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22:実情

 魔王がいなくなれば平和が訪れる。


 そう思っていた人はきっと多かっただろう。

 平和とはどういったものなのかは、個人によって違うかもしれない。

 穏やかに時間が流れ、モンスターに怯えることのない暮らしが平和と言うのか。モンスターに襲われずとも、その日の食う物にも困るような暮らしでも……平和だと言えるのか。


 確かにモンスターの数は減ったそうだ。そして弱体化もしていると。

 それは良いことだ。


「だがな。モンスターの数が減ったことで、安心して仕事をするようになった連中もいる」

「安心して? んー……街道の整備をする土木業者とか?」

「だったら良かったんだけどねぇ」


 レイとリリアンに再会し、五人でカフェへとやってきた。

 ティーやリキュリアを見たあと、ニヤニヤとこちらに視線を送って来たけど、きっと勘違いしているんだろうなぁ。


 そのカフェで、二人は深いため息を吐き捨てて現状を話してくれた。


「盗賊よ、盗賊」

「盗賊?」


 人から金品を盗む。それが盗賊だ。

 大きな町なんかだと、わざと人にぶつかってすれ違いざまに財布を盗むなんてのはよく聞く。

 たまに……そう、ごくたまに徒党を組んで街道を通る旅人を脅して金品を奪う連中もいるようだ。ただそれも命懸け。

 旅人だってモンスターが怖いのだから、行き先が同じ者同士で固まって、そして護衛の冒険者を雇ったりしている。

 行商人ともなると、雇っている冒険者の腕も立つ。

 更に、盗賊だってモンスターに襲われるかもしれないのだから、まさに命懸けだ。


「モンスターからの脅威ってのが去ったせいで、盗賊連中が大喜びで街道や脇道に陣取りやがってた」

「陣取るって……」

「この道を通りたければ、通行税を払え……ってね」


 なんだそりゃ。

 この大陸では、国境以外の場所での金品の徴収は禁止されているんだぞ?

 誰もが自由に行き来していいってことになっているのに、何を言っているんだ。


 ま、そういう法律を無視しているのも盗賊なんだけどね。


「今までいったいどこにいたのってぐらい、数が多くてね」

「街道に出てくる盗賊だけじゃない。街中での窃盗事件も増えているんだ。兵士に街道の巡回をさせているんだ。そのせいで町の警備が手薄になってな」

「俺たちの努力って……なんだったんだろう……」


 俺たちだけじゃない。

 魔王を倒そうと命懸けで戦った人は大勢いた。俺たちが知らない、名もなき英雄たちが。


 そんな犠牲の末にようやく得られた平和だってのに。


「最近さ、地方で不穏な動きもあってな」

「まだあるのか……」

「あるわよぉ。地方貴族同士が揉めててねぇ」

「今までモンスターが多くて手が付けられなかった古い鉱山なんかの権利をさー」


 あぁ、なんとなく分かった気がする。

 古いといっても、ほとんど手つかずな鉱山が多い。

 鉱山なんてモンスターの巣窟の代名詞だったから、誰もその権利を欲しがろうとはしなかった。


 けど、モンスターが少なくなり、弱体化した今なら話は別なんだろう。

 ちょっと冒険者でも雇って、鉱山内のモンスターを一掃すれば宝の山を手に入れられるのだから。


 鉱山だけでなく、森なんかでも領土の境界線を巡って揉め合っているそうだ。


 人間って汚い生き物だな。


「一触即発な状態の所もあるっていうし、本当はそっちに兵士を割きたいんだけどなぁ」

「だからって盗賊団も放ってはおけないし」

「「はぁ~」」


 っと、ため息を吐きながら俺を見た。


「で、そっちはどうなんだ?」

「奥手だと思ってたけど、ラルって案外手が早かったのね」


 と、二人はティーとリキュリアを見た。


「待った待った! 何を勘違いしているんだ二人はっ。彼女らは──」


 と、ここで事情を説明。


「そんな経緯で、今は家の建設を手伝って貰っているところなんだ。まぁ一軒できたから、そのための必要な家具とか、二軒目の木材の仕入れをね」

「なるほどねぇ……そういやお前、バフ癖はどうなったんだ? やっぱ相変わらずか」

「ぐ……ま、まぁ……」

「ラルのバフは凄いぞ! バフられるだけで死にそうになるのだから!!」


 と、ここでティーが元気よく笑顔でそう言った。






「本当に貰ってもいいのか!?」


 レイとリリアンは、案の定一緒に暮らしていた。ただ結婚はまだらしい。

 そのリリアンが、これまでレイが使っていた家具を全部譲ってくれると言う。


 新しいものを買ったが、どうせ二軒目のときに必要になる。リリアンが新しく保管用の空間収納箱を作ってくれるというので、その中に全部しまってしまおう。

 他にも貴重なものを貰った。


「こっちが回復の指輪。ヒールだから、バレット系みたいに飛ばせないわよ」

「有り難い!! 俺がヒール使うと、出血多量、激痛と大惨事だからなぁ」

「え? あんたそれ、あの子らに使ったの?」

「いやいや、ちゃんとモンスター相手に実験したさ。なんていうかね、ヒールでモンスターを倒せるなんて思わなかったよ」

「悪魔みたいな所業してんな、ラル」


 悪魔みたいとか言わないでくれよ。


 貰ったのはマジックアイテムで、特定の魔法が封じられた装飾品だ。

 

 ヒールが使える『回復の指輪』。

 体内の毒を浄化できる『解毒の指輪』。

 一定のダメージを吸収してくれる『魔法障壁』の指輪の三つだ。


「魔法障壁なんて最悪だぞ。吸収しないでクリティカルに変換してダメージ貫通させてくるんだから」

「お前、世界最強のデバッファーになれるな」

「くっ……一番気にしていることを言いやがって」

「ラ、ラルのバフは本当に凄いのよっ。中型モンスターだって、一瞬で倒せるようになるんだからっ」


 とリキュリアがフォローしてくれた。


 それを聞いてレイが珍しく真剣な目でこちらを見つめる。

 そして──


「ラル。お前、王国に戻ってこないか?」


 そう言った。



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