学院対抗戦と二人のかませ
「大丈夫ですか」
僕は敵生徒を蹴飛ばして手を差し伸べるが、助けた女生徒は蹲ってビクビクとしている。まるで僕のことが見えていないようだ……ってあ。
「キョウカ、『隠密』を解除していいよ」
「……ん」
隠密が解けて、身体中に魔力が纏っているような感覚がなくなった。それと同時に女生徒は驚いて
「イティラさん……」
僕に抱きついてきた。
「もう大丈夫です。安心してください」
背中をぽんぽんと叩き、赤子を安心させるように擦る。女の子の柔肌が僕の思考を奪うが、視界の端に映るロニエがそれを止めてくれた。
「本当にイティラは、どうしてこう……」
「遅れてすみません。大魔法学院の生徒に手間取ってしまって」
「いや、十分で落とし切ったのは素直に凄い。今回の相手は魔導学院と翔剣学院の二校を相手にする。存分に活躍してくれよ、お前達が要なんだから」
「はい!」
周辺一帯で三校が混じり、斬り合う状態が広がっていり、側からは強力な魔法が飛んでくる。
魔法は翔剣学院の生徒ごと吹き飛ばし、あちこちから「何が起きている」「約束はどうした」との声が響く。
「すみませんねぇ。あなた達を囮に使った方が楽に仕留められるんですよ」
だぼついた黒い外套を風にはためかせた、如何にも魔導師というなりの男がそう言った。
それに対して翔剣学院生が更に怒号を上げる。
「ノミがいくら騒ごうと結果は同じ。我々、魔導士の前に屈服するしかないのですよ。『爆裂』付与『泥岩』付与『雷電』」
三つの魔法を束ねた攻撃は勇者学院と翔剣学院の生徒を吹き飛ばしていく。
「ははははは、そうです、そうです。鳴きなさい、呻きなさい、苦しみなさい。ノミはノミらしくさっさと散って仕舞いなさい」
男の気分が上がれば上がるほど魔法の威力がどんどんと跳ね上がっている。
(あの男、強い。なんて魔法力が高いんだ!)
あの男が複数の付与を行えるのは魔法の質の高さと技術の高さ故だ。顔までは見えていなかったから気付かなかったが、始まる前に見た質の高い魔力は彼のものだ。
才能に加えて努力して強さを手に入れたのであろう彼は魔導師版のアレンだ。ただ、彼との決定的な違いは性根がねじ曲がっている。
恐らく彼が魔導師をこの上なく偉いと思い、剣士を見下す理由は剣士では魔導師を攻撃出来ないからだ。剣士は接近しなければ相手を倒せないのに対して、魔導師はどれだけ離れていようとも技術があれば撃破可能で、両者が戦った場合勝つのは魔導師だ。
しかし、それは戦場や広い空間においての話だ。間が五メートルやそこらしか空いていないのであれば──
──僕は一瞬で詰めることが出来る。
「五の塵──豪剣連斬」
「うぉおおお!?」
魔法で反応速度を上げているのか杖で僕の剣技を正面から受け止めてきた。が、圧倒的に筋力が足りない。
僕が剣を振り切ると男は高速で吹き飛んでいき、やがて場外に落ちた。
(このまま──)
僕は雷轟で距離を詰めて、推進力を乗せた飛び蹴り、後ろ回し蹴り、中断蹴りで他の生徒を反撃の隙なく吹き飛ばして場外の数を増やし、場内の数を減らした。
その姿を見て志気を取り戻したのか、先輩達が暴れ出す。さっきまでやられていた鬱憤ばらしだろう。
ロアイヤル開始前のよりも格段に激しい魔法戦、いや蹂躙が始まった。
「『強化讃歌』」
レミリー先輩の強化魔法によって勇者学院生全体が強化されて、総火力がとてつもないことになっていた。
それを物語るようにあんなに不利な状況だった勇者学院しか岩場には残っていなかった。
「ふう、後は虎翼学院だけか。まあ、イティラがいれば余裕だな」
「いやいや、そんなことは。みんなの力の勝利ですよ」
「そうか?まあ、イティラの功績を分けてくれるなら素直にもらっておこう。はっはっは」
勇者学院は完全に勝利の雰囲気に飲まれていた。それ故に気づけなかったのだ──
「わりぃが勝利は俺たちが頂くぜ」
敵が眼前まで迫ってきていることに。
「「「「「三の翼──暴衝打ち」」」」」
僕らを取り囲んで放たれた剣技は反応出来なかった殆どの生徒を巻き込んで上空に叩き上げた。
「へへ、大分吹き飛んじまったみてぇだなあ。それだけで勝てんのか」
剣技を避けれたのは一年は僕ら四人、二年はセキグ先輩達五人、三年は見たことがない先輩二人の十一人しか残っていなかった。対する虎翼学院の生徒は二百人以上。
──数の差は圧倒的だった
「大丈夫かな、これ……」
「ああ、大丈夫さ。俺たちならいける。レミリー、追加の頼んだ」
「『強化讃歌』」
魔力を纏い性質を得たレミリー先輩の歌が僕らの身体能力を底上げする。
「俺たちは真ん中。イティラ達は左、先輩方は右からお願いします」
そう言って真っ先に突っ込んでいったセキグ先輩。多分彼も戦闘狂なのだろう。
「まずは俺が暴衝打ちをするぜ」
そう言って地面に剣を叩きつけるアレン。それに対して──
「なっ!?」
虎翼学院の生徒は一糸乱れぬ動きで連携して同じく暴衝打ちを放ち、アレンのを打ち消した。
それだけに留まらず、衝撃波はアレン襲いかかる。
僕は雷轟で駆けて彼を回収しながら、近場にいたのを蹴り飛ばした。
「ありがとうな」
「感謝はいらないよ、僕らは仲間だからね。それよりも、強いね彼ら」
「ああ。ワクワクするぜ」
「とりあえず数を減らそう。キョウカ!」
僕がお願いをする前にキョウカは空に飛び上がっていて準備が完了していた。
「『飛翔斬』付与『麻痺』」
集団で動く虎翼学院生を一網打尽にする。
そして、キョウカがいるのは上空。お得意の暴衝打ちも彼女に届きはしない。
撃ち漏らした生徒は僕らが正面突破する。キョウカを狙って飛び上がろうとする者はその前に撃ち落とす。
飛翔斬は先輩達の方にも及んだ結果、二十倍以上も数の差があったのにも関わらずほんの僅かな時間で虎翼学院を撃破した。
『勇者学院、圧倒的な強さ!!!本日、彼らの勢いを止められる学院は果たしているのでしょうか』
司会の進行と観客席の歓声が響き、最初の種目は盛大に勝利を収めた。
集団戦闘においてキョウカが強すぎる。




