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地平線  作者: 幻中 六花
4/5

彼の辞書にない言葉

 いくら私が追いかけても、私という人間を認知していない彼は振り返ることも立ち止まることもしない。

 彼の辞書には『振り返る』や『立ち止まる』なんていう言葉が載っていないのかもしれない。


 少し冷たく感じるけれど、それは仕方のないことだ。


 だって、藍沢凌という選手はひたすらチームを勝利へ導くために前を向き、地道に努力を積み重ねて立ち止まらずにゴールを目指すカメであり、そのカメは私たちがいくら追いかけても辿り着けない、この大きな地球の一番奥にある地平線上にいるのだから。

 たとえカメがゴールして、ゴール地点でバンザイをしてウサギを待っていても、立っているのが地平線である以上、私たちは決して追いつくことができない。


 一方的に好きを伝えるファンレターも、届かないかもしれない。

 けれど、スポーツ選手の競技寿命がとても短いことを知るファンは、推しを推せる時に推したいがために、ひたすらに追い続ける。


 ──ピン。


 藍沢選手のSNSが更新された通知音が鳴る。


『今日、届いていたお手紙やプレゼントを受け取ってきました!いつもありがとうございます!#ありがとう』

 そこに付けられていた写真には、たくさんの手紙やプレゼントが、きちんと個人情報を隠した形で写っていたけれど、その中の端っこに、先日私が贈ったファンレターがあった。


「うそ……」

 本人が手にしてくれたことを知れただけで、こんなにも嬉しいのである。


 きっと彼は、受け取って読まないことはない。これで、私の想いを一方的に伝える任務は遂行(すいこう)した。


 いつか、地平線に辿り着けると信じる力が、推しを推す原動力となるのだ。

 だから私は、今日も藍沢凌選手を推していく。怪我のないように見守ることしかできないけれど。ボールを目掛けて飛んでいる姿は、今日も誰よりも綺麗だ。


 ──地球はいつの日もまるい。

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