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最終話 中距離幼馴染な後輩が中距離な恋人になった

「私、松山(まつやま)(すみ)は、狭間(はざま)(まこと)先輩のことが大好きです。ずっと前から、いつか想いが届くと信じて、電車で1時間の距離を、そして、この4年間を過ごしてきました。真先輩、私の恋人になってくれませんか?」


 そんな言葉を告げた澄の頬は真っ赤だった。4年間、という言葉の重みがずしりと来る。そうか。繋がりを持ち続けたい、そう思って必死だったのは、俺だけじゃなかったんだ。そう悟る。なら、俺も、この4年間の想いをしっかり告げたい。


「ありがとう、澄。それだけ強く想っていてくれたのは嬉しいよ」


 すぅーと息を吸い込んで、俺も彼女への返事を告げる。


「俺、狭間真も、松山澄のことがずっと大好きだよ。電車で1時間の距離を遊びに来てくれた時は嬉しかったし、お前とラインや電話をするのは楽しかった。これからも、電車で1時間の距離だけど……恋人になって欲しい」


 言い終えて身体中が熱くなるのを感じる。もちろん、この距離に不安が無いと言えば嘘になる。でも、即断即決が俺のモットーだ。そして、一度決めたことはやりとげたい。目の前の彼女が、4年間の間送ってきてくれた想いに応えたい。


「はい。喜んで」


 そして、目の前の彼女は少し涙ぐみながら俺の告白を受け入れてくれたのだった。


◇◇◇◇


「しっかし。勢いで、お前の家に来ちまったけど、この後、どうしようか?」


 時刻はまだお昼過ぎ。そして、この家に両親が帰ってくることはない。そうすると、二人っきり?急速に、ドキドキが高まってくるのを感じる。


「あ、あの。もし良かったら、先輩が私の家に泊まっていってくれても……」


 顔を真っ赤にしてそんな事をいう澄。その言葉はとても嬉しいけど。


「考えてみれば、明日、平日だった。その辺はまた今度な」


 恋人として二人きりで家でお泊り。その響きには抗いがたい誘惑はあったけど、ただでさえ今日は学校を無断早退したのだ。さすがに帰らないと。


「そう、ですね。電車で1時間、ですもんね」


 少し寂しそうな顔をする澄。今は愛しい恋人になった、彼女の寂しそうな顔が見ていられなくて、ぎゅうっと抱きしめた。


「せ、せんぱい……?」


 腕の中で何やら驚いた様子の澄。


「電車で1時間くらい、なんとかなるさ。今週だって、澄と二人きりで過ごせるし、それに来週はまた俺がこっちに行くことだって出来るよ」


 本気の言葉だった。ほんとは、毎日だって会いたかったけど、週に1日が俺たちの限界。でも、これまでだってそれでやってこれたんだ。


「あり、がとうございます。先輩。私も、きっと、大丈夫だって、信じられる気がします」


 嬉しそうな声。


 それから数時間。即席で澄が作ったお昼を食べて、夜が迫る前に俺は東京に帰ることになった。


「4年前、ここでお別れしたんだったな」


 土浦駅のホームにて、そんなことをつぶやく。

 あの日、見送ってくれた澄との想い出が懐かしい。


「不安でいっぱいでしたけど、連絡をしようと言って良かったです」


 そっか。あの言葉には、そんな必死な気持ちがあったのか。


「実はさ、俺も不安だったんだ。だから、言ってくれて嬉しかった」


 離れたくないと思っているのは俺だけじゃないのか。そんな思いがあった。


「これからも、きっと、大丈夫ですよね」

「ああ、きっと、大丈夫だ」


 そんな言葉を交わして、俺は北千住行きの電車に乗る。


「とはいったけど、遠距離?いや、中距離恋愛か?どうなるんだろうな……」


 恋人になりたいとは思っていたけど、その後はノープランだった。


「ま、なんとかなるか」


 これまでだって、乗り越えてきたのだ。きっと、これからなんとかなるさ。


【あ、言い忘れてましたけど。恋人になったら、したいこと、いっぱいあったんですよ。今週の土曜日は覚悟してくださいね♪」


 感傷にふけっていた俺の元に届いたのは、愛しい恋人からのメッセージだった。

というわけで、少し変わった距離感の幼馴染のお話はいかがだったでしょうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼのというか。まあ、良かったね、と。 彼女が大学東京に出てくれば、きっとすべて問題は解消です。4年頑張ったんだから、もう少し。
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