飛んでいかなかったのかそれは──
「『鷹の目』」
一つはペイン先輩が美術部に所属していて、特に模写が得意としていること。それによって、より分かりやすい地図が出来るはずという予測。もう一つが今の魔法『鷹の目』による遠方まではっきりと見えること。
付近の警戒を続けて五分もすると上空から一枚の紙が落ちてきた。それにはスポットの位置、地形などが詳しく描かれている。
「よし、まずは作戦通り。キョウカ、もう良いよ」
キョウカに先輩の隠密を解除させて、代わりに僕らにかけてもらう。
「次の作戦に移るぞ。A隊は捜索を頼んだぞ」
「はい!」
作戦はこうだ。
──僕らは『隠密』によって大魔法学院の『隠密』を行使している者を探し出す。この種目は隠密が非常に強力な手となる。時間切れ直前までスポットの近くに潜まれて、球を出されてしまったら負ける。誰一人として見逃してはならない重要な役割だ。
セキグ先輩達は狙いのスポットへの球の嵌め込みと防衛だ。その中にはキョウカも含まれていて拘束と突破の両方を務めるそうだ。
そしてもう一つが空中に残った先輩とウィグル君だ。先輩には敵生徒の位置等の確認、ウィグル君は『魔障壁』によって無防備な先輩を守る役割がある。この種目において'目'は大事な役割を持つのは言わずもがなだろう。どこのスポットが確保されたのか、また手を組もうとしている学院はいるのか、全体を俯瞰して情報を伝えてもらう。
『A隊、嵌めた球が不自然に外れた。第三スポットの周辺に隠密あり』
早速、ペイン先輩から情報が来た。『鷹の目』があるからこそ気付けたこと、やはりペイン先輩を残して良かった。
第三に近付くとさっきの小さな少年が見張りの目の前を堂々と歩いて去る姿を捉えた。
(よし、使用魔力量はこちらが勝っている)
見張りがあんなに目の前を通っている少年を見逃すのは可笑しい。また隠密を使っている証拠だ。
僕はそろりと近付いて背後から鞘で少年の首を叩きつけた。狙い通り気絶すると同時に隠密が解けたのだろう、見張りが気づいたら。
「大魔法学院の生徒です。捕縛して見張っていてください」
僕の姿は彼らに見えていないが、声を聞いて理解してくれたのだろう。僕は球をスポットに戻して隊に戻った。
「お見事です、イティラ君」
一部始終を見ていたロニエや先輩達が軽く手を叩いて称賛してくれる。
「あれは向こうが気づいていなかったからね。それに僕だって気配を薄くして動くのは割と得意な方だから」
「まあ。君、私には敵わないけどね」
次の目的地に向かって走り出そうとしたときその声と共に脳天に殴られた様な激しい痛みが走った。
作戦は上手く行くのでしょうか。




