四話「食べてはいけない」
意気込んだところまではいいものの、オーの魔力量があちこちに分散していて一向に見つからない。
「ここの果物とか、食べちゃだめなんですよね」
「ああ、ここでとれるものすべてな」
「いいですね、貴方はここにあるもの食べられて・・・」
そう言ってみせると、不思議そうに首を傾げられた。
「俺はここにきてから何も口にしていないぞ?」
「えっ・・・」
あり得ないだろ!?
何も食べていないなんて、しぬだろ?
「えっ、じゃあなんでそんなに元気なんですか!」
「お前、【時間停止魔法】と【時間停止魔術】はしっているよな?」
「はい、一年生の基礎課題ですので」
俺達がならった【時間停止魔法】は、基本的に生物にむけて使うもの。
【時間停止魔術】は、自然など広い範囲のものに使うもので、保護するときによく用いられる。
まぁ、どっちも腐敗とかを防ぐものだから、攻撃されたらもちろん残るし、回復するわけでも時間を巻き戻せたりできるわけじゃないから、足止め程度にしかならないんだよな。
「それがどうしたんですか?」
「その両方が俺達や森にかけられているんだ。
すべてが停止しているから、俺はここにきてから腹も減ってない。
というか、何もかも停止している状態だから、お前も腹が減っているわけがないんだが?」
あっ、言われてみればそんなにおなかがすいていないな。
でも、森の食べ物って全部おいしそうにみえるからなー。
「でも、なんで森でとれるものは食べてはだめなんですか?」
「この森は、カケラの影響で、人体にかなりの影響をもたらす。
お前たちより前に迷い込んできたやつが、それをわからせてくれてからな」
「えっ、その人どうしたんですか!」
「あわてて吐き出させたから、影響されずにすんだが、あと数秒遅かったら、どうなっていたかわからなかったな」
そんなに危険なものなのか。
用心しないと危なさそうだ。
「あの、森の中に魔物はいるんですか?」
「ああ、もちろんいる。
最近は、お前みたいな迷い人を引き込もうとするやつもいるんだ。
だから、絶対に離れるなよ、わかったか?」
「・・・」
「おい、聞いているのか?」
振り返ったが、そこには誰もいなかった。