1話 どうやら僕は世界を守ることになったのかもしれない
「汝に力を授けよう」
「………え?」
「………………ん?」
突如として頭の中に声が聞こえて来た。今は夜でテレビもつけず部屋の中でゴロゴロしているので音が聞こえて来る要素がないはずなのに。
「おっかしいな~気のせいか?」
近くに置いていたケータイを見てみたが特に何もなく真っ黒な画面だった。
それならと閉めていたカーテンを開けて外を覗いてみたがここは二階で隣の家は電気がついておらず音は一切しなかった。
「やっぱ気のせいかなー?」
今は夜中で親も寝ていて一階で親がテレビを見ていると言う可能性もゼロではないがウチの親は一度寝ると滅多なことでは起きないのだ。そもそも二階にいる僕にまで聞こえる音量だと隣の家にまで聞こえてしまうだろうからそんな非常識なことはしないだろう。
「………すまぬ」
「うわ!また聞こえて来た!」
今度ははっきりと聞こえて来た。意味はわからないがどうやらこの声の主は誰かに謝っているようだ。
「と言うか、なんか違和感があるんだよな~」
この声の主から聞こえて来る音はなんか違和感があって直接頭の中に話しかけられている気がするのだ。いやそんな経験がないから詳しくは言えないし分からないけどとにかく言いようのない違和感を感じるのだ。分かりやすく言えばアニメとかでよくある念話やテレパシーのようなものだ。
「すまぬ…この星のことを知るのに時間がかかってしまった。」
突然目の前に人が現れた。本当に突然目の前に現れたのだ。どこかに隠れていてそこから出て来たわけでもなく、本当に突然気が付いたら目の前にいたと言う感じた。
「あぁ…突然のことに驚いているのだな、それだと話が進まないな、少し痛むが許してくれ」
僕は突然現れた人に驚きのあまり口が開きぱっなしになり腰が抜けて立つこともままならぬ状態になっていた。
そして僕のことを見たこの人は指を僕に抜けるとその指が光り出し、そして僕の頭に向かって光の玉が飛んで来た。
僕は驚きの連続に何かをすることは出来ずただ光の玉が飛んで来るのに対して眺めることしか出来なかった。
「あぁ!!」
光の玉が僕の頭に当たったと同時に僕の頭は焼けるように熱くなった。熱湯をかけられているかのような、火であぶられたようなとにかく今までで味わったことのない熱の痛みが僕を襲ったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、血は出てないのか」
痛みは一瞬だった。頭に触れてみるとあれほどの痛みだったのに血は出ておらずさっきの痛みは幻だったんじゃないかと思うほどあっさりと痛みは引いていたのだ。
「うぅ、こ、これは?」
「口で説明するのも手間と時間がかかるので汝に直接写したのだ」
痛みが引いてすぐに頭の中に情報が流れ込んで来たのだ。その情報の中にこの人がどんな存在なのか、さっきの痛みの正体だとか、なんの理由で僕のところに現れたのかなどの情報があった。
「あなたは神様なのか…」
「いかにも…正確には女神である」
流れ込んで来た情報の中にこの人の正体は僕と同じく見た目は人間かもしれないが中身というか正体は人ではなく神様だったのだ。
「時間がないんだよな」
「いかにも…本来妾がいる世界とは違うこの世界に妾がいてはならないのだ」
この神様は僕がいる世界の神様でなく異世界の神様らしいのだ。そして神様は自分が管理している世界以外の世界にいてはならないらしいのだ。これは神様達によって決められているらしい。まぁ僕に取ってはよく分からない話ではあるのだがとにかく今は非常事態でこの世界に降臨することを他の神様達から許されているらしい。
「はぁ~色々言いたいこととかあるんだけど」
「すまぬ…本当に申し訳ないと思っている」
この神様がこの僕の前に現れるキッカケとなったのが、この神様が本来与えるはずの祝福を間違えて異世界にいる僕に与えたことだ。この神様が管理している世界はいわゆるファンタジー溢れる剣と魔法、そしてモンスターがいる世界なのだ。モンスターは神様が作り出したものではなくどこからか現れた異物で神様が管理する世界を破壊しようとしているらしいのだ。そのためモンスター達から世界を守るため現地の人間にモンスターと戦うための力を授けようとしたら何かの拍子で間違って僕に祝福を授けてしまったらしいのだ。これだけを聞くと何も問題はないかのように思えるが神様の祝福の中に力を身につける代わりに魔を惹きつける効果もあるらしいのだ。そのためこの神様が管理する世界からモンスターがやってくるかもしれないと言うことだ。そしてもしモンスターがやって来たら倒して欲しいと言うのがこの神様の謝罪であり頼みであったのだ。
「まぁ仕方ないよな、なっちまったものは仕方ないよ、それより降臨してるのはきついんだろ、もう戻りなよ」
「すまぬ…そしてありがとう」
神様が異世界に降臨すると言うのは本来なら許されない行為なのである。それは別に何かその世界に影響をもたらすわけではない神様が世界に適合出来ず消えてしまうかもしれないのだ。1秒いるだけでも全身を砕かれるような痛みを感じるようなのだがそれでも辛さを感じさせるような表情はせずひたすらに痛みに耐えているのだろう。
「すまぬ…最後に1つだけ…この世界にはすでにモンスターと同様な力を持つ存在がいる…そしてそれらから世界を守っている存在もいる…だからその者たちと協力しこの世界を守ってくれ…本当にすまなかったな…頼んだぞ」
神様はそれだけを言うと幻だったかのように消えていった。
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