秋田のヒーロー
秋田県の球場で、プロ野球の試合が行われた。
その試合で、一人の外国人選手が活躍した。
試合後に、ヒーローインタビューがある。
この日は、地元の小さな女の子がインタビューをする、という趣向になっていた。
外国人選手に対して、彼女が質問してくる。
「『なまはげ』が、こわいです。どうしたらいいか、おしえてください」
通訳は「なまはげ」という単語を、そのまま伝えた。
外国人選手は首を傾げる。「なまはげ」とは何だ?
わからないものに対しては、答えようがない。「〈適当に答えておいてくれ〉」と、自分の国の言葉で告げて、この先のことを通訳に任せた。
「あとで良い方法を教えてあげる、と言っています」
そう女の子に伝える通訳。
それで、その場をうまく切り抜けた。
かに思えたのだが、翌日の朝だ。
通訳が慌てて、外国人選手のもとにやって来た。
手には新聞を持っている。秋田県の新聞だ。
昨日の活躍が載っているのだと、外国人選手は思った。
ところが、通訳が早口で説明する。新聞の一面に載っているのは、ヒーローインタビューでの出来事だという。
『小さな女の子の質問、外国人選手の答えはいかに?』
記事自体は好意的なものだが、このまま知らんぷりして逃げる、というのは難しくなったかも。そんな通訳の説明を聞いて、外国人選手も困り顔になる。
「〈適当に答えておいてくれないか〉」
「〈そう言われましても・・・・・・。そもそも、あの女の子が知りたいのは、あなたの答えであって、私の答えではないと思います〉」
だが、わからないものに対しては、答えようがない。「なまはげ」とは何だ?
「〈こんな感じですかね〉」
通訳がイラストを描いてくれる。
なるほど。「なまはげ」というのは、日本のモンスターみたいなものか。子どもが怖がりそうなデザインだ。
とはいえ、それがわかったところで、「どうしたらいいか」なんて、わかるはずもない。
外国人選手が悩んでいると、
「〈手紙を書くというのは、どうでしょう〉」
通訳が助言をしてくれる。
その内容とは、「準備の時間が必要なので、十二月まで待って欲しい」というもの。
要するに、さらなる時間稼ぎだった。
が、この手紙も、秋田県の新聞で大きく取り上げられてしまう。
記者に悪気はないのだろうけれど、逃げ道を断たれる結果となってしまった。
外国人選手と通訳は、あの女の子が納得してくれそうな答えはないか、がんばって考え続けた。
そうしている内に、十二月の下旬になる。
そこでようやく、外国人選手から女の子へ、一通の手紙が届いた。
その手紙には、「なまはげ」の弱点と思われるものが、同封されていた。
ちゃんとおぼえていてくれた、そう大喜びする女の子。
そして大晦日、その子のもとに、「なまはげ」が現れたのである。
しかし、もう怖くなんかない。ちゃんと準備はできている。外国人選手からもらった、秘密のアイテムを持っているのだ。
「あっちいけー!」
女の子に「豆」を投げられて、「なまはげ」は慌てて退散していった。
外国人選手と通訳は、こう考えたのだ。「なまはげ」は鬼っぽい外見をしているから、たぶん豆が弱点だろう。節分からヒントを得た対処法だった。
この対処法を、秋田県の新聞は好意的に報じた。




