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男運のない私、だと思っていたけど……?!  作者: 山之上 舞花
佐野樹里亜は男運が悪い?
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28 結論! 信頼できない相手と恋愛なんてできないでしょう

 融からの突然の姉弟じゃない発言に首を捻ってしまう。それでも十三年間、姉弟として暮らしてきたのだ。仲の良さには自信がある。それなら姉弟じゃない発言には何か意味があるのだろう。


 そんなことを考えていたら、私の様子を見ていた融に深々とため息を吐かれてしまった。


「わかっていたけど、あれだけアピールしていたのに、気づいてくれもしないのはどうなんだろう」


 独り言にしては少し大きい声で言っている。何か返事をした方がいいのかと口を開こうとしたら、その前に融が話題を変えてきた。


「ところで、樹里亜はこれからどうするの」


 これからという言い方に戸惑ってしまう。


「えーと、ゆ……藤川さんとのこと?」

「そう。誤解があるって言っていたのなら、もう一度話し合うんでしょ」


 融の言葉にすぐに返事が出来なかった。融は私の様子を見ていて、何かに気がついたのか、軽く目を見開いた。


「もしかして、話し合う気が無くなったとか?」

「まあ、端的に言えばそうかな」

「どうして?」


 問い掛けられて、う~んと呻った。まだ、明確な言葉になってないんだよね。

 そう融に言うと、考えながらでいいから聞かせてと、言われた。


「えーとね、昨日のことが、思った以上にショックだった……んだと思うの。ほら、八年前に一緒に働いて私の仕事ぶりをわかってくれていたと思っていたのよ。だけど……あの女の言葉を信じたでしょう。つまりね、もともと信頼されてなかったんだなー、って、実感しちゃったのね。それなら……今回のことも話して協力を頼まなかったのも、頷けるかなーとも思ったの。わかったし、わかるんだけど……なんか、虚しくなっちゃって。今更話し合ったとしても、私が藤川さんを信頼することが出来ない気がするし。……その、まだ好きだけど、でも信頼関係がない人と恋愛を、ましてや結婚して家庭を築くなんて、無理かなーって。……うん。そう思っちゃったんだよね」


 ぽつぽつと言葉を探しながら話していく。言葉にすることで、昨夜の不快感の理由がはっきりした。


 私は信頼されていないと判ったことで、ゆ……藤川さんのことを信頼することが出来なくなってしまったんだ、と。


「わかったよ。樹里亜が決めたのなら、それでいいと思う。それじゃあ次だけど、会社はどうするの」

「そうねえ、月曜まで休むことを了承しちゃったからな~。とりあえず、部屋で引きこもってようかな」

「樹里亜が部屋に引きこもることはないよ。というより、引きこもる理由はないよね。それならいっそ家に戻らない?」


 融の提案に数度瞬きをして考える。

 言われてみれば私がここに引きこもる必要はない……よね。

 それに……磯貝ちゃんについた嘘は祖父の具合が悪くて実家に戻った、だった。

 そうよ。実家に帰るのは嘘を真にすることなんだから、悪いことじゃない。


 思案を終えて融へと目を向ければ、それだけで融は解ってくれたようだ。にっこりと笑うと言ったもの。


「それじゃあすぐに帰ろうか。何も持たなくていいからね。……って、そういうわけにはいかないか。樹里亜の部屋に寄ってから行こうか」


 融と共に部屋を出て五階の私の部屋へと向かう。少し危惧したけど、部屋の前で主任が待っていることはなかった。


 必要なものをバッグに入れた。といっても、旅行用バッグではなくて、普通のハンドバッグに。わざわざいろいろ持って行かなくても、実家に用意されているからね。

 前に普通に旅行用バッグに着替えを詰めて持って行ったら、両親祖父母に持ってこなくていいと言われてしまったのよね。

 先程の部屋にあった服も、私の好みを熟知したものだったし。このまま出かけても申し分ないもの。


 エレベーターで一階に降りて、エントランスを抜けて入口へと向かい……いるはずのない人の姿を見つけて、足が止まった。


「樹里亜、どうしたの」


 並んで歩いていたからか、隣に私が居なくなったことに気がついた融が、数歩戻って聞いてきた。でも私が答える前に、エントランスに主任の声が響いた。


「樹里亜!」


 大股で近寄ってくる姿に、ビクリと体が震えた。そのことに気がついた融の顔から笑みが消えて、私を庇うように半歩前に出た。

 そのことが不快だというように主任の眉が寄り、融のことを睨みつけた。

 が、融のことは無視して私へと話しかけてきた。


「樹里亜、昨日は悪かった。間違った認識をしていたと分かったのだ。誤解は解けたんだ」


 ……どうやらあの後、深見さんに連絡を取ったみたいね。

 でも、今はもう話をしたいと思わない自分がいると、気がついた。


「話し合おう、樹里亜」


 そう言われても、私は話をしたくないのだけど。


「樹里亜はあなたと話をしたくないようですよ」


 察した融が言ってくれた。その融を睨みつける主任。


「君には関係ないだろう。余計な口出しをしないでくれないか」

「関係ならあるけど」


 融をどかそうと肩に手を掛けた主任。その手を掴み払うようにする融。一触即発の緊張感が漂っていく。


「お前、樹里亜のなんだ!」

「それに答える必要を感じませんが」


 融は……主任のことを見下すように目を眇めた。


 あら。融のほうが、かなり背が高かったのね。


 ……じゃなくて、融の挑発するような態度に頭痛がしてきた私だった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  わかりやすいアピール…(^^)
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