表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男運のない私、だと思っていたけど……?!  作者: 山之上 舞花
佐野樹里亜は男運が悪い?
4/49

4 慰められると……泣きたくなる

 ケラケラと笑いながら私はそう言った。主任は作っていたカクテルのグラスを渡してきた。


 アイスワインを飲み終わったあと、何故かバイオレットフィズだとか、カルーアだとか、カクテル用の割るだけのお酒をテーブルに並べた主任。


 ぱちくりと瞬きをすれば「貰いものが溜まっているんだ。酒は腐るものではないけど、よかったらこれも飲まないか」と言われた。そう言われれば、もう少し飲みたい気分だった私は素直に頷いた。


「佐野の見る目がないんじゃなくて、男共が見る目がなかったんだよ」

「慰め、おつです。でも、身の程は分かってますから」


 明るくそう言って笑ったけど、フッと明日からのことを考えたら気持ちが沈んでしまった。


「どうかしたのか、佐野」

「あー、いえいえ。なんでもありません。それより、トイレを借りていいですか」

「ああ。場所わかるか」

「大体マンションの作りなんて同じでしょ」

「と云いながら、探索でもする気か」

「わかりました?」


 おどけてそう言って立ち上がる。「そこを出て右側二つ目の扉」と言われ「探索できないじゃないですかー」と言いながら、リビングから出た。


 そして、トイレに入って座り……。

 いつも思うけど、トイレってどうしてこう落ち着くんだろう。やはり洋式になって座ることが出来るのが大きいのかなと、思考を明後日のほうへと向けた。


 でもいつまでも座り込んでいるわけにはいかないから、立ち上がってトイレから出た。


 こっそり斜め向かいのドアを開けて覗いてみたら、そこはハンガーがいっぱいある、衣裳部屋みたいな部屋だった。よくわからいけど、主任は服をかなり持っているみたい。一部屋が埋まるくらい置いてあったから。


 というか、主任って彼女がいるんだろうか?


 いや、あの素敵な主任に彼女が居ないわけがない。結婚しているとは聞いていないけど……。

 でも、この部屋に女物の服はなかったし……。


 って、何を考えているのよ、私。


 扉を閉めて歩き出したら、リビングの扉があいてドキリとした。


「洗面所はそこな」


 主任はトイレ側のリビングに近い扉を指さしてそう言った。私は笑って「わかりました」といい、洗面所の扉を開けた。案の定隣は浴室となっている。洗面台の隣の洗濯機を見て、主任が自分で洗濯をするのかと思ったら、なんか不思議な気分になった。


 手を洗いリビングに戻ると入れ違いに主任が出て行った。「着替えてくる」と言って。私がギャン泣きからやけ酒モードに入ったため、主任は着替えも出来なかったようだ。自宅なのに(くつろ)げなくしてしまったことは、反省しよう。


 改めてリビング内を見回して(洗練されたという言葉が似あう家具たちだ)時計に目を止めた。主任に会ったのは八時半くらいだった……はず。今は十時四十分。かれこれ二時間近くも私の愚痴に付き合わせたわけだ。


 それに明日も平日で仕事がある。そろそろ家に帰らないと、明日に響くだろう。


 ◇


 主任が戻ってきたので、帰ることを伝えたのに、何故か帰ることが出来ない。

 というか、この体勢はどう考えればいい?


 リビングの扉のところで顔を合わせたら、私がバッグを持っていることに気がついた主任に、バッグを取り上げられて壁際に追い詰められました。


 そうなんです。顔の両脇に腕を突かれた、壁ドンからの囲い込み状態に陥ってます。


「そのまま帰ろうなんて甘いんだよ。さっき何を考えたんだ」

「いえ、大したことではないですから」


 顔を横に向けて視線を逸らしたけど、顎に手がかかり強引に主任と目を合わせさせられる。


「目を逸らすということは、嫌なことを考えたんだろう。もしくはその可能性を思いついたかだ。違うか」


 強引な態度なのに、その眼には心配そうな光を見つけてしまい、つい言いたくなかった気持ちが口をついて出た。


「だって……明日会社に行ったら、磯貝さんに会うじゃない。彼女たち(・・・・)のことだから、私から伊崎を奪ったことを言いふらすに決まっているわ。心変わりをしたのは向こうなのに、なんで私のほうが惨めな思いをしなきゃいけないの」


 その言葉と共にポロリと涙が零れ落ちた。不意に頭の後ろと背中に手があたったと思ったら、主任に抱きしめられた。


「佐野、悪かった。だから、泣くな」


 そう言われて、逆に涙がもっと溢れてきた。さっきの涙は……悔しさが大半だった。私の誕生日なのにという、惨めさもあった。


 今の涙は完全に惨めさからだ。これから私は『浮気をされた女』と周りから後ろ指をさされるのだろう。

 私が悪いわけではないのに、なんでそう言われなければならないのだろうか。


 今までの彼氏たちと別れたあと、私が悪いもしくは悪くなくても魅力がない女だと、噂されてきたのだ。そういう積み重ねが、今になってどっと出てきたのだろう。だから、余計に涙が出てくるのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] だーれだ企画のその先を読めてうれしいです! 主任の壁ドン……!からの囲い込み……!からのハグ……! ドキドキ展開に目が離せませんっ>< [一言] 続きお待ちしてます♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ