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もやし× 私  作者: 楊小町
1/1

クラス 曰く もやし

私のクラスには暗黙のルールがある。


高校に入学し一年が経った今それはより強固なものになっていた。

別に難しいことなんかじゃない


『天月 海 に話しかけてはいけない』


それだけ、すごく簡単。

誤解しないでね、別にいじめとかじゃないから、むしろとても優しい。

なんだかっていうと


「あの…あのー…すみませーん。えっと、すみませーん!!」


「えっ、何!私!?」


「あ、はい、そうです。あの天月くんってどこにいますか?」


あらら、これは困ったことになったみたい、まぁ説明も兼ねて見てればわかるかもね。


「あそこの、窓側の一番後ろの席で突っ伏してるやつだよー。何か用事?」


「私、生徒会の会計なんだけどね?文化祭の予算の関係で用事があるんだけど、あれって起こしても大丈夫かな?」


「ふーん、そうなんだ。多分大丈夫でしょ、起こさないといつでも寝てると思うし。」


「そっか…ありがとね。」


そう言って彼女が歩いていくとクラスのみんなが綺麗に道を開ける。そして少し静まる。

会計ちゃんは、どう起こすか迷った末に軽く肩を叩いた。


「ひゃっっっ!」


彼は女子も顔負けな悲鳴を上げて立ち上がり、顔を窓の外の方へ向けて立ち上がる。

椅子が大きな音を立てて倒れた。

よく見ると肩も震えている。

クラスのみんなのため息と失笑が入り混ざる。脊髄反射であそこまで動けるのか、すごい。あ、感心してる場合じゃないや。


「え、え、え、えっ…?」


クラスのなんとも言えない空気に戸惑っているようだ。

頑張るんだ会計ちゃん。目標はすぐそこにいるよ。


「えっと、天月くん、だよね?」


「あ、うっ、はい。」


戸惑いすぎて息が詰まっている、というよりもいつもどおりの天月くんの反応。


「文化祭の演劇部の予算の事なんだけれど、今時間あるかな?」


「は、はい。」


考えてみれば彼、演劇部の部長だった。うちの学校は進学校ゆえなのか2年生の時点でぴったり部活が終わりになる。

新しい部長を決めたのは最近だが、大方面倒くさい仕事を押し付けるためだろうね。

入部も、先輩の圧力に勝てず、部の存続のための数合わせで入れられた、ということだったらしいけど。


「衣装にかかる費用に関してなのだけれど、もう少し削減できないかって会議で話になったのだけれど。どうかな?」


「え、あ、はい。とか、す。」


「え?なに?」


「何とかしますぅ!」


あ、最後の最後で裏返った。

今回はなんとかなりそうかもね。


「で、次なんだけど」


これはダメだ。二つ目何て無謀にも程がある。ほら、『おや?天月の様子が…』と言いたい程度に顔色が変わり始めてるもの。


「わぁ!!大丈夫!?」


「だ、だいじょう、ぶふぅぅ」


倒れた。予想通り倒れた。いや、予定通りとも言えるね。

このように『天月 海に話しかけてはいけない』は成立した。入学からこれで32回目。会計ちゃん、記録更新おめでとう。

近くにいた男子が予定通りスタンバイしていて失神者を受け止め、会計ちゃんに一礼したあと、保健室へ背負っていった。


これで分かったでしょう。

彼は天性の、そして重度の上がり症なのだ。













誤字脱字等ありましたら教えていただければ幸いです。

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