8話:旅支度
ベルセポリスを出た俺たちはベルセポネへの旅支度をするため一度リバーベル村へと戻る。
相変わらずむさくるしい親父さんと美人な奥さんに迎えられた。
「エルルぅううう久しぶりじゃないかああああ」
滝のように涙を流している。久しぶりに娘に会うのだが大げさすぎるだろ・・・
「お父さん、離れて」
「娘が冷たい・・・・」
「まったくあなたは!二人とも疲れてるでしょ?ゆっくりしていきなさい」
「そんでどうして戻ってきたんだ?もう2か月になるが目的は果たしたのか?」
「いんや、これから故郷へ向かうんだ。今の今までベルセポリスの復興クエずっとやってたからな」
「ずいぶんと長くやったもんだ。金の心配はいらないだろうがそんなゆっくりしてていいのか?」
「あの惨状を見たらそうも言ってられなかったのよ」
「エルルはいい子だなあああああ」
また滝のように涙を・・・いい加減しつこい
「そういうことでこれから旅の支度をしてベルセポネに向かうんだ」
「スティフから聞いてはいたがそんなにひどかったのか・・・」
「今はだいぶましになったけどな。親父さんも暇があれば行くといいよ」
「あいにくそんな暇はないんだよ。帝国が本腰入れるみたいで、武具の注文がすごいんだ。まったくあいつの親父だからって人使いが荒いったらないぜ」
「仮ギルマスも言ってたがいつ火が上がってもおかしくないんだな・・・」
「そうだぜ?今行かなくても反乱が治まってからでもいいじゃないか?」
「お父さん、私たちはただ何もせずにいるのに耐えられなくなったの。何かできることがあるんじゃないかって・・・」
「エルルはいい子だな。だけどな、お前達にできることなんてなんもありやせんかもしれんぞ?」
「それでも!!!」
「そうか。まぁ目的地はベルセポネなら中立だしそう戦禍に巻き込まれることもないか。あの町はいいぞ。この地で一番でかい炉がある。エルルもそこで鍛冶を学ぶといい。知り合いがいるから俺の名前を出せば大丈夫だろう」
「親父さん実はすごい人なの?」
「秘密だ。何故ならその方がかっこいいだろ?」
「はいはい」
「それでどうやってベルセポネまで行くんだ?」
「歩いて行くか、馬車に乗っていくかだな」
「馬車は高いからせっかくだし歩いて行きましょ?」
何がせっかくなんですかね!と心の中でつっこんでおく。
「結構距離あるけど大丈夫か?」
リバーベル村からベルセポネまで徒歩で5日、馬車でも2日かかる。
街道が整備されているが山を一つと平原を一つ越えなければならない。
べオに大きくなってもらえば馬車より早く着くんじゃないかと思ってベオに聞いてみたが二人乗せるほど大きくはなれないと言われたので歩いて行くしかない。エルルはベオに乗ってもらってもいいな。
そして旅支度をするため、俺は村へ繰り出す。エルルは家で装備の確認をしたとのことだ。
親父さんに今の自分の腕を見てほしいらしい。出発に多少時間がかかるかかもしれんがそこはいいだろう。
取り敢えず俺は情報収集もかねてギルドへ行くことにした。ベオは暖炉の前でいびきをかいているので置いていく。別に人妻になでられて気持ちよさそうにしてるのがうらやましくてむかつくから置いていくわけではない。
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ギルドについたが冒険者は一人もいなかった。
「久しぶりじゃないか!元気してたかい?」
受付のおばちゃんは相変わらず元気だ。
「お蔭さまで元気だよ。おばちゃんも相変わらずだな」
「ははまだまだ現役だよ!それよりエルルちゃんはどうしたんだい?まさか・・・」
「いやいやいや今親父さんに腕を見てもらいたいって家にいるよ」
「そりゃよかった。この2か月ずっと復興クエしてたんだろ?カードの更新はしたかい?それなりにポイントも貯まってるだろうからランクもあがったんじゃないかい?」
「あーそういえばDランクになってたな」
「C以上はある程度魔物を倒さないとなれないからね。これからは討伐メインにクエストや狩りをするといいよ」
「あんがとなおばちゃん!」
(名前なんだっけな・・・)
「ギルマスに会っていくかい?」
「んー別に用事はないけどな。最近の反乱軍の動きとか知りたくて来たんだ。高ランクの招集がかかったて聞いたもんでね」
「あーそういえばあったわね。この村にはほとんど居ないから気にも留めてなかったわ!」
この村いろんな意味で大丈夫かな・・・・
「噂をすればギルマス」
「なんじゃその言い方は。懐かしい声がすると思って出てきたんじゃわい。元気そうでなにより。そして成長したようじゃな。魔法も使えるようになったか?」
「あぁ復興クエしてる時運良く教会の人達が来ていろいろ教えてもらったよ」
「教会の奴らも出向くほど大きな被害じゃったのか・・・大変じゃったろ」
「おかげでお金も貯まったし、人の役に立てたうえに勉強にもなった」
「お前さんをいっぱしの冒険者にしておくのはもったいないのう。おぬしの素性は知らぬが、どこか学院へ行くのがおぬしの為にもなるじゃろ。折角の才能もある」
「確かにそうだな・・・ハーr・・じゃなくて魔法の事ももっと学んで強くなりたい」
「帝国の学院に行くのがおすすめじゃが、こんなご時世じゃ。せめてベルセポネか首都アーガストの学院へ行ければ御の字じゃろ」
「やっぱ帝国ってすごいのか?」
「この自治領もといこの王国は八大神の一柱ベルセウス様が建国したとされいるのは知っておるじゃろ?帝国は他の一柱であるネルフ様の加護を受けし一族が建国したとされいる。この地の者はベルセウス様の血により剣に優れているが彼の者たちは魔法に優れていおるのじゃ。そして剣聖と呼ばれるものはその両方に優れた存在じゃ。ここ何十年、帝国に新たな剣聖が生まれたとは聞いておらんが・・・・長話がすぎたの。とにかく帝国は魔法がこちらより発達しておる。本格的に魔法を学ぶなら帝国へ行くがよいのじゃ」
剣聖・・・魔法と剣に優れた・・・頭が痛い。
この自治領のことを話していなかった希ガス。この際だから説明すると俺がいる国は旧アーガスト王国アーガスト自治領という。神大戦争後ベルセウスがアーガスト大陸を制覇し、国にその名がつけられた。もともとは大陸が1つの国だったが千年を超える時を経て分裂した。ここ最近では先に出てきた帝国、ネルフ帝国がこの大陸の覇権を得ようと各地へ攻め込んでおり、このアーガスト王国も自治領として飲み込まれたのだ。しかしエルフの・・・・というところだ。
「俺はこれからベルセポネに向かうから丁度いいか」
「なんじゃおぬし、ベルセポネに向かうのか。あそこもそろそろ本格的に攻め落とされかねんから注意するんじゃぞ」
不吉なことを言うギルマスだ・・・
そんなこんなで俺はギルドを後にして雑貨屋へ向かう。
「やぁいらっしゃい。あの時の冒険者さんか、久しぶりだね」
「覚えてたのか」
「エルルちゃんと一緒に居たんだ、覚えてるさね」
「それもそうか」
「今日は何の用だい?」
「これからベルセポネに向かうからその支度をしたくて」
「まさか歩いて行くのか!?この季節、雪がひどいからマスクやらマントは必須だね。いいものがあるよ」
「いくらだ?」
「聞いて驚くなよ?ドラゴンの皮や鱗を使ったマントとマスクだ。お値段なんと金貨10枚」
おさらいとして、この国の貨幣価値は銅貨1枚10円、銀貨1枚1000円、金貨1枚1万くらいの価値がある。銅貨100枚、銀貨10枚で金貨相当になる。
ちなみに今の所持金は銀貨468枚金貨46枚相当は持っている。
「・・・・それって高いのか?」
「ドラゴンの素材だぞ!?破格も破格!ただ訳ありらしくてね。ここ最近ドラゴンの目撃が多くて弱い種のドラゴンの素材が大暴落してるんだよ。弱いって言ってもドラゴンだ、質は保証する」
弱い種のドラゴンってなんだ・・・ドラゴンにもやはりランクが存在するのか!弱い種のドラゴンっていうとレッサードラゴンが真っ先に思い浮かんだ。
この世界でのドラゴンの扱いはいまいちわからない。俺の器は世の中の事に少し勉強不足なのだ。
「でもドラゴンが大量に発生してるってやばいんじゃないか?」
「そうだね。あの黒いドラゴンが襲来して以来各地でドラゴンが増えてるみたいなんだ。たださっきも言ったがまだ弱いドラゴンが多いからなんとかなってるけど、強力な種が増えたら厄介極まりないよってことで買うかい?」
「商売上手だなー情報料込ってことでその値段なら買えなくもないけど・・・」
「金貨10枚は高いかーこの村じゃそうそう売れないからエルルちゃん割引ってことで2組で金貨10枚ってことでどうだい?」
ふぁ!?それって割引すぎじゃないですか嫌だな!
「買います。ギルカ使えます?」
「カードとは珍しいね。大丈夫だよ。金貨なんてそう持ち歩いてないだろうからね。毎度あり!他には何が必要だい?」
「丈夫な靴と地図とあとは保存食5日分を適当に」
「お誂え向きの靴があるよ!これもドラゴンのね!」
ドラゴンの大安売りや!!!!
俺は〆て金貨6枚と銀貨8枚分の買い物をした。
ちなみにこの世界で一か月住んで食べるに困らずかかる最低限の生活費は金貨3枚だ。それを考えるとかなりの出費である。
俺は店を出てエルルの元へ向かう。
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カンカンカン、プシュー
カンカン、プシュー
カンカン、カン!
そのあとふらふらしてエルルのところへ戻る。
炉のところへ行くとエルルが親父さんと鍛冶をしている。
「ふむ。だいぶ腕を上げたな。魔力も増えたんじゃないか?それに数をこなしてたみたいで腕力もついたみたいだな。エルルがゴリゴリマッチョに・・・」
「ならないわよ!!!」
ゴリゴリマッチョなエルルは嫌だ・・・。鍛冶魔法のおかげで今となっては誰もがイメージするゴリゴリマッチョな鍛冶師とくに女性は数がだいぶ減ったらしい。ただ見た目はすごく重要でいくら腕が良くてももやしみたいな奴に自分の命を預けたいと思うやつはそう居ないだろう。
「二人とも戻ったぞ。取り敢えず保存食とマント、マスクは買ってきた」
「お?ドラゴンの素材で来てるじゃねぇか。最近ドラゴンが増えたって聞くからな。エルルもそろそろ魔物の素材を使った武具を作るのもいいかもしれんぞ?」
「そうね。これからバンバン魔物を倒して素材をゲットするわよ!」
こういう所々勇ましさ溢れるところはやはり家族なんだなって思わせる。
「魔物の素材にもランクがあるからな。強い魔物ほど腕が必要になる。エルルは鉄はもう完璧だから、Cランクレベルの魔物の素材なら大丈夫だろ」
ここでいうCランクとはギルドで依頼される魔物のレベルを示すらしくCランク冒険者が狩れるレベルの魔物ということだ。
そして主に武具に使われる鉱物は銅、鉄、鋼鉄、翡翠、銀、魔鋼鉄、ミスリル、金剛石、オリハルコン、ヒヒイロカネがある。結構種類があるな・・・。オリハルコン、ヒヒイロカネは生産量自体少なく一部の王族しか買えないと言われるほど高い。また、魔物の素材を使った武具は魔具と呼ばれており鉱物で作ったものより性能が高かったり、見た目の付加価値もあり物によっては鉱物製より高く売れるそうだ。親父さんはオリハルコンの武具を作れるレベルらしいがこの家族もっとまともならすごい人たちなんじゃないかと思ったのはここだけの話。
「ねぇ新しい武器と防具を作りたいから、狩りと鉱物集めに行きましょ?」
「お、おう!」
ギルドの依頼を通さなくても魔物は自由に狩りをしてもいいのだ。鉱物も鉱山として運営されていない限りは自由に採掘可能といろいろと融通が利く。
「ついでだし、クエストでも受けとくか」
「そうね。お昼を食べたら早速出発しましょ!」
そして俺たちはクエストを受けに再びギルドへ向かうのだ。




